将来の利便性がより期待でき、
これからの時代に相応しい街づくり。
都心エリアが生まれ変わる!せんだい都心再構築プロジェクト
東北地方の商業の中心的役割を担ってきた仙台市。東日本大震災以降は企業立地促進(立地企業向け助成金の見直しなど)を強化して、IT関連を中心に大手企業の誘致にも成功。オフィス需要も年々高まり活況を見せてきました。そうした一方、復興需要の縮小に伴う地域経済への影響や、都心部に散見するビルの老朽化問題が顕在化。震災によるまちづくりの遅れを取り戻すべく、経済活動の中心となる都心部の再構築(ビジネスエリアとしての機能強化)が急務となっていました。
これに対応するため仙台市では、2019年7月より「せんだい都心再構築プロジェクト」を始動。ビルを建て替える際の助成金制度を設けたり、ビル容積率の緩和などによって高機能オフィスビルや、ウイズコロナ時代の企業ニーズ(環境性や快適性等)に優れた"グリーンビルディング"の整備を支援し、「杜の都」と呼ばれる仙台らしい環境の創造と持続的な経済成長の両立を目指しています。
そこで今回は、プロジェクトの重点地区「駅前地区」「一番町周辺地区」「県庁・市役所地区」に加え、新たな街づくり計画が動き出した「駅東地区」の4エリアに焦点を当て、その現在と未来予想図を紹介します。
高機能オフィスビルと緑化が融合【駅前地区】
駅前地区は、仙台駅西口周辺から市内を南北に走る大動脈・東二番町通りまでのエリアを指し、古くよりビジネスと商業の両面における中心地区とされてきました。しかしながらこの10年来、エリアの更なる発展の足かせになっていたのが、駅前の大規模用地が、低利用あるいは未利用の状態にあったことです。駅前地区は、仙台市の中心的なオフィス街や繁華街につながる一等地です。にもかかわらず、2009年に閉館した仙台ホテル跡地が今なお仮施設(商業施設・駐車場)であったり、2017年に閉店した旧さくら野百貨店が既存施設を残したまま放置された状態が続いていました。
昨今、このような状況が一転し、エリアの各所で大規模な再開発が動き出そうとしています。計画の一部を紹介すると、旧さくら野百貨店跡地については、オフィスとホテル2棟の高機能ビルが建設され、低層階が商業施設でつながれます。オフィスビルの高さは約150m、ホテルは高さ約130m。延べ床面積は合計約11万㎡になる予定。2024年に着工し、2027年度中の竣工を目指しているそうです。
さらにプロジェクトでは、青葉通の一部を広場にする将来イメージが示されています。イメージ図を見ると、中央のケヤキ並木と歩道の街路樹は残し、緑地化された車道を多くの市民が散策しています。これらが着実に進めば、10年後には駅前地区の印象はガラリと変わっていることでしょう。
中心部をテコ入れして街全体を活性化【一番町周辺地区】
青葉通沿いは大規模ビルが林立した"オフィス街"の趣である一方、新旧の商店がひしめくアーケード街を中心に、古くから仙台商業の中心街となってきた一番町周辺地区。リクルートがおこなった『住んでいる街実感調査2020宮城県版』のアンケートによると、「どこにでも徒歩でいけて便利」といった利便性の高さから『愛されている街・駅ランキング』において1位を獲得。仙台市民にとって人気居住エリアにもなっています。そんな一番町周辺地区が今後大きく変わることが予見されています。
仙台で誕生し、地元住民に愛されてきた老舗商業施設「藤崎百貨店」。老朽化が進んでいた藤崎ファーストタワー(本館)の建て替えを中心に、周辺地域の20棟ほどのビルを含む最大約17,000㎡という大規模な再開発が予定されています。これらのエリア内には、築50年以上の老朽化したビルが複数あり、2018年から再開発に向けた検討が続けられ、2020年には再開発推進協議会が設立。「せんだい都心再構築プロジェクト」によって計画も後押しされる見込みです。再開発エリアは、大型商業施設が集積する仙台駅と官公庁街とをつなぐ中間のため、都心部全体に影響し更なる賑わいが創出されることが期待されています。
市役所を含め一体感のあるエリア整備【県庁・市役所地区】
