グローバル都市を加速させる
福岡のMICE(マイス)戦略。
グローバルな政令都市・福岡
福岡市は「世界No1のおもてなし都市の実現」を掲げ、「東アジアのビジネスハブを目指す」という未来設計図の実現手段として、このMICE戦略を強化してきました。強化してきた結果、国際的な会議や国際展示会、国際交流会のほか、国内外の企業のイベント、各種学会、見本市、レセプションの開催が毎年数多く行われるようになり、新しいビジネスやイノベーションの機会創出に成功。九州の玄関口という地方都市のイメージは、やがてアジアに目を向けたグローバル都市として揺るがないポジショニングを確保することになります。
福岡市総務企画局企画調整部(以下、企画調整部)によると、今後、コンベンション施設が集積するウォーターフロント地区(中央ふ頭・博多ふ頭)を再整備し、海のゲートウェイ機能の充実を図るとともに、ホテルなどの民間施設を誘致することで、MICE機能を強化する方針だと言います。
国内外の主要都市との近接性
福岡市は、まずどの県庁所在地にも見られない地理的な優位性をすでに保持しています。国内外の主要都市と直行便が就航する福岡空港へは、市内中心地から市営地下鉄でわずかに二駅。福岡市内のオフィスのドアからソウル、上海、香港へはストレスなく向かうことができる環境が整っています。また博多港からは高速船で韓国(釜山)まで約3時間という距離です。九州新幹線も整備され、陸海空と交通手段としてはどれを利用しても良好で、"交通不便"という言葉がどこを探しても見つからないのが福岡市のロケーションです。
国内の都市で、これほどまでに交通の利便性の高さを誇れる市街はないかもしれません。国際空港、国際港湾、JR博多駅は、おおむね3キロ圏内に位置し、その中心地点が博多、天神となります。交通の要所、オフィス街、商業施設、繁華街、官公庁街、金融街、住宅街がコンパクトにまとまっているのが福岡市です。
スタートアップ都市ふくおか宣言
こうしたコンパクトで住みやすい都市、世界と繋がる良好なアクセスを特長とする福岡市は、さらに九州の中でも若者や学生が多いという人材の宝庫であることを強みに、平成24(2012)年に「スタートアップ都市ふくおか宣言」を行いました。既存の産業、ビジネスに縛られることなく、斬新なアイディアから産み出す新たなる創業を市がサポートするという取り組みです。創業しやすい、チャレンジしやすい環境を創出し、すでにグローバル都市として邁進する都市の姿勢を加速させるのが狙いです
その後、福岡市は平成26(2014)年に大胆な規制・制度改革が期待できる国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」に指定されました。特区で認められた規制・制度改革や国の施策に市の施策を組み合わせることで、平成30(2018)年までに企業の開業率13%という高い基準を市は掲げます。「国家戦略特区を推進エンジンとして、国内外からチャレンジしたい人と企業が集い、新しい価値を生み続ける都市『グローバル創業都市・福岡』を目指していきたい」と企画調整部は抱負を語ります。
天神ビッグバン
しかしながら、実際にビジネスをスタートさせるためのオフィスが足りているとは言い切れません。福岡市の主なオフィスビルの平均空室率は6%台(三鬼商事調べ・平成28年4月現在)と全国的に見ても低いのが目立ちます。そこで「天神ビッグバン」を市が発表します。企画調整部によると「特区による航空法の高さ制限の緩和に加え、市独自の容積率緩和制度などのハード、ソフト両面にわたる施策を天神交差点から半径約500メートル圏内において推進することで、天神地区に新たな空間と雇用を創出したい」と話します。
さらに「2024年までに30棟の民間ビルの建て替えを誘導し、これにより延床面積は1.7倍、雇用者数は2.4倍の増加を予想。また約2,900億円の建設投資効果、建て替え完了後からは新たに毎年約8,500億円の経済波及効果を見込んでいる」と話を続けます。
創業するなら福岡
天神ビッグバンに続き、今年(2016年)5月からは「天神ビッグバンボーナス」を福岡市は創設。建て替えビルが魅力あるデザイン性に優れたビルと市が認定した場合、容積率緩和制度の拡大、地域金融機関による支援、市行政によるビルPRなどがインセンティブとして付加されるとのことです。
こうしたオフィスビルの建て替え支援に加えて、様々なソフト面でも創業をサポートしています。創業したい人と創業を応援したい人の交流の場として「スタートアップカフェ&雇用労働相談センター」が開設されました。また海外の優れた人材の創業活動を促進するために、在留資格(経営・管理)の取得要件を満たす見込みのある外国人の創業活動を特例的に認める「スタートアップビザ」の受付も行っています。
その他、起業家と起業家、企業人と企業人の情報交換の場として「フクオカ・スタートアップ・セレクション」を開催。新しい起業との出会い創出の場として、またビジネスマッチングの可能性を高めるイベントとして注目されています。ハード面とソフト面の両軸で、より一層のグローバル都市を加速させる福岡市の今後に注目です。
取材手記
天神ビッグバンは略して天神BB、さらに天神ビッグバンボーナスは天神BBB。その勢いある戦略タイトルが無駄に一人歩きすることなく、むしろタイトルは市民とともに一体となり、福岡市全体が活性化している様子が感じられます。天神交差点を中心とした新たな経済の鼓動は九州全体に広がり、やがては日本全体、さらにアジア全体にまで広がっていくことも夢ではないかもしれません。
*平成28(2016)年4月の熊本地震に際し、この場を借りましてお見舞い申し上げます。編集部ライター・渡部恒雄
■記事公開日:2016/06/20 ■記事取材日: 2016/05/16 *記事内容は取材当日の情報です
▼編集部=構成 ▼編集部ライター・渡部恒雄=文・撮影 ▼KAME HOUSE=イラスト地図 ▼取材協力・空撮等資料提供=福岡市総務企画局企画調整部・福岡市(FumioHashimoto)