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ビジネスエリア特集 Vol.17 品川駅周辺エリア

再開発とリニア中央新幹線で大注目!
国際都市東京のボトムとなるビジネスエリアに

品川車両基地がビジネス基地に変貌

江戸時代に東海道で最初の宿場町が置かれたのが品川です。高度経済成長期以前より品川駅周辺エリアは、駅を挟み、西側の「高輪口」は移り住んだ資産家相手としたサービスや高級品を取り扱う商業エリアとして、東側の東京湾に面した「港南口」は倉庫が連立する工業エリアにと、異なる街が形成されました。ところが、2003年の東海道新幹線品川駅の開業により、「西日本への玄関口品川」として一躍注目されることとなります。

そんな品川駅周辺がいま、さらに大きく変わろうとしています。JR東日本は、品川駅と田町駅間に広がる車両基地跡に、山手線30番目の新駅設営と周辺地域の大規模な再開発を行う「品川開発プロジェクト」を発表。世界の先進企業や人材が集い、それらの交流から新しいビジネスや文化が生まれる『グローバルゲートウェイ品川』の実現に向けて工事が進んでいます。
新駅の暫定竣工は2020年(駅周辺街区は2027年)を予定。東京五輪開催を追い風に、新しい機能を有したビジネス基地の誕生に期待が高まっています。
 国際競争力の一翼を担う関西圏最大の経済都市

大規模再開発で品川駅周辺は益々変わる!

再開発のシンボルとなる「新駅」は、JR山手線品川駅から田町駅に向けて約900mの地点に新設されます。設計は新国立競技場を手がけた隈研吾氏。従来の駅舎イメージとは全く異なるデザインからも、新しいビジネス街の誕生が予感できます。新駅の設計コンセプトは「山(高輪側)と海(港南側)をつなぐ広場の役割を担う駅でありたい」というもの。その全容は、隈研吾都市設計事務所のHPよりご覧いただけます。

隈研吾都市設計事務所HP:http://kkaa.co.jp/works/architecture/jr-new-shinagawa-station/

品川開発プロジェクトは、新駅設営のほか、複数のオフィスビルや商業施設、超高層のホテルやマンション、それらに連携したアミューズメント施設の建設が計画されています。さらに、山手線を挟んで西側の京急泉岳寺駅と空中歩道で結ばれるなど、JR利用に不便を強いられてきた泉岳寺周辺企業の歩行者ネットワークの強化も計画されています。
キープレスのコラムでもお馴染みのマーケティングプランナー清野裕司氏は、これらの事業が実現すれば、ビジネスにおける移動便宜性のメリットから、広範囲にわたってオフィスビルの建設やリニューアルが進み、それに伴い中小企業のオフィス移転が活発化し、品川駅周辺エリアの就業人口は急増してゆくことは間違いないと分析します。

再開発で起死回生を図る高輪エリア

「明治5年に品川から横浜との間で日本初の鉄道の試験開通が行われました。これによって品川は、文明開化を後押しする鉄道交通の要所へと変貌したわけです。そうしたことから高輪には、多くの資産家たちが相次いで移り住むこととなり、上質な品々やサービスを提供する街が形成されました。しかし今の高輪には、残念ながらその面影はありません」。そう話してくださったのは、親子二代にわたって高輪で商売を営んでいらした商店会長。品川開発プロジェクトに大きな期待を寄せるお一人です。

現在の品川駅西側・高輪口エリアを歩くと、駅前に著名なホテルが構えるものの"商業中心のビジネスエリア"と呼ぶには明らかに物寂しさを感じます。それでもかつては、商店会には130以上もの店が軒を並べ、地域経済の土台になっていたそうです。
ところが現在は半分以下の約50店舗ほど。品川開発プロジェクトは商店会にとっても起死回生の起爆剤になると商店会長はおっしゃいます。

「再開発が行われれば、高輪に着目して新しく事業を始める方も増えるでしょう。事実、既に再開発を見越して、ここで商売を始めた方もいます。ただ、新しい人が増えればいろいろな意見が出てきて、今までは善とされてきたことが見直されるかも知れません。しかし、そうしたことに臆病になっていてはダメです。再開発はチャンスです。それがもたらす変化に私たちの方が馴染んでゆく努力をするべきなのです」。

