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川崎市

新しい文化が融合した
エネルギッシュなビジネスタウンへ

時代の流れと共に進化してきた川崎のいま

 神奈川県川崎市は、多摩川をはさんで東京都と隣接したアクセス至便のビジネスエリアです。東部の臨海エリアは京浜工業地帯まで、西部は緑や住宅が多い多摩地区までと、趣が異なる構成となっています。
 かつての「川崎」と言えば「工業都市」というイメージが定着していましたが、1972年に政令指定都市となって以降、ここ近年はJR川崎駅周辺を中心に再開発が進み、現在は新しい文化が融合したビジネスタウンとして生まれ変わっています。また、全国に20ある政令指定都市の中で最も小さな面積でありながら人口は150万人を突破。中でも20代、30代の若い世代の転入が増えており、さまざまな意味で"若返りを図っている街"と言えるでしょう。
 戦前から戦後を通じて、京浜工業地帯の中核エリアとして日本経済の発展を支えてきた工業都市としての歴史を持つと同時に、現在は大企業の主要生産拠点として、また、数多くの情報サービス企業がオフィスを構える全国有数のビジネスエリアとして、変化と進化を続けて来た川崎市。その現在をレポートします。

華やかさのある川崎市随一のビジネス街へ【川崎駅東口エリア】

 川崎駅東口エリアは、戦後の区画整理事業によって道路の整備が進んでいたことや、東京と横浜の中間点という立地条件の良さから、商業施設やオフィスビル、金融機関、官公庁などが集積するビジネス街が早くから形成されました。その一方で、駅前広場は十分な都市機能が整備されておらず、タクシーの運転手によると、「昔はバスに乗るにしても、いったん地下通路に降りてから階段を上がってターミナルに行く必要があり、とても不便だった」そうです。こうした状況を改善すべく、市は2006年に『川崎駅周辺総合整備計画』を策定。2011年に東口駅前広場の再整備(広場のバリアフリー化やロータリーの整備、放置自転車対策)がおこなわれ、現在に至ります。
 川崎市随一のビジネス街といえば、川崎駅東口(駅前北)から川崎球場方面に向けて伸びる市役所通り周辺です。大規模な地下ショッピングモールをはじめ、大型商業施設が集積し、また、昔ながらの地元に密接したさまざまな商店が軒を連ね、新旧が混在して不思議な活気を漲らせているのが印象的です。
 かつては製造業ありきで成長してきた川崎市ですが、今日では、先進的なビジネスを展開する企業が数多く立地するビジネス都市へと大きくその姿を変えました。そして、それを体現しているのが川崎駅東口エリアと言えるでしょう。また2019年には、長らく東口のシンボルでもあった百貨店『旧・さいか屋』跡地に『川崎ZERO GATE(ゼロゲート)』がオープン。古くからのビジネス街として無骨な印象が否めなかった東口が華やぎ、街の風景や人の流れが変わりました。

再開発により劇的な変貌を遂げた街【川崎駅西口エリア】

 区画整理事業によって早くから賑わいを見せてきた東口エリアとは異なり、バブル期の写真を見ても、西口エリアは木造住宅やアパートが軒を並べる下町風情の街並みでした。そんな西口に最初の変化が訪れたのが、1995年に明治製菓の工場跡地に建設された超高層のオフィスビル『ソリッドスクエア』の竣工です。これを機に、西口エリアは大規模再開発が次々とおこなわれ大きな変化を遂げることとなります。
 2004年にはオフィス棟とシンフォニーホールからなる『ミューザ川崎』が、2006年には東芝の工場跡地にJR川崎駅と直結した大規模商業施設『ラゾーナ川崎プラザ』が誕生。ビジネスやショッピングに便利な東西連絡コンコースやバスターミナル、駅前広場も整備され利便性が格段に向上しました。
 こうした中、JR東日本による川崎駅西口再開発計画『KAWASAKI DELTA(カワサキデルタ)』が、昨年5月に本格開業しました。この計画は、JR川崎タワー:川崎エリア最大級のオフィス棟(地上29階、地下2階・ビル内勤務人数約1万人)、商業棟とホテル棟、ペデストリアンデッキ(横断歩道橋)によって構成されています。
 ビジネスの観点から見れば、これまで「川崎市の顔は東口」というのが多くの方の共通認識だったはずです。しかしながらカワサキデルタの誕生は、明らかにその認識を覆したように思います。週末にはファミリーで賑わうラゾーナ周辺ですが、ウイークデーはペデストリアンデッキを行き来するビジネスマンの姿が圧倒的に勝っていました。新しい機能が増えたことにより新しい価値観が生まれ、「川崎でビジネスをしてみようか」と思う方が増えていく。川崎駅西口はそんな期待が持てるエリアでした。

利用しやすい市役所に、働き易い職場に【川崎市役所再整備】

 現在、川崎市でおこなわれている最も大きな再開発は、老朽化した川崎市役所本庁舎の建て替え工事です。旧本庁舎の跡地に、高層棟(地上25階・地下2階)と低層の復元棟(旧本庁舎の一部を創建当時の姿で復元)を配置するもので、新庁舎への移転は2023年4月を目指して工事が進んでいました。
 ところが今年8月、市は新本庁舎の新築工事の工期延長を発表しました。理由は、海外で製造されている外壁材が、新型コロナによるロックダウンの影響で遅れが生じたこと。新庁舎への移転時期は来年の秋以降になる見通しです。
 市の説明によると、現在の本庁機能は、4棟の既存庁舎と8棟もの民間賃借ビル(計12棟)に約3400人の職員が分散して業務をおこなっているそうです。民間ビルの賃料は年間およそ10億円。職員を可能な限り新庁舎に集約させて、莫大な財政負担を削減することが今計画の基本ベースにあって、市では「賃料を約1億円にまで圧縮できる」と試算しているそうです。なぜこんなに豪華な建物が必要なのか?と、首をひねりたくなるような役所の建設が続く中、川崎市役所本庁舎の建て替えは、老朽化に伴う耐震性強化や利便性(市民や企業にとっての)の向上という側面が強いように思います。

