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Vol.38 渋谷駅周辺エリア

100年に1度の渋谷駅周辺再開発プロジェクトがいよいよ最終段階へ!

 前回渋谷を取り上げたのは2018年11月。以後6年あまり、渋谷駅周辺でおこなわれていた再開発プロジェクト(東京メトロ銀座線ホームの移転も含む)は佳境を迎え、駅周辺のランドスケープは大きく変わりました。前回の記事で"最新ビル"として紹介した「渋谷ストリーム」の翌年、11月には渋谷エリアで最も高い約230m・地上47階建ての大規模複合施設「渋谷スクランブルスクエア第1期(東棟)」と「渋谷フクラス」が同時開業。昨年11月には「渋谷サクラステージ」が。さらに今年7月には、再開発の口火を切って開業した「渋谷ヒカリエ」とスカイデッキで接続する「渋谷アクシュ」が竣工するなど、「渋谷駅周辺のオフィス街化」は一気に加速しました。これらの再開発は周辺エリアにどんな影響を与えているのか。6年ぶりに「駅周辺再開発街区」を歩いてみました。

1
クリエイティブワーカーの聖地(渋谷駅南街区)

 2013年3月、東急東横線の渋谷駅が地下化され、その跡地で建設が始まったのがクリエイティブワーカーの聖地「渋谷ストリーム」です。渋谷ストリームのオフィスフロアは14階から35階までで、その全てをGoogleが借り切っています。これにより、現在働く従業員数の2倍以上を収容できるスペースを確保しているそうです。

 渋谷駅周辺再開発プロジェクトには、過去の苦い経験(オフィス不足による渋谷ビットバレーの失敗)を踏まえて「充実したオフィススペースの供給」という目的があります。それは、IT企業のみならず、さまざまなクリエイティブ企業を再び渋谷に集積させることでもあり、今後は大企業向けのオフィススペースの供給のみならず、ベンチャー企業やスタートアップ、個人で活動するクリエーターが仕事をできるようなオフィスやワークスペースの準備もプロジェクトの方針に含まれており、渋谷駅南街区はそれを如実に反映するエリアになります。
 渋谷ストリームは、たくさんの個性を引き寄せて化学反応を起こすプラットフォームです。開業から6年経ったいま、渋谷駅南街区は明らかに活性化し、魅力的で活気あるエリアへと生まれ変わっていました。

2
孤立を解消して最先端のビジネスエリアへ(渋谷駅桜丘口街区)

 渋谷駅桜丘口街区(渋谷区桜丘町)はJR渋谷駅南口の"目と鼻の先"という位置にありながら、国道246号線と首都高速道路が整備されたことにより分断され、渋谷駅周辺の発展の波から唯一取り残されてしまったエリアです。駅からは国道246号線をまたぐために歩道橋の上り下りが強いられ、東口方面からは薄暗い高架下を通らなければアクセスできない非常に不便な環境でした。こうしたなか住民たちは、「桜丘町にも渋谷駅に直結した改札口をつくってほしい」という要望を提出しましたが、その願いは長年棚上げになったままになっていました。

 「渋谷駅桜丘口地区」再開発プロジェクトはこうした背景を踏まえて着手され、昨年、「渋谷サクラステージ」が開業。今年7月には、念願だった渋谷駅と直結した「新南改札」が設置され、渋谷駅へのアクセスは大いに便利になりました。また現在は、線路上空への駅舎新設工事(渋谷駅南口橋上駅舎)が進められており、さらなる利便性の向上が期待されています(新駅舎全面開業は2026年予定)。渋谷駅桜丘口地区市街地再開発組合によると、「渋谷サクラステージの竣工後、着工前と比較して周辺の人流は約140 %に増加し、18時~19時のピーク時においては1ヶ月累計でなんと10万人以上増加した」といいます。
 分断され、進化から取り残されガラパゴス化していた渋谷駅桜丘口街区は、再開発による歩行者ネットワークの構築によりアクセスが向上し、最先端のビジネスエリアとして"新しいまち"が始動していました。

3
ようこそ、ITの街 渋谷へ(道玄坂一丁目駅前街区)

