九州新幹線開業、政令都市指定。
そしていま熊本経済は「くまモン」効果で活力向上中。
ゆるキャラブームが止まらない
まちおこしや街のブランド力向上のほか、地域活性化のために、いま「ゆるキャラ」が一役買っています。
「ゆるキャラ」とは、ゆるいマスコットキャラクターを略したもので、日本全国の都道府県、市町村の「ゆるキャラ」は二千体以上あるとさえ言われています。
その中でも圧倒的に人気を誇るのが熊本県の「くまモン」です。全身が真っ黒で、くるっとした目と赤いほっぺが印象的な、2011年のゆるキャラグランプリで優勝まで果たした全国区的な人気者です。
もともとは九州新幹線全面開業に合わせて、熊本県庁が、くまもとサプライズキャンペーンの一貫としてデビューさせたキャラクターでしたが、単にゆるキャラに止まらず、その経済的な効果は絶大。今春、熊本県は、「くまモン」を利用した商品の売上高が2012年の1年間に293.6億円に達したと発表しました。
そしていま「くまモン」は、県の農産品、食料品、グッズなどの商品への経済波及効果に貢献しただけでなく、ビジネスシーンで新たなサプライズを展開し始めています。その現場となる熊本県の県庁所在地熊本市に、編集部ライターが見聞してきました。
1.シリコンアイランド九州の中心地として
熊本県は他都道府県から企業誘致を積極的に推進している県の一つです。
熊本の優位性を見てみると、まず熊本は九州の中心に位置していることから、生産や物流、営業拠点として有利なロケーションを抱えていることがわかります。また内海に面しているので、韓国・釜山や中国・大連、青島へのトランシップを可能にする港湾施設が整っています。「ガントリークレーンを整備するなどポートセールスにも力を注いでいます」と、熊本県くまもとビジネス推進課は話します。
そして何よりも、半導体など電子部品やデバイスなどの製造にかかせない、良質で豊かな水資源を有することが、シリコンアイランド九州の中でも製造関連企業が多く集まってきた所以ではないでしょうか。(写真:熊本港・菊池渓谷・菊池テクノパーク)
2.九州新幹線全線開通と政令都市指定
「2011年の九州新幹線全線開通がおよぼした経済効果は計りしれません」(熊本県くまもとビジネス推進課)。福岡・博多から熊本までは、新幹線みずほで約35分という利便性が、経済活性化の最初の起爆剤となったようです。そして2012年、熊本市が全国で20番目、九州で3番目の政令指定都市に移行すると「都市機能が充実したことで、企業誘致、地元雇用などの面からも、暮らしやすく働きやすい熊本がアピールしやすくなりました」(熊本県くまもとビジネス推進課)と言います。
九州新幹線全線開通と政令都市指定が、熊本の経済活性化を進めたと言っても過言ではないようです。(写真:九州新幹線)
3.暮らしやすく働きやすい熊本
経済活性化が進む熊本県の中心地は、市役所や証券会社、銀行などが並ぶ熊本市中央区花畑町(地図2)です。ビジネス街、花畑町を抜けると、古い歴史ある家が点在し、昔ながらの城下町風情を味わうことができます。
街のランドマークは熊本城です(地図5)。熊本城周辺は、城への眺望などを保全するため、建物の高さ制限が定められています(熊本市ホームページ/熊本市景観計画について)。西日本一の規模と言われるアーケードがあり、ショッピングをする市民で賑わっています(地図3)。熊本は、まさに暮らしやすく働きやすい街と言えます。
そんな熊本で、九州新幹線、政令都市につづいて新たな経済活性効果を生み出したのが、市内のいたる所で出会う「くまモン」です。
4.ビジネスにサプライズ「くまモン」
「くまモン」の2012年の経済効果は293.6億円と熊本県は発表しています。しかし、それ以上に、思わぬところで二次的な波及効果が広がりはじめています。
「名刺交換するだけで、くまモンの県ですよね、と場が和んだ。くまモンを使った新しいビジネスモデルの企画がある・・・ビジネスの交渉やプレゼンテーションで緊張した空気を和らげてくれる、親近感を感じていただいてビジネスがスムーズに進んだ、企業誘致やUターンの促進に繋がるなど、数字では表せない効果が出ています」(熊本県くまもとビジネス推進課)
九州新幹線開業時に、くまもとサプライズで生まれた「くまモン」は、まさにビジネスシーンでもサプライズを展開しているようです。(写真:東京都内のビジネス展示会出展ブース・くまモン)
半導体産業にかかせな水、九州の中心地、内海で整備が進む港湾施設。そして九州新幹線、政令都市、と半導体産業だけでなく、企業誘致、Iターン、Uターンに積極的な熊本。さらに充実の工業団地、産学官連携の研究開発体制、人材育成環境の構築、企業立地を促進する補助金制度・・・。ゆるキャラ「くまモン」がビジネスの潤滑剤となって、熊本経済が潤っていく未来を目撃したような取材でした。編集部ライター渡部恒雄
■記事公開日:2013/08/09
▼編集部=構成 ▼編集部ライター・渡部恒雄=文・撮影 ▼KAME HOUSE=イラスト地図 ▼写真・くまモン等資料提供=熊本県くまもとビジネス推進課