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エリア特集

浜松町・竹芝

大規模再開発で
新たな街に生まれ変わる

国際ビジネス交流拠点とウォーターフロントを再活性する

 東京の湾岸エリアに位置する浜松町が、大規模な再開発によって先進的なビジネスエリアに変わろうとしています。浜松町は都心経済の中心である東京駅や、国内外の玄関口でもある羽田空港にアクセスしやすい地域性を持っています。その一方、街の都市化が1964年の東京オリンピックに合わせておこなわれたためビルの老朽化が進み、災害に対して不安要素がありました。そうしたことから再開発では、浜松町駅周辺の再編をおこない土地利用の活性化を図ると同時に、災害に強い街づくりも視野に入れています。
 また、浜松町駅の東側に広がる竹芝エリアは、2020年9月に竣工した大型複合施設「東京ポートシティ竹芝」の開業によってビジネス&レジャーエリアとして劇的な変化を遂げ、東京23区の中心にありながら海に面し、景観を生かしたオフィスやレストラン、ホテルなどが整備されています。周辺には「旧芝離宮恩賜庭園」や「浜離宮恩賜庭園」といった歴史的な文化財庭園もあり、緑を身近に感じられるエリアでもあります。今回は魅力的に変化し続ける浜松町・竹芝エリアをご案内します。

駅周辺の再開発で国際競争力に満ちたビジネスエリアに

 世界貿易センタービルの建て替えを中心とした再開発がおこなわれている「浜松町二丁目4地区」は、A街区・B街区の2つに分かれており、A街区には世界貿易センタービルの「本館」「南館」「ターミナル棟」「モノレール棟」などの建設が予定されています。
 1970年に竣工した世界貿易センタービルは、1968年に開業した霞が関ビル(虎ノ門)を抜いて日本一の高さを誇り、超高層ビル時代の幕開けを印象付けたランドマークです。世界貿易センタービルは、その名の通り「貿易振興のビジネス交流拠点に」という期待を背負ったビルでしたが、時代の変化とともに入居企業の顔ぶれも変わり、近年は国際ビジネス交流拠点としての特色が薄まっていました。加えて都内各所で新しい複合ビルが建設され、老朽化した世界貿易センタービルも競争力強化のため建て替えることになったという背景があります。なお、世界貿易センタービルの取り壊しは、国内で最も高いビルの解体工事になるそうです。
 詳細は未定ですが、本館は46階建てで、オフィス、ホテル、医療センター、観光体験施設などが入居予定です。ターミナル棟は7階建てで、バスターミナルの他にカンファレンスセンターやレセプション会場、屋上庭園などが計画されています。モノレール棟には新しい浜松町駅が2027年に完成する予定です。
 街区全体の完成は2029年度を予定していますが、先行して2018年8月にB街区の日本生命浜松町クレアタワーが、2021年3月にはA街区の南館が開業しています。また、隣接したC地区と呼ばれるエリアでは「浜松町二丁目地区第一種市街地再開発」がおこなわれ、オフィス、マンション、商業施設、港区文化芸術ホールなどが入る高層複合ビルが2026年に竣工する予定です。これらの大規模な再開発事業が完了すれば、浜松町は国際競争力に満ちたビジネスエリアへと変貌します。

