現在福岡市では、市長が「100年に1度の再開発」と胸を張る大規模プロジェクト『天神ビッグバン』と『博多コネクティッド』が同時並行でおこなわれています。これらは、双方の対象エリアにオフィスビルや商業施設、ホテルなどを建設して経済の活性化を図ろうという行政主導の再開発プロジェクトで、その進捗は国内外から注目されています。
キープレスで前回福岡に訪れたのはコロナ禍直前の2020年2月。当時はすでに所々で着工されていたものの、"爆発的な変革"の兆しはまだ見られませんでした。ところが今回の訪問では、空を仰ぐ超高層ビルが完成し、至るところにビル建設の仮囲いが設けられ、新しい福岡の未来を思い描くことが出来ました。
そこで今回は、日本の地方中枢都市としては、すでに?横綱級?である福岡市が、『天神ビッグバン』と『博多コネクティッド』によって、どれほど魅力的なビジネスエリアへと生まれ変わるのかをレポートします。
天神地区は、商業施設やオフィスビル、飲食店などが集まる福岡を代表する繁華街です。大丸、三越といった百貨店をはじめ、若者文化の発信地となるパルコなどが集積する九州最大のショッピングエリアでもあり、東京で例えるなら新宿や渋谷あたりに該当すると言えるでしょう。しかしながらこれまでの天神は、今一つスケール感に欠ける印象が否めませんでした。
地方中枢都市の場合、繁華街やビジネスエリアはビルが高層化する傾向にあります。ところが福岡市は空港が近いことから、航空法により都心部のビル建設に高さ規制(最大67m)があり、超高層ビルが建設出来ず、まちづくりをするうえで足枷になっていました。
ところが、2014年に福岡市が国家戦略特区に認定されたことによって、天神ビッグバンの対象エリア(天神交差点を中心に半径約500m)に限り、ビルの高さを100m~115mにする規制緩和がおこなわれます。これにより再開発に弾みがつき、エリアの中で最初の超高層オフィスビル『天神ビジネスセンター』(地上19階・地下2階、高さ約90m)が2021年9月に竣工。2022年5月までに建築確認申請59棟、そのうち竣工数が50棟と、まさに爆発的な勢いで変貌を遂げています。
博多駅には博多口と筑紫口と2つの出口があります。2020年に訪れた時の印象は、博多口は中州や天神などに向かう賑わいのエリア、かたやオフィス街であり官庁街でもある筑紫口は、前者と比べるとかなり落ち着いたものでした。ところが博多コネクティッドにより、そうした光景が変わりつつあります。
天神エリアに比べて福岡空港により近い博多駅周辺エリアは、航空法の高さ制限は60mまで。100m前後の超高層ビルの誕生はありませんが、更新期を迎えたビルの建替えや、駅前広場・周辺施設が整備されて"国際都市福岡"の陸の玄関口に相応しい佇まいとなっていくことでしょう。
"超成長"を続ける福岡市ですが、経済成長がもたらす副作用として人口の増加に伴う交通渋滞の悪化が挙げられます。これについては、市が発表した『2024天神未来創造・天神ビッグバン』の中でも、公共交通機関の利用促進が盛り込まれていますが、都市機能の整備に準じた効果的な渋滞対策は今後大きな課題となりそうです。
その課題に対して1つの策を提示したのが、福岡市の西南部(薬院・橋本)方面と中心市街地を結ぶ地下鉄七隈線の延伸です。今年3月27日、これまでの終点だった天神南駅から1.4km延伸開業(途中、櫛田神社前駅を新設)し、JR博多駅に直結しました。わずか1.4kmではありますが、延伸区間の有無で市内移動のタイムパフォーマンスは雲泥の差です。
福岡市地下鉄によると、「これまでは、七隈線から博多駅へ行くためには、天神南駅から改札を出て、地下街を10分近く歩いて空港線天神駅で乗り換える必要がありました。延伸後は直通となったため、七隈線の各駅から博多駅までの所要時間は大幅に短縮されました。さらに博多駅では、改札を通らずに空港線に乗り換えられるようになり、福岡空港へのアクセスも抜群に良くなりました」とのこと。この新動脈が、ビジネスや暮らしの回遊性を大幅に向上させることは間違いありません。
さらに、天神南駅とJR博多駅の間に新駅(櫛田神社前駅)が開業したことで、大型商業施設『キャナルシティ博多』へシームレスなアクセスが可能となりました。長らく"博多のランドマーク"と言われ、開業初日には20万人が訪れたという博多の名所も、博多駅から徒歩約8分というアクセスの悪さが災いして、ここ数年の集客は右肩下がり。櫛田神社前駅の新設は巻き返しの起爆剤になると見られています。