エリアのポテンシャルを活かし賑わいを【京急川崎駅周辺再開発】

 さらに京急川崎駅周辺でも再開発が計画されています。これは、雑居ビルが集中している京急川崎駅西口前を整備して高層ビル建設を行い、防災に優れた新しい京急川崎駅前の街づくりをおこなおうというもの。京急川崎駅はJR川崎駅東口にも近く、川崎大師にアクセスする京急大師線が乗り入れているため、本来ならば活況を呈するポテンシャルの高いエリアです。また、羽田空港や横浜駅に向かうにも利便性や速達性に優れた立地でもあり、ビジネスパーソンで賑わっても不思議有りません。
 それであるにも関わらず、現在の京急川崎駅周辺にはエリアのシンボルとなる大型商業施設がなく、人の流れはJR側に向かってしまうというのが現状。こうしたことから、駅前でありながら駐車場や駐輪場、老朽化ビルといった低・未利用な土地が残る西口路線沿いを中心として、「京急川崎駅周辺地区まちづくり整備方針」が策定されました。事業の目玉は、高さ約120m、延床面積約80,000㎡の大規模高層複合ビル。ほとんどはハイグレードオフィスで、低層階には一部商業施設の入居が計画されています。計画が順調に進めば2026年度中の着工、2028年度中の完成を目指しています。この再開発によって、川崎市の都市化が加速するとともに、『川崎市の新しいビジネスエリアの誕生』が期待されます。

京浜工業地帯の中核エリアから夜景のメッカに【川崎市臨海エリア】

 川崎市は京浜工業地帯の中核として、日本の高度経済成長を支えてきた工業都市です。工業統計調査が示した製造業従業者数の推移を見ると、高度経済成長期にはなんと約22万人もの製造業従業者たちが川崎の街を闊歩していたそうです。ところが、オイルショックやバブル経済の崩壊などを経て、現在は約4万7000人まで減少。とはいえ今でも優れた技術を持つ多くの企業が集積しており、臨海エリアには石油・鉄鋼・電機・化学など大企業の主要生産拠点が数多く立地しています。
 そうした一方で川崎市には、公害と闘ってきた歴史があります。1960年代から1970年代にかけて、急速な経済成長の負の側面として環境悪化を招き、大気汚染や水質汚濁などの甚大な公害が起こりました。このような公害問題に対して、事業者や市民、そして行政が国に先駆けて工場と大気汚染防止協定を結ぶなど発生源への対策を強化。近年は、「政令指定都市で最もクリーンな街」と誇れるように生まれ変わっています。
 また、川崎市浮島町付近にある工場エリアは2008年頃からブームとなった『工場夜景』の火付け役でもあり、市民の憩いの施設である川崎マリエから展望する夜景は『日本夜景遺産』にも登録されたほど。工場夜景クルーズやバスツアーなどが定期的におこなわれ、今ではすっかり観光名所ともなっています。

川崎大師の仲見世に並ぶ『せき止飴』の秘密【川崎大師】

 全国でも、明治神宮、成田山に次いで3番目(約300万人)に多くの初詣客を集める川崎大師(金剛山金乗院平間寺)は、仲見世を通って川崎大師の正門"大山門"へと向かいます。
 仲見世には数多くの老舗が軒を並べ賑わっていますが、中でもダルマを売る商店が多いことで有名。大師商店会によると、川崎大師とダルマの関係は江戸時代に疫病がはやった時に、ダルマを置いていた家が疫病から守られたことから川崎大師でダルマが売られるようになったということです。最近はカラーだるまも人気で、風水カラーで黄色は金運。青は健康。ピンクは愛情、恋愛運などの意味があるそうです。(ちなみに私は『商売繁盛。金運上昇』の黒ダルマを購入しました)
 そして、参道を歩いて気づくのは『せき止飴』の暖簾が多い事。一般的には『さらし飴』という名称で知られるこの飴は時代によっていろいろな呼び方があって、『痰きり飴』というのもそのうちの1つ。立ち寄った店の店主によると、高度経済成長期には大気汚染で喉を痛めた市民に愛用されたことから『痰きり飴』として広く知れ渡ったということです。ところが、保健所から「痰をきる効果を謳うことは薬事法に抵触する恐れがある」と指摘されたことから、現在は「痰きり飴」という名前を使わず、『せき止飴』、『さらし飴』『とんとこ飴』といった名前で売られているのだそうです。
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■記事公開日:2022/11/28 ■記事取材日: 2022/09/13・10/02 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣 ▼撮影=吉村高廣/Adobe Stock ▼イラスト地図=KAME HOUSE ▼取材協力:大師商店会
▼取材資料:川崎駅周辺まちづくり、東口駅前広場再編整備の概要について、川崎駅周辺総合整備計画、川崎市の公害を学ぶ、川崎市工業統計調査、
JR東日本ニュース、京急川崎駅周辺地区まちづくり整備方針、川崎臨海部の変遷

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