開業65年目にして複線化が実現する東京モノレール

 高度経済成長期の真っただ中、交通渋滞解消の手立てとして1964年に開業した東京モノレール羽田空港線。その発着駅であるモノレール浜松町駅は、開業以来、たった1本の線路が駅に乗り入れ、乗車側と降車側に分かれた2つのホームだけで利用客をさばいてきました。今でこそ朝7時と8時台には4分間隔で列車が発着していますが、それでも狭いホームには溢れんばかりの空港利用者が列を成し、さながら通勤ラッシュの風情です。運営会社の東京モノレール株式会社によると、「モノレール浜松町駅の複線化は長年の悲願であり、それがようやく今回の再開発で実現することになった」ということです。
 りんかい線と接続する天王洲アイル駅、京急線と接続した天空橋駅などのアクセス利便性を考えると、東京モノレール羽田空港線も通勤輸送へと軸足を移し、前回のビジネスエリア特集で紹介した品川・田町周辺エリアとも連携を深めていくことが考えられます。それに伴って、駅間距離が長い「浜松町―天王洲アイル間」において新駅が設置され、周辺エリアの活性化がおこなわれるかも知れません。また近年は、国際線が成田国際空港から羽田空港へ移る傾向にあるため、空港に直結する浜松町はビジネスエリアとして増々大きなアドバンテージになると思われます。
 JR浜松町駅周辺の利便性の向上といった点においては、交通結節機能を強化するため、駅北口から汐留方面へ延長約75m・幅約20mの「浜松町駅北口東西自由通路」の整備が計画されています。
 この自由通路は、JR線をオーバーパスして、世界貿易センタービルのデッキ、文化放送側デッキ、さらに汐留のペデストリアンデッキまで接続。完成は2028年10月の予定です。完成すれば浜松町駅の東エリア(竹芝側)と西エリア(大門側)の回遊性が高まり、街の利便性が大きく向上することは間違いありません。

インバウンドに期待!地域資源が豊富な浜松町周辺エリア

 浜松町周辺エリアは、羽田空港からのアクセスも良いことから、これまでも外資系企業に人気が高いエリアでした。そうした背景に加えて、今後更なる海外需要が期待されているのがインバウンド経済の活性化です。
 浜松町駅西口再開発の計画案には、①訪日外国人向けに情報発信を行なう施設を整備する。日本各地の魅力を多言語で紹介することで理解や興味を深める「観光プレ体験施設」として機能させる。 ②ビジネスとレジャー両面の訪日ニーズに対応できる宿泊施設を整備し、周辺エリアの観光地・MICE開催地としての魅力向上を図る。地域全体で観光地域づくりを担うDMO活動の拠点も整備する。などが追加・変更案として明記されています。この計画案からは、「浜松町エリア単独で活性化を図るのではなく、浜松町が外国人観光客のハブ拠点となって、日本各地の魅力を発信する」といった主旨が読み取れます。
 大規模再開発が進む浜松町駅周辺は、数年後には利便性と機能性に優れた魅力あるエリアになるでしょう。それとは別に、旧芝離宮恩賜庭園や増上寺、今なお人気の高い東京タワーなど、格式の高いものや、古くからこのエリアの求心力となってきた地域資源は、外国人観光客にとっても大きな魅力になることが見込まれます。コロナ禍の状況次第ではインバウンド需要に大きな期待が持てるエリアです。

JR浜松町駅から竹芝ふ頭までを結ぶ歩行者専用デッキ

 浜松町駅周辺のみならず、東京湾に面する竹芝エリアが大きく生まれ変わっています。港区では、街の将来像や目指すべき方向性を定めた「港区まちづくりマスタープラン」を策定。その中で、快適に楽しく歩ける環境の整備を掲げ、誰もが安全に快適に移動できるよう「バリアフリー空間のネットワーク化」を推し進めるとしています。これに伴い、JR浜松町駅と東側にあるゆりかもめ竹芝駅・竹芝ふ頭までを結ぶ全長約500m(橋長約240m)の歩行者専用デッキが計画されました。これは竹芝地区の再開発プロジェクト「東京ポートシティ竹芝」の一環として計画されたもので、工事は2016年から開始され、2020年9月の東京ポートシティ竹芝のグランドオープンに合わせて部分的に開業しました。
 実際にこの歩行者専用デッキを歩いてみると、ガラス張りで開放感にあふれ、ルート途中で首都高速道路の上空を横断するため、高さが約15mと一般的な歩行者デッキに比べて約2倍の高さが設けられています。歩行者デッキというよりも、ちょっとした橋梁を歩いているような感覚です。
 現在完成しているのは、浜松町駅付近の歩道から東京ポートシティ竹芝オフィスタワーへ至る約120mまでの部分で、オフィスタワー3階へアプローチしています。今後JR浜松町駅の再開発により駅の橋上化が実現すると、同駅北口から東京ポートシティ竹芝まで雨にぬれずダイレクトにアクセス可能になるため、ウォーターフロントのオフィス人気が再興することも十分に考えられます。

