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Vol.29 品川・田町周辺再開発

始動!国内屈指の複合再開発
品川開発プロジェクト

グローバルゲートウェイ品川の実現に向けて、超大型複合再開発が進捗

 まん延防止等重点措置や緊急事態宣言下において、東京都の出勤状況を報じるニュース映像では、JR品川駅東口(港南口)の出勤風景が使われることがお決まりのパターンになっています。品川駅の1日の定期券利用の乗車人数は14万5447人(2020年)と、首都圏では新宿駅、池袋駅、横浜駅、東京駅に次いで第5位。巨大ステーションでありながらも、東口には幅広い自由通路が伸びていて通勤者の邪魔になりにくいことから、ここがニュース素材の撮影場所に選ばれています。
 近年、品川駅周辺最大のトピックといえば、2020年3月、JR山手線の品川駅~田町駅間に「高輪ゲートウェイ駅」が暫定開業したことが挙げられます。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大で盛り上がりに欠けているのが現状です。そうした中、品川駅から高輪ゲートウェイ駅を経て田町駅前まで、南北に延びる約13haもの広大な車両基地跡で、「先進的な企業と人材が集い、多様な交流から新たなビジネス・文化が生まれるグローバルゲートウェイ品川」をコンセプトとした『品川開発プロジェクト』が進んでいます。今回は、その中核事業について、東京都の「品川駅・田町駅まちづくりガイドライン2020」を参考に現地取材を実施。「品川駅・田町駅周辺のこれから」を俯瞰します。

先進的な都市空間の構築へ【品川駅西口地区】

現在の品川駅の賑わいを東西エリアで比較すると、かつては「裏庭の勝手口」などと揶揄されていた東口(港南口)に軍配が挙がります。芝浦や天王洲の再開発や、貨物ヤード廃止に伴う「品川摩天楼街建設計画」などにより、東口エリアは「ハイクラスな職住近接エリア」としてステータスを築いています。
かたや、西口(高輪口)でも、JR東日本が打ち出した『品川開発プロジェクト』に加え、駅周辺の"大地主"でもある京浜急行電鉄が本腰を入れて再開発に着手。西口エリアの巻き返しが期待されています。
東京都の「品川駅・田町駅周辺まちづくりガイドライン」によると、「国道15号・品川駅西口駅前広場整備事業」の公共計画のもと、かねてより西口の課題であった"猫の額ほどの駅前ロータリー"から国道15号の上空に大規模デッキを設けて西口駅前広場を再整備。さらに、JR新宿駅に隣接する「バスタ新宿」をお手本として、高速バス、ツアーバス、さらには次世代モビリティなどの発着ターミナルを建設するなど、先進的な都市空間の構築に向けた青写真が描かれています。
加えて民間事業では、京急が西口正面に所在する「シナガワ グース」の閉館を決定。品川のランドマークであったこの施設の解体工事を2021年11月からスタートさせました。シナガワ グースの解体後は延床面積20万㎡を超える大規模複合施設が建設(2031年竣工予定)されます。京急はニュースリリースにおいて、「品川駅前の好立地な保有資産を活用し、新たな価値を生み出すまちづくり」を開発ビジョンに掲げ、国際交流拠点・品川にふさわしい複合施設に、国内外のグローバル企業や国際水準の会議・ホテル誘致を想定。「ターミナル駅前でありながら豊かな自然に恵まれた環境を活かしたまちづくりを目指す」という意気込みを示しており、今後の動向が注目されています。

都市機能を備えた国際ビジネス交流拠点へ【品川駅北周辺地区】

『品川開発プロジェクト』第Ⅰ期の目玉といえるのが、品川駅北周辺地区と高輪ゲートウェイ駅前一帯で先行しておこなわれている1街区から4街区(約9.5ha・総延床面積約85万㎡)に5棟の大規模複合ビルを建設する再開発です。
このエリアはJR東日本と都市再生機構(UR)の共同開発で、高輪ゲートウェイ駅と各々の街区が一体となって都市基盤を形成。多様な都市機能を備えた国際ビジネス交流拠点の構築を目指しています。
「品川駅・田町駅まちづくりガイドライン」によると、海外都市や、国内地方都市へのアクセス性が高く、職住が近接している品川を、大手町・丸の内・有楽町に並ぶ拠点として格上げして、国内外のグローバルな成長企業による活力と、それを支える魅力的なライフスタイルの創出によって、「これからの日本の成長を牽引する拠点を形成すること」をこれからの品川の新たな役割として位置付けています。
また再開発における土地利用の方針として、品川駅北周辺地区は"鉄道駅周辺の新しい市街地"に位置付けられており、交通結節点としての利便性を活かしながら、業務・商業・住居等の多用な都市機能の導入を図ることが計画されており、以下4つの具体的な土地利用の方針に則り再開発が進められています。
  • ・品川駅と新駅を核とした国際競争力強化に資する業務機能の導入
  • ・国際交通拠点形成に向け国道15号沿道市街地との一体的な土地利用
  • ・都心居住を支える都市型集合住宅、商業・生活関連機能等の誘導
  • ・新駅前の利便性及び集客性を活かした複合的機能の集積
なお、再開発が進む中で、計画地(2街区・3街区・4街区)において、国内初の鉄道築堤となる「高輪築堤(ちくてい)」が出土。これは、日本の近代化土木遺産を象徴する遺跡として極めて重要な位置を占めていることから、JR東日本は2街区と3街区から出土した部分を保存(4街区で出土した部分は移築保存)する方針を固め、街づくりと築堤保存を両立させて、「新しいまちの価値向上」を目指すと発表しました。

