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ビジネスエリア特集 Vol.3 北海道石狩

北海道経済を刺激する新たな流通拠点となるか。
政令都市札幌に隣接する石狩湾新港。

ルールメイクする石狩湾新港

「ニーズがあるから応える」というビジネス戦略は普遍的です。しかし、ヒット商品やトレンドを生みだしてきた企業を観察していると、既成のビジネスルールにとらわれることのない自由な発想でマーケットを刺激し、潜在ニーズを掘り起こしていることに気づきます。型にはまらない独創的なルールから打ち出された商品やサービスが、結果として顧客に受け入れらたケースは多いようです。こうしたルールメイクする企業が勝ち組になる図式は、ビジネスの世界だけに限ったことではないようです。
いま北海道産業の新たな流通拠点としてルールメイクし始めた港があります。
既存の港を発展拡充させたものではなく、また歴史ある港を利用目的を広げて再開発したわけでもなく、もともとは遠浅の砂浜だった地をゼロベースから新港として計画し開港した石狩湾新港です。
北海道には苫小牧港と室蘭港という2つの国際拠点港湾があります。その他、クルーズ客船が寄港する小樽港や函館港、食料基地としての釧路港など、道内の多彩な港湾と共生をはかりながら、新たな流通港の有り様をルールメイクする石狩湾新港を、編集部ライターが見聞してきました。
ルールメイクする工業港イメージ ルールメイクする工業港イメージ

都市力を維持する流通港

日本地図を広げて見てみると、政令都市20市のうち日本海を至近距離にしているのは僅かに4都市。東日本、北海道に限ると新潟と札幌だけというのが現状です。
こうした状況の中、東アジアとの強い経済・貿易関係を築こうとしている日本において、日本海側の物流拠点の整備は早急に対応しなければならない課題の一つでした。また北海道経済の観点からも、道内産業の活性化を促進していく施策として、政治・商圏の中心である政令都市札幌と隣接した流通港開港が求められていました。
平成6年、多くの期待に応えるカタチで、物流と産業拠点を担った都市型港湾として石狩湾新港は誕生しました。
現在、石狩湾新港は、札幌から15キロ圏内という恵まれたロケーションから「札幌の港」と呼ばれ、その高いアクセス性で物流や輸送コストの削減、輸送時間の短縮を実現。都市力を維持した流通港として産業をバックアップするポジショニングを確保しています。

太平洋と日本海を結ぶ流通空間

「太平洋の苫小牧港、国際線も乗り入れる新千歳空港、道内最大の都市札幌を結ぶその先に、日本海に開けた石狩湾新港がある。直線距離にしてたったの70キロほどの流通空間が北海道経済に与えるメリットは大きい」と話すのは石狩湾新港組合。平成27年度末までに予定されている新幹線新函館開業も含めて、いわば北海道を南北で繋ぐこの空間から見える将来の道内経済の見通しは、明るい予想ができそうです。
「国際的なハブ港湾としてアジア流通の拠点となっている韓国釜山港とを結ぶ航路を開設。外貨定期コンテナ全体の取り扱い個数は、開港以来の過去最多を記録しました」石狩湾新港組合の資料によると、平成24年のコンテナ取り扱い個数は平成23年実績の11%プラスとなり、今年(平成25年)も10月現在で記録更新が見込めるなど、道内経済の上昇指向を伺わせる数字が出てきています。
太平洋と日本海を結ぶ流通空間イメージ

食の流通基地と防災拠点

平成21年以降5年連続で貿易額を上げてきた石狩湾新港も、その第一船の入港は木材を積んだ貨物船でした。その後、工業品、鉱産品などの輸出入の窓口として港湾施設の充実を図り、さらに水深15メートルの中央航路の確保やガントリークレーンの設置のほか、バックヤードには倉庫や物流センターなどが建設できる工業団地を要するなど、国際貿易港として拡充させてきています。
食の流通基地と防災拠点イメージ
今後の石狩湾新港についてお聞きすると「既存の港湾にとらわれないルールを作っていきたい」(石狩湾新港組合)。その一つが食の供給基地化だと言います。
「北海道の食料自給率はカロリーベースで191%(平成23年度都道府県別食料自給率/農林水産省)と全国1位。この道産の美味しいモノを国内外に供給する基地にしたい」とのこと。冷凍冷蔵庫が多数集積している強みを活かして、リーファーコンテナの受け入れ態勢を強化するなど、食の流通基地化は着実に進んでいるようです。
また防災機能の向上は、大都市に隣接する港湾の新しい立ち位置として注目されています。「地震や津波などの災害リスクが低い石狩地域ですが、耐震強化岸壁を完成させたことで防災力を高めました。また豊富な庫腹量を抱えていることも防災拠点としての条件は満たされています」(石狩湾新港組合)。(写真:石狩湾新港工業団地・リーファーコンテナ)

エネルギー拠点としてルールメイク

ルールメイクしつづける石狩湾新港の次の一手は「天然ガスを貯蔵するLNG タンクを竣工。地下パイプラインを通じ道央圏に出荷しています。石油タンクは新たに8基増設し25基とします。また火力発電所の建設に着工しエネルギーの安定供給へ貢献します」と、エネルギー基地としての可能性を追求し始めていました。
また、産学官連携で世界初の取り組みとなる"高温超電導直流送電システムの実証"を行う研究地として石狩湾新港地域が選定。同研究は省エネルギーの先端となることから、次世代の石狩湾新港の顔となることが期待されています。(写真:LNG船とLNGタンク・石油貯蔵タンク)
エネルギー拠点としてルールメイクイメージ
石狩湾新港は、北海道経済を支える重要な物流拠点としてだけでなく、食クラスター支援、道民生活の防災機能、さらにエネルギー基地として既存の港湾の枠にとらわれずにルールメイクしつづけていました。時代の流れとともに多様に変化し成長を続ける港のルールメイカー、それが石狩湾新港ではないでしょうか。編集部ライター渡部恒雄
■記事公開日:2013/12/17
▼編集部=構成 ▼編集部ライター・渡部恒雄=文・撮影 ▼KAME HOUSE=イラスト地図 ▼空撮/石狩湾新港写真/資料等提供=石狩湾新港組合

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