街の変化と人口増加が止まらない!
最強地方都市・福岡のキーエリアを往く
2つの大規模再開発で福岡はさらに大きく変わる
2019年10月に公開された「全国自治体構成・最新版」によると、東京23区を除き、横浜市、大阪市、名古屋市、札幌市に次ぐ人口を擁する政令指定都市・福岡市。多くの地方都市で「人口の減少」が問題視される中、福岡の人口は増え続け、現在は160万人に迫る勢いです。産業と雇用、交通インフラの整備、ライフスタイルの多様性という3つの観点からも完全無欠の都市機能を備える福岡市ですが、今後はさらなる発展が期待されています。
その行方を左右するのが「天神ビッグバン」と「博多コネクティッド」の2大再開発プロジェクトです。今回はそれらが影響するであろう6つのビジネスエリアを歩いてみました。
今後8年で九州一のビジネスエリアが生まれ変わる【博多駅前エリア】
JR博多駅前エリア(博多口)は、大規模オフィスビルが林立し、ビジネスマンが闊歩するビジネス街として認知されてきました。そんなイメージを一新したのが、2011年3月「博多シティ」の開業です。成熟したビジネス街として経済を底支えしてきた"九州の玄関口"は、百貨店や専門店、映画館やレストランなどが入る巨大な"シティ"とともに大きく変貌。取材に先立ち資料提供をしてくださった福岡市東京事務所も「博多駅周辺はビジネスエリアで、天神は若者が集まるショッピングエリアというのは、もはやオールドタイムなイメージです」と話します。
とはいえ、今なおこのエリアが九州でも最大規模を誇るオフィス街であることは変わりません。博多駅を起点に、呉服町方面に伸びる大博通り、天神方面へ向かう博多駅前通り、薬院方面へ続く住吉通り沿いには、名だたる企業の支社や支店が軒を並べ、その間に、金融機関やホテルが建ち並ぶという隙のなさです。
そしてエリア最大のトピックと言えるのは、「天神ビッグバン」に続く大規模再開発「博多コネクティッド」動向です。このプロジェクトは、JR博多駅を中心とした半径500mのエリアを対象に、積極的なビルの建て替えを進め(2028年までに20棟)、より機能的・先進的な街づくりをしてゆこうというものです。
カーアクセスNO.1 空港へ、そして高速へ【博多駅東・駅南エリア】
このエリアは、JR博多駅(筑紫口)から竹下通りや筑紫通りを中心に、中規模のオフィスビルやホテルが集積するビジネス街です。駅を隔てた博多口周辺と比較すると大規模なオフィスビルは少ないものの、福岡空港や九州自動車道、福岡都市高速へのカーアクセスに優れ、車移動がマストな事業者にとっては福岡一の好立地と言えるでしょう。また、駅周辺には居酒屋チェーンなど庶民派の飲食店が数多く"サラリーマンが憩える街"といった風情があるのもこのエリアの大きな特徴と言えるでしょう。
「博多コネクティッド」は博多駅東・駅南エリアも大きく変えることが予見されています。プロジェクトの先陣を切って昨年9月には、博多駅地下コンコースと直結した「都ホテル博多」が開業。筑紫口駅前の新しいランドマークとして、ビジネスやインバウンドに貢献しています。
さらに、市民に親しまれてきた「博多スターレーン」も建て替え計画が始動。2022年には新たな複合オフィスビルが建設され、今まで以上に賑わいに満ちた、高い経済効果が期待できるビジネスエリアへと変貌するものと目されています。
歴史とのマッチアップでインバウンド効果も【祇園・呉服町エリア】
地下鉄空港線沿いに、博多駅と天神駅のちょうど中間に位置するのが呉服町エリアです。ビジネス街を象徴しているのは、大博通り、明治通り、昭和通りといった3つの主要道に建ち並ぶ中規模のオフィスビル。博多駅前ほどの派手さはないものの、いずれのビルも比較的新しい建て構えで、街全体が清潔な印象を与えます。同時に、大博通りを博多駅から歩いて約1㎞という距離感は、駅前の喧騒から程よく離れ、職住近接を望む人には最適な環境。居住エリアとしての整備も進み、マンションも数多く目につきました。
