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ビジネスエリア特集 Vol.19 神戸

神戸の玄関口・三宮が変わる!
いよいよ動き出した国際都市・神戸

街と経済の持続的成長を視野に入れた『神戸都市ビジョン』

1868年の開港以来、国際色豊かな港町として発展してきた神戸。日本の慣習にとらわれないチャレンジングな取り組みで、独自の文化を築いてきました。そんな神戸も現在は、人口の減少とそれに伴う高齢化に直面しています。神戸市では、この課題に歯止めをかけて、街と経済の持続的成長を視野に入れた『神戸都市ビジョン』を策定。「若者に選ばれるまち・誰もが活躍できるまち」を標榜して、都市インフラの強化や、人とアイデアの融合により新たな価値が創造される街を目指して環境整備が進んでいます。

そんな取り組みを牽引してさらなる成長のエンジンとなってゆくのが、三宮、元町、旧居留地、神戸駅周辺など、神戸を代表する4つの経済圏に他なりません。そこで今回は、JR三ノ宮駅から神戸駅まで路線距離にしておよそ2kmと決して広くはない4エリアをくまなく歩いてみました。そこには同じ歴史に培われたポートタウンでも、異なる「まちのカタチ・仕事のカタチ」がありました。
 国際競争力の一翼を担う関西圏最大の経済都市

神戸随一のビジネス街【三宮エリア】

新幹線停車駅の新神戸から市営地下鉄でひと駅。交通や経済などあらゆる面で"神戸の玄関口"となる三宮は、市内髄一の企業集積地区と言えるでしょう。駅南口には昭和8年の竣工以来、三宮のランドマークとなってきた百貨店「そごう」が構え、ここを起点として港に向けて伸びるフラワーストリートが国際都市神戸のビジネスエリアを象徴する"表の顔"となっています。
沿道には、日本を代表する生保や証券、食品、消費材メーカーが数多く拠点を構えるほか、神戸市役所が立地するなど、早足で行き交うスーツ姿のビジネスパーソンを最も多く見かけるビジネスエリアです。

三宮では現在、周辺地区の再整備構想「神戸三宮・えきまち空間」の基本計画が始動しています。これは三ノ宮駅を軸とした交通結節機能の充実や、周辺地域への回遊性の向上を図り、新しい神戸の玄関口の創造を目指すというもの。1981年の神戸ポートアイランド博覧会時に合わせて竣工した三宮ターミナルビルの開業以来、ほとんど変化して来なかった駅前ランドスケープと街の機能が劇的に変わります。このことによってビジネスエリアとしての利便性向上はもとより、数多くの商業施設が集積する三宮センター街などにも更なる賑わいが生みだされることは間違いないでしょう。キーステーションの再開発では、大阪駅や京都駅に遅れをとった印象もありますが、それだけに新しい可能性を秘めているとも考えられます。

「神戸三宮・えきまち空間」基本計画の詳細をご覧いただけます。
http://www.city.kobe.lg.jp/information/project/urban/kobetoshin/

神戸の良さは元町にあり【元町エリア】

隣り合う三宮を神戸一の企業集積地とするならば、元町は神戸を代表する商業集積地と言うことができるでしょう。JR元町駅前には開港当初から南京町が形成され、今では100を超える店舗が軒を連ねる神戸の観光スポットになっています。また、元町のランドマークである大丸神戸店からJR東海道本線と平行に伸びる元町商店街(約1.2km)は、およそ300もの商店が密集する巨大アーケード。「神戸の良さは元町に集約されているんです」と胸を張る中華料理店の主人によると、中には創業100年を超える老舗が数多くあるのだとか。三宮のフラワーストリートを"表の顔"とするならば、元町商店街は地元の暮らしに密着した"裏の顔"と言うことができます。

そんな元町を南下して旧居留地に向けて足を運ぶと次第に街の様子が変わってゆきます。途中、街角で見つけた石板には、この一帯(栄町付近)は、昭和初期まで「東洋のウォール街」と呼ばれ、金融、商社が集まる神戸ビジネスの中心地だったことが記されていました。事実その名残から、周辺には銀行や生保のサインを散見することができます。さらにこの地域には、中・小規模のオフィスビルが非常に多く密集しており、ビルプレートには多種多様な業態の企業が名を連ねていました。南京町や元町商店街のインパクトの大きさから、商業や観光色の強い元町ですが、ビジネスエリアとしてのポテンシャルは今なお健在。三宮にも負けてはいません。