竹芝のビジネス拠点・東京ポートシティ竹芝オフィスタワー

 東京ポートシティ竹芝は、総延床面積約20万㎡の大型開発プロジェクトで、40階建てのオフィスタワーと18階建てのレジデンスタワーで構成される湾岸エリアの新たなランドマークとして注目を集めています。東京ポートシティ竹芝の開発コンセプトは「デジタル×コンテンツ」を軸として、人、情報、ビジネスをつなぎ、職住近接による自由なワークスタイルの空間を形成し、同時に世界を代表する国際ビジネス拠点を目指すというもの。それにいち早く反応したソフトバンクが、2020年9月にオフィスタワーへ本社を移転しました。
 大規模複合施設となるオフィスタワーは、高層階のフロアにオフィススペースが設けられ、低層階の商業ゾーンにはブルーボトルコーヒーをはじめとして話題の飲食店が出店しています。そして驚いたのが、2階から6階にかけて開放されているテラスや、いたるところに設けられたコートヤードでPCに向かい仕事をするビジネスパーソンの姿が見受けられたことです。まさしくそれは、施設のコンセプトである「自由なワークスタイル」を象徴しており、施設全体がフリーアドレスといった印象です。
 施設内部も自由に見学できます(写真撮影はNGです)。8階はシェアオフィスや研究開発、交流スペースを設けた「クリエイションフロア」となっており、主に人材育成や起業支援、ビジネスマッチングを柱にした多種多様なプロジェクトが計画されているそうです。東京ポートシティ竹芝オフィスタワーは竹芝エリアにおけるビジネス拠点として、これから更なる存在感を示していくことでしょう。。

ウォーターフロントブーム再び!ウォーターズ竹芝

 竹芝周辺は1990年代の「ウォーターフロントブーム」で脚光を浴びました。ブームが去った後は、儚くもエリア全体の活力が薄れ、「忘れられたアイドル」といった時期が続きます。JR浜松町駅から歩いて約10分。山手線内の駅から最も海に近い好立地にありながら、長らく日の目を浴びて来なかった竹芝の価値を再発見するため、JR東日本が着手したのが「竹芝ウォーターフロント開発計画」です。
 計画の概要は、「文化・芸術の発信拠点の機能を核に、竹芝の水辺と浜離宮恩賜庭園を臨む立地環境を活かしたまちづくりを目指す」というもので、その計画名称を『WATERS takeshiba(ウォーターズ竹芝)』に変更し、2017年6月に開発工事がスタート。2020年6月に開業しました。
 ウォーターズ竹芝は、2万3000㎡という広大な敷地の中に、日本初進出のレストランやカフェ、オフィスフロアなどが入る26階建ての「タワー棟」、劇団四季の国内最大劇場が入る「シアター棟」、その他ラグジュアリーホテルなどから構成された大型複合施設で、大人も子供も楽しめる「都会の水辺のリゾート」といった風情に満ちています。
 タワー棟とシアター棟の間には芝生の広場があり、その先には浜離宮の緑が広がっており、水辺には船着場と干潟が整備されていました。取材当日、干潟の定期調査に来ていたJR東日本の職員に話を聞いたところ、この干潟は、江戸前の海であった東京湾の再生や、環境教育のモデルケースとなるような場づくりを目指して整備されたのだそうです。
 洗練されたスポットでありながらエココンシャスでもあるウォーターズ竹芝は、感度が高い人々が集う最先端のウォーターフロントになっていました。
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■記事公開日:2022/05/24 ■記事取材日: 2022/05/14・18 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣 ▼撮影=吉村高廣/Adobe Stock▼イラスト地図=KAME HOUSE
▼取材資料=都市再生特別地区(浜松町二丁目4地区)(竹芝地区)都市計画案・浜松町駅西口再開発計画案・港区まちづくりマスタープラン・東京モノレールプレスリリース/協力:東京都観光汽船株式会社

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