博多の寺社や歴史的建造物と街の進化を、非常に上手くマッチアップしているのが祇園エリアです。地下鉄祇園駅を出て大博通りを呉服町方面に往くと、右手には東長寺をはじめとした寺社が集積する一角が広がり、周囲のオフィスビルがその風情と馴染んでいます。さらに通り向こうの冷泉町には、櫛田神社表参道の鳥居に隣接して「博多祇園NKビル」が2018年に竣工。博多旧市街の魅力を活かしつつ、ビジネスを加速させ、さらにはインバウンド効果をも狙って街の活性化を図る、多様性に満ちたエリアです。
ビッグバンで、これからもっとビジネスエリアに【天神エリア】
三越をはじめ、大丸や岩田屋などの老舗百貨店が建ち並ぶ九州最大の繁華街であり、福岡におけるトレンドゾーンの一等地と知られている天神。それぞれの商業施設が地下街で結ばれるなど、高い利便性も手伝って賑わいに拍車をかけています。また、このエリアは商業だけではなく、高いポテンシャルを持つビジネスエリアでもあり、明治通り、昭和通りには大・中規模のオフィスビルが連立しています。さらにここ近年は、新たな事業空間と雇用創出を目的とした再開発プロジェクト「天神ビッグバン」の取り組みが進捗しており、高層オフィスビルの建設や企業誘致計画などで今後ますますの盛り上がりが予想されています。
2016年6月のビジネスエリア特集でも「天神ビッグバン」については取り上げていますし、さまざまな報道がなされているので細部は省略しますが、このプロジェクトの最も大きなポイントは、航空法の規制緩和により、天神地区において今までよりも高いビル建設ができるようになったことです。これによって、オフィスビルを高層化して入居する事業者数を拡大し、雇用数をも増やすことが可能になります。プロジェクト完了の期限は2024年。天神コア・福岡ビルといったランドマークが幕を閉じた跡地には、その象徴となるであろうオフィス・ホテルを含む19階建ての大規模複合ビルの建設が計画されています。
博多、天神に次ぐ第三のビジネスエリア【赤坂・大名エリア】
天神の西側に位置するこの地区は、昭和通りを挟んで、北側が赤坂エリア、南側が大名エリアに分かれています。赤坂エリアには、法務局、検察庁、家庭裁判所などが点在していることから弁護士事務所や司法書士事務所などを有する中・小規模のオフィスビルが非常に多く目につきます。一方、天神の繁華街に隣接する大名エリアは、南北に走る大名紺屋町通りを軸として多くの飲食店が軒を並べているのが特徴です。
博多駅周辺や天神など、大規模オフィスビルが建ち並ぶビジネスエリアと比較してしまうと、いささかコンパクトな印象が否めない赤坂・大名エリアですが、実際には、他所の地方都市なら「ここがメインエリア」と言っても遜色ない規模感を誇っています。さらに今後、天神ビッグバンの波及効果がプラスに及べば、人口動向や土地価格の高騰など、あらゆる面で大きな変化をもたらすことは間違いないでしょう。それを見越してなのか、大濠公園周辺には新築マンションが数多く見られました。
インフラ整備で活性化が期待される注目エリア【薬院・渡辺通エリア】
天神の南側に広がるのが薬院・渡辺通の両地区です。主だったオフィスエリアは、渡辺通りから西鉄天神大牟田線の薬院駅までの一角です。実際に歩いてみて驚いたのは、渡辺通付近のホテル集積率です。主だったものだけでも、リッチモンドホテル、西鉄イン天神、セントラルホテル福岡、タカクラホテル福岡、東横イン、ホテルニューオータニなど。これらは、ビジネスパーソンの出張者利用というよりも、インバウンドの旅行者が多い福岡ならではのエリアマネジメントという印象も持ちました。
薬院駅は西鉄天神大牟田線と福岡市営地下鉄の乗り継ぎに利用される他、マイカーやバスの利便性も良いため、朝晩の通勤時間帯には駅周辺が込み合います。しかし、2022年には地下鉄七隈線が博多駅へ延伸することが予定されており、博多駅やキャナルシティへのアクセスも大きく改善されることが見込まれています。天神ビッグバンの波及効果もさることながら、交通インフラの整備に伴って街の活性化が期待できる、これから注目のビジネスエリアと言えるでしょう。
■記事公開日:2020/02/27 ■記事取材日: 2020/02/12・13 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣 ▼撮影=吉村高廣
▼イラスト地図=KAME HOUSE ▼取材資料提供=福岡市東京事務所