はいからなオフィス街【旧居留地エリア】

旧居留地のシンボルといえば、1922年に日本を代表する建築家・渡辺節の設計によって建てられた神戸商船三井ビルディング(旧大阪商船神戸支店)。圧倒的な存在感で海岸通り沿いに佇んでいます。さらに仲町通りと明石町筋の交差点角に佇む神戸旧居留地38番館は、近代建築の名匠ウィリアム・メレル・ヴォーリズの手により1929年にナショナルシティ銀行神戸支店として建設されたもの。現在は1階にエルメスが店舗を構えるファッションビルになっています。旧居留地エリアには、こうした文化財としての価値あるレトロビルが数多く存在し、そのほとんどが原型をとどめ今なお現役のオフィスビルとして使われています。

2018年からこのエリアでは『旧居留地はいからプロジェクト』というユニークな取り組みが実施されています。これについて担当者は次のように話してくれました。「ここは、神戸の中でも最も神戸らしい街だと私どもは自負しています。しかしこのエリアは観光地ではなくオフィス街です。普段は訪れる人も少なく、街の魅力は限られた人にしか伝わっていません。そこで、旧居留地の雰囲気に相応しいイベントを実施して、旧居留地の魅力を広く発信したいのです」と。この言葉の根底には自治意識の高さが感じ取れます。そしてそれは、景観や防災といったビジネスエリアとしてのステイタスにも大きく影響しているようでした。

「旧居留地はいからプロジェクト」の詳細をご覧いただけます
https://faavo.jp/kobe/project/2966

変わりゆくベイエリア【神戸駅周辺エリア】

ベイエリアとしての風情を最も色濃く反映しているのが神戸駅周辺エリアです。駅南口を歩いてまず目に飛び込んできたのが元町商店街のアーケード出口。約1.2kmに及ぶショッピングの旅もここで終わりです。
このエリアが本格的な近代化(再開発)を遂げたのは1990年代のこと。三宮や元町のようにランドマークとなる大手百貨店はないものの、周辺にはオフィスや店舗、居住などを備えた大・中規模の複合ビルが立ち並び、都市機能の充実が伺い知れます。そして駅から歩いて5分。そこには神戸港が広がります。

神戸港に面したこのエリアの正式名称は神戸ハーバーランド地区。駅周辺と同時期に再開発が行われた商業エリアです。ところが、現在このエリアを歩いてみると明らかに"商業縮小"の動きが顕在化しており、一部ではマンションの建設用地として新たな再開発が進んでいました。神戸ハーバーランドの歴史を紐解くと、再開発の成り行きについてかなり手厳しい意見も見受けられましたが、それでもこのエリアは神戸のステイタスを語る上で欠かせません。雨上がりの桟橋には近隣オフィスのビジネスパーソンが憩い、そこから見る神戸港は、長らく日本経済を底支えしてきた国際貿易港ならではの貫禄がありました。

取材後記

今回スポットを当てたのはJR東海道本線を境とした南側の4エリアです。取材2日目の2月5日は南京町の春節祭初日とあり、元町周辺はインバウンドの外国人でごった返していると思いきや、賑わっていたのは生田神社や異人館を目指す北側のエリアでした。もとより北野地区周辺は観光スポットになっていますが周辺は普通の住宅地です。シーズン時期の地域住民の暮らしが心配になるほどの賑わいぶりでした。

神戸(三ノ宮駅周辺)は南口と北口では全く趣が異なります。南は先に記した通り神戸随一のビジネスエリアです。一方北は、駅前からかなりの広範囲で飲食街が広がっています。駅を隔てた街のコントラストに驚きましたが、これも「神戸三宮・えきまち空間」の再整備で大きく変わることになるようです。いずれにしても今神戸は市がビジョンに掲げた大変革の実現に向けて走り出しています。その未来が楽しみです。


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■記事公開日:2019/02/25 ■記事取材日: 2019/02/04・05 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣  ▼撮影=吉村高廣  ▼イラスト地図=KAME HOUSE
▼協力=神戸の経済2016/都心・三宮の再整備(神戸市) /旧居留地はいからプロジェクト実行委員会

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