 駅西側の東急プラザ跡地を含む道玄坂1丁目駅前街区に建設された「渋谷フクラス」には、1階に空港リムジンバスが乗り入れる高速バスターミナルが設けられました。これにより、バス発着所が駅に近くなり、鉄道への乗り換えが格段に便利になりました。あわせて、手荷物の預かり所や外貨の両替、観光案内などの施設が整備され、渋谷で手薄だった観光支援サービスが拡充しました。
 渋谷フクラスに関する最大のビジネストピックは、何といってもGMOインターネットグループの入居です。GMOインターネットグループは2019年の入居と同時に、本社であるセルリアンタワー周辺に点在していたグループ各社を渋谷フクラスに集約させ、「セルリアンタワーを第1本社、渋谷フクラスを第2本社として、グループ各社の連携強化と業務の効率化を図っていく」と表明しています。

 これに伴い、同街区には変化がありました。渋谷商工会によれば「渋谷フクラス周辺には、クリエイティブ・コンテンツなどのスタートアップ企業、日本に進出する外国企業などを対象とした小規模オフィスが増えていて、新しいビジネス環境が活性化している」のだとか。渋谷フクラスを起点としてビジネスチャンスやコラボレーション機会を得る"渋谷ニュージェネレーション"が増えているそうです。
 また、GMOインターネットグループが渋谷フクラスに入居したことで道玄坂一丁目駅前街区のブランドイメージが向上して、IT企業や投資家にとって大いに魅力的なエリアになったことは間違いありません。

4
駅周辺再開発のクライマックスへ(渋谷駅街区)

 2019年に開業した渋谷スクランブルスクエアは、高さ約230mと渋谷地区最高峰の複合施設で、下層階(地下2階~地上14階)は商業施設、上層階(17~47階)がオフィスとなっています。
 副都心のランドマークビルともなればここにホテルが加わるのが一般的ですが、渋谷駅周辺は限られた土地を有効活用する必要があるため、オフィスと商業施設に特化して"ビジネスエリアとしての機能"を重視した設計になっています。入居企業はサイバーエージェント、ミクシィ、レバジーズといった有名企業のみならず、多くのスタートアップ企業が集うことでビジネスエコシステムが機能して、異業種間のコラボレーションが活発におこなわれているそうです。

 2019年に開業した渋谷スクランブルスクエアですが、実は完成したわけではありません。現在は、駅周辺再開発のクライマックスともいえる「渋谷スクランブルスクエア第2期(中央棟・西棟)」の建設が進められています。中央棟は地上10階、地下2階。西棟は地上13階、地下5階の建物でと第1期(東棟)と比べると小ぶりですが、順調に進めば2028年度に竣工する見込みです。
 また今年7月には「渋谷ヒカリエ」隣地に歩行者デッキで接続された「渋谷アクシュ」が開業。オフィスや店舗のほか屋外バルコニーが整備され、既にビジネスパーソンの寛ぎの場になっています。駅東口と青山方面を高低差なしで移動できるようになり、宮益坂上のオフィスワーカーの通勤が格段に楽になりました。

5
アーバン・コアで大きく変わった渋谷駅周辺の動線

 渋谷は名前の通り「谷地形」であり、その影響により、谷底にある駅周辺の動線は込み入っていて、かなり不便でした。渋谷駅は地上3階、地下5階と上下の移動幅が大きく、さらに迂回路が多いため構造が非常に複雑で「迷宮」などと呼ばれていました。そのため、初めて渋谷駅を利用する人はもちろん、日ごろから利用している人でさえ、いつもと違う路線に乗り換える時などは一瞬方向感覚を失うことがあったほど。それが再開発によって解消されました。その肝となっているのが「アーバン・コア」です。

 アーバン・コアとは、地下と地上をエスカレーターやエレベーターなどでつなぐ縦軸空間のこと。駅周辺のみならず、起伏の激しい市街をストレスなく移動するため(バリアフリー視点も含め)には、地下通路からスカイウエイ(空中デッキ)までアーバン・コアをつなぐことが必須でした。渋谷マークシティや渋谷ヒカリエの既設アーバン・コアに加え、渋谷ストリームと渋谷スクランブルスクエアにも新しいアーバン・コアが設置されたことで、JR線と東急線東横線の乗り換えは格段に楽になりました。
 再開発エリアを歩いてみると、渋谷駅周辺の再開発プロジェクトは「回遊性」にウエイトを置いた開発計画であることがよく分かります。アクセスが便利になり、点から面へと可能性を広げた渋谷は今後、どんな魅力を生み出すのか。これからの渋谷が楽しみです。

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■記事公開日:2024/09/24 ■記事取材日: 2024/09/06・15 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣 ▼撮影=吉村高廣 ▼取材協力・参考=渋谷区(都市計画決定された市街地開発事業について)、国土交通省(渋谷駅・駅まち再構築のポイント)、渋谷駅前エリアマネジメント協議会(+FUNプロジェクトライブラリー)

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