東京、名古屋、大阪をリニアが一体化

都心の駅周辺でありながら、人々で賑わう繁華街もない殺伐とした倉庫街。これがかつての品川駅東側・港南口エリアのイメージでした。それが2003年の東海道新幹線品川駅開業を機に、徐々にビジネス街の印象を強めてきました。そして現在の駅前には、超高層オフィスビルが連立し、日本を代表するナショナル企業も数多く拠点を置いています。
とはいえ、まだまだ中小企業の進出は少なく、今後活性化の余地がありそうです。そんな港南口エリアが「品川開発プロジェクト」と連動したリニア中央新幹線の開業で東京屈指のビジネス街へと変貌します。

まさしく"新・夢の超特急"の呼び名が相応しいリニア中央新幹線は、東京・名古屋間をわずか40分(2027年開業予定)、東京・大阪間に至っては最速67分(2037年開業予定)という驚異的な走行時間の短縮を目指しているそうです。
リニア中央新幹線の目的の1つは、東京、名古屋、大阪の「3大都市圏を一体化」を図ることで、経済活動を活性化する狙いがあります。当然ながら3大都市圏のみならず、地方圏への移動時間も大幅に短縮され、各地域の産業交流が今まで以上に容易になることは間違いないでしょう。その東の一翼を担うのが港南口の直下、地下約40mに新設されるリニア中央新幹線品川駅です。

在京のビジネスパーソンにとって、名古屋、大阪への出張はまだまだ遠距離感が否めません。しかしながら近い将来、午前中に現地に出向いて、ひと仕事終えてランチ前には帰社できる。そんな時代が訪れます。

見過ごせない!泉岳寺駅周辺の変貌

再開発で最も顕著な変化を遂げそうなのは、国道15号線沿いに面した京急泉岳寺駅周辺ではないかと思われます。JR東日本が発表した新駅の位置は、泉岳寺駅より山手線を挟んだほぼ真向いに設営され、空中歩道で結ばれます。これにより、大注目の新駅を最寄りとする企業のモビリティが格段に向上することが見込まれます。いわば、再開発の肝となる新駅の目と鼻の先にある泉岳寺駅周辺は、品川駅周辺と連動して2020年以降、見逃せないビジネスエリアへと変貌することは間違いないでしょう。

またインバウンドの側面を考えても、再開発はこの周辺エリアに大きな恩恵をもたらしそうです。駅から徒歩3分の泉岳寺は、忠臣蔵でお馴染みの赤穂浪士四十七士が眠る名刹です。そんな中、とくに目立っていたのは外国人観光客で、パンフレットを片手に熱心に参拝する姿が印象的でした。この点について境内で土産物屋を営む店主に聞くと、今では6:4の割合で外国人観光客の方が多いのだとか。しかもそうした方々の多くは泉岳寺だけでなく、周辺に点在する寺社巡りを目的に訪れるそうです。
しかしながら今は、アクセスステーションが京急泉岳寺駅だけ。JR山手線に新駅ができれば、より多くの外国人観光客が訪れ、インバウンド効果で周辺地域全体の活性化につながるだろうと期待を滲ませていました。

取材後記

品川駅が位置する正式住所は、東京都港区高輪3丁目と港南2丁目にまたがる地点。つまりこの再開発事業の管轄は品川区でなく港区ということになります。こうしたことから9つの高輪商店会が連名で、港区役所に対して、新設される新駅の名称を『たかなわ』とするよう請願書を提出したそうです。結果的にはJR東日本の方針により初の公募形式で駅名を決めることに。それでもまだ「諦めてはいない」ということでした。つまり「品川開発プロジェクト」は、先進的なまちづくりの機能拡充はもとより、地元に根差して商売を営んできた方々にとっても大きな意味があることが今回の取材で分かりました。

品川駅周辺は紛れもなく東京の中心地です。東海道新幹線の開業やエアポートアクセスの向上によって駅自体は確かに便利になりました。しかしこれまでは、「ここで事業を営む意味」に欠けていたように思います。厳しい見方をすれば、大企業誘致を目的に発展して、中小企業対策がおざなりだったと言うことができるかも知れません。

今回の再開発とリニア中央新幹線の開業は、そんな品川駅周辺エリアに大きな一石を投じることになるはず。「ここで事業を営みたい」と誰もが思う、全く新しい街へと生まれ変わります。


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■記事公開日:2018/09/12 ■記事取材日: 2018/08/20・23 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣 ▼撮影=吉村高廣 ▼イラスト地図=KAME HOUSE
▼再開発計画出典=品川駅・田町駅周辺まちづくりガイドライン2014(東京都)▼画像素材=PIXTA

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