県庁をはじめとして、市役所、合同庁舎などが立地する官公庁街です。ビジネスエリアとしては、メインストリートの定禅寺通と、愛宕上杉通周辺は、ゼネコンや建設関係企業サインが数多く見られました。それはまさしく、東日本大震災以降の復興事業に迅速に対応すべく形成された"街のカタチ"とも言えるでしょう。官公庁街ゆえ、駅前地区や一番町周辺地区と比べると華やかさには欠けますが、繁華街の国分町やアーケード街が近く、都市機能の高さは卓抜なエリアと考えられます。
老朽化や耐震性、さらには分散された庁舎の集約などを理由に、長らく建て替えが検討されてきた市役所本庁舎ですが、2020年に基本計画が策定されました。新しい庁舎計画のコンセプトは「小さな活動の場の連鎖」で、災害時の迅速対応を可能にするため、議会も含めてさまざまな機能が、現在の敷地内に1棟建てで整備されます。低層階には市民が集えるオープンスペースも設置される予定です。
また、年間を通して多彩なイベントが開催される勾当台公園。「せんだい都心再構築プロジェクト」では、"杜の都仙台"を象徴するこの公園を、これまで以上に利用しやすいものに整備することが検討されており、市庁舎同様、昨年に基本構想が策定されました。具体的な計画構想はこれからとなりますが、計画が実現すれば、都心部全体としての魅力が高まり、エリアの活性化が期待できる再整備となりそうです。
いよいよ開業!JR仙台イーストゲートビル【駅東地区】
駅東地区は、シンボルロードの宮城野通を中心にオフィスビルやビジネスホテルなどの建設が進み、ビジネスエリアとしての基盤整備がおこなわれてきました。また、東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地スタジアムや、「日本の都市公園100選」にも選ばれた榴岡公園、さらには、子どもたちに東日本大震災の被害から立ち直る勇気を与える"仙台アンパンマンこどもミュージアム&モール"や、ホテル・ホール・会議室などからなる複合施設"仙台サンプラザ"などが立地。「働く・暮らす・楽しむ」を実現できる街づくりが成されています。そして現在は、完成した『東西自由通路』の効果もあり、賑わいのエリアとなっています。
このエリアのさらなる活性化の起爆剤になると目されているのが、「JR仙台イーストゲートビル」(2021年2月開業予定)です。高さ約60m、地下1階、地上13階建ての仙台駅と直結したオフィスビルで、1階・2階には商業施設「エスパル仙台東館」が入ります。オフィスフロアの概要は、フロア基準階面積約 1,420㎡、天井高 2.8m の無柱空間を確保しており、多様なレイアウトに対応可能な角グリッド型システム天井を採用しています。加えて、災害に強い性能・制震構造を備えており、非常用発電機による 72 時間の電源供給が可能。 さらには、電源のバックアップ機能により、断水時、停電時においても 3 日間のトイレ利用が可能など、BCP(事業継続計画)を視野に入れた高機能オフィスビルです。
【取材後記】
今回ご紹介した仙台市は、2013年3月、ビジネスエリア特集の第1回において、JR仙台駅東西自由通路の再整備計画にフォーカスして、ビジネスや商圏に与える影響をレポートしています。当時取材をおこなった記者は、新しく生まれ変わる東西自由通路の計画に触れ「この通路が文化創造の場となれば、ビジネスや商圏への好影響など、期待が膨らむ」と、半ば確信に満ちた推測をしています。その見立て通り、2016年の竣工以来、駅東西の融和が図られ東北地方の中核に相応しい駅へ、街へと生まれ変わりました。
駅は街の中心であり、毎日利用するものだからこそ、そこに新たな価値や可能性が見いだされ、ビジネスチャンスが生まれます。仙台はその1つの成功例と言って良いでしょう。これからも駅周辺を中心とした再開発や進化は続いてゆくはず。そんな仙台市に注目したいと思います。
■記事公開日:2021/01/26 ■記事取材日: 2021/01/6・7 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文・撮影=吉村高廣
▼イラスト地図=KAME HOUSE ▼取材協力/イメージ図提供=仙台市