東西アクセスの整備で共有のオアシスに【芝浦水再生センター地区】

かつては物流倉庫街で裏寂しい雰囲気が漂っていた品川駅東口エリアですが、2003年の東海道新幹線品川駅の開業が追い風となり、現在は、日本有数の企業が集まるビジネスエリアであり、職住近接のライフスタイルが実現できる生活拠点としても魅力的な街に変貌しています。
都会的な再開発ビルが林立する東口駅前の北側に所在する「品川シーズンテラス」。この複合施設は、老朽化した芝浦水再生センターの再開発に伴い、下水処理施設の屋上をエコパークとするプロジェクトと並行して計画され、2015年に竣工。地上32階建て、国内最高水準の環境配慮型ビルで、オフィスやテナントが多数入居しています。さらに、隣接する下水処理施設の屋上を整備して3.5haもの緑地を設けるなど、芝浦水再生センター地区一帯が最先端エコ機能で連携された港南口エリアのオアシスとなっています。
このように、進化を続ける品川駅周辺ですが、最大の弱点は、駅東西間のアクセスが貧弱であることです。現在の品川はJR線によって東西が完全に分断されており、泉岳寺駅付近で働くビジネスマン(及び住民)が東西間を行き来するには"オバケトンネル"の異名を持つ「高輪橋架道橋」をくぐり、芝浦水再生センターに抜けるルートが最短です。しかしながら、高輪橋架道橋は老朽化に加えて天井高1.5mと大人が利用するには無理があります。結果、泉岳寺や高輪から芝浦方面に抜けるためには、品川駅まで迂回して自由通路を抜けないと東口にアクセスできません。
こうした不便も『品川開発プロジェクト』により改善されます。"オバケトンネル"は第二東西連絡道路として再整備され(2031年完成予定)、高輪ゲートウェイ駅からは歩行者専用道路の東側通路が開通(2024年完成予定)。芝浦水再生センター地区までのアクセスも至近となり、品川のネックだった"東西ネットワーク"が快適に整備されます。

品川再開発に伴い新たなビジネスエリアへ【泉岳寺駅地区】

新幹線の停車駅である品川や、高輪ゲートウェイ駅との接続が計画される泉岳寺駅は、今後最も注目を集めるエリアと思われます。それを裏付けるように、品川駅から泉岳寺駅までを国道に沿って歩くと、あちらこちらでオフィスビル、商業ビルが閉鎖・解体されており、その背後では大規模な新設工事がおこなわれています。
また、泉岳寺駅は羽田空港へのアクセスなど広域的な結節機能を担っていて、羽田需要の増大に伴いその重要性がひときわ高まっています。
さらに、『品川開発プロジェクト』により見込まれる駅や街の利用者増加に伴い、利便性や安全性の向上を確保することも課題となります。
こうしたことから現在、品川駅周辺地域の市街地再開発事業との一体的な整備を目的とした『東京都市計画事業泉岳寺駅地区第二種市街地再開発事業』がおこなわれており、東京都は「2024年度の事業完了を目指す」としています。
その詳細は先に紹介した、泉岳寺駅前から高輪ゲートウェイ駅を経て芝浦方面に抜ける連絡道路を設置して東西ネットワークの利便性を向上しようというもの。さらに、泉岳寺駅に直結した地上30階、地下3階、高さ約145mの複合ビル(オフィス、店舗、住居、子育て支援施設が入居)の建設などが挙げられます。
これに伴い泉岳寺駅の大規模改良が計画されており、ホームやコンコースを拡張し、エレベーターの増設といった駅の改修工事に着手。その一環で、高輪ゲートウェイ駅への歩行者デッキにもダイレクトに接続するエレベーターが設置される予定で、高輪ゲートウェイ駅へのアクセスは格段に良くなります。

洗練された職住近接のニュータウンへ【田町駅周辺地区】

田町駅西口(三田口)は、慶應義塾大学をはじめとした教育施設が多いことから、かつては学生街の印象が強い街でしたが、大規模な再開発によって大手企業の本社ビルやIT企業、外資系企業など、日本を代表する先進企業が集積するオフィスエリアへと変貌しています。
西口において現在進行中の再開発は、三菱自動車本社ビルが所在していた第一田町ビルとその周辺地区を整備して、地上29階、高さ約150m、延床面積約11万2000㎡の超高層複合ビル「田町タワー」の建設です。中層部以上をオフィスエリアとして、低層部には店舗などの商業施設が入居を予定しており、このビルの完成により、泉岳寺方面からの人の流れが大きく変わり、西口周辺の更なる活性化が見込まれています。
一方、駅東口(芝浦口)は倉庫や工場が多い工業エリアでしたが、『芝浦アイランド計画』など大規模な再開発が進み、近代的なビルやマンション、行政施設や商業施設が相次いで開業。すっかり洗練された職住近接のニュータウンへと様変わりしています。
先陣を切ったのが2014年12月にオープンした公共施設「みなとパーク芝浦」。スポーツ施設のほか、区役所総合支所、医療施設などが入居するなど、利便性の高い公共エリアとなっています。また田町駅東口前に広がっていた東京ガス所有の敷地(2万4890㎡)を再開発し、オフィスと店舗の複合施設「田町ステーションタワー」S棟(2018年)・N棟(2020年)、ホテル棟の「ブルマン東京田町」(2018年)など相次いで竣工し、田町駅東口の景観は一変しました。
これから予定されている再開発は、駅前に所在する「東京工業大学田町キャンパスの土地活用事業」で、キャンパス内の一部を移設して、複合施設を建設するというもの。竣工は2030年6月を予定しています。
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■記事公開日:2022/02/24 ■記事取材日: 2022/01/30 02/06・08 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣 ▼撮影=吉村高廣/PIXTA ▼イラスト地図=KAME HOUSE  

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