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Vol.35 大阪市

大阪の都市機能が頂点に!主要ビジネスエリアの再開発

 東京に次ぐ大都市圏・大阪市はいま、世界中から優れた人材や技術が集まる「イノベーション都市」の構築を目指して、市と民間事業者が一体となってさまざまな取り組みをおこなっています。中でも注目は「大阪最後の一等地」と言われる大阪駅北側エリアで進む大規模再開発「うめきたプロジェクト(第2期)」。先進技術を投入してスマートシティを具現化し、ビジネスや生活をより快適なものへと進化させます。さらに、2031年には関西国際空港まで直通する「なにわ筋線」が開業予定。このほか各ビジネスエリアで、未来につながるビジネスを創出して成長をピークに導く再開発事業が進む、大阪の今を紹介します。

1
西のゲートウェイとして誇れる街区へ(新大阪駅周辺)

 新大阪駅は府内で唯一新幹線が乗り入れる『大阪の玄関口』であるにもかかわらず、府外から訪れる多くのビジネスマンにとっては、市内各所にアクセスする"乗り継ぎ駅"と見られてきました。これには、伊丹空港へ向かう飛行ルートと重なるため高層ビルが建設出来ない(航空法による高さ制限の130mより低い100m前後)ため、駅周辺の再開発が遅れていたという事情があるようです。
 そんな新大阪駅周辺がいま、活気あるエリアへ変わろうとしています。2022年には、JR西日本が立て続けにオフィスビル2棟(新大阪NKビル・新大阪NK第2ビル)を建設し、直近では今年1月に、地上13階建てのオフィスビル「プライムプレイス新大阪」が竣工するなど、閑散としていた駅周辺のビジネスエリア化が着々と進んでいます。
 大阪市によれば、「新大阪駅は"西のゲートウェイ"であり、オフィスビルの開発だけではなく、新幹線新駅関連プロジェクトの1つである大規模交流施設の立地も新大阪周辺エリアを活性化させる大きな要因になる」と考えているそうです。今後は新大阪駅周辺にもエリアのシンボルとなるような大規模の交流施設が建設され、街の活性化とビジネスエリアとしての充実度をより一層加速させることが考えられます。
注目のオフィスビル

2
再開発ラッシュで進化し続ける梅田エリア(大阪駅周辺)

 梅田エリア(大阪駅周辺)は、近年の再開発によってハイスペックな複合オフィスビルが数多く供給され、ビジネスエリアとしてのポテンシャルが劇的に向上しました。2024年以降もオフィスビルの竣工が予定されておりオフィスの供給量は増加の見込みです。
 さらに、新線・なにわ筋線の開業(2031年予定)によって利便性の向上が期待されています。ここでは注目の2つの大規模再開発事業をご紹介します。
歩行者デッキがつなぐJPとJR【JPタワー大阪】

 旧大阪中央郵便局跡地を含む大阪駅西地区に建設された「JPタワー大阪」は、商業施設・オフィス・ホテル・劇場などからなる地上39階・地下3階の大型複合オフィスビル。商業施設「KITTE大阪」は、2024年7月の全面開業が予定されています。
 オフィスフロアは先行して2023年11月1日から利用が開始されており、それに合わせて開通した歩行者デッキは、駅ビルの「大阪ステーションシティ・サウスゲートビルディング」の2階を経由してJR大阪駅と直結。屋根付きの歩行者デッキが設置されたことよって雨天でも濡れることなくアクセスすることが可能になりました。

 事業主である日本郵便の『計画ビジョン』によれば、オフィスは11階から27階に位置しており、基準階のフロアは面積が約4,000㎡にも及ぶ「西日本の賃貸オフィスビルでは屈指の規模を誇るオフィス空間」であるとのこと。
 また、オフィスワーカーが仕事の合間に寛げる屋上庭園や、リフレッシュのためのフィットネスルームやサウナなど、ウェルビーイングな働き方を後押しするヒューマンサポートが提供されるそうです。

国際競争力の高い知的創造都市へ【グラングリーン大阪】

 うめきた(大阪駅北地区)プロジェクトは、JR大阪駅北側に放置されていた旧・梅田貨物駅跡地(約24ha)を、国際競争力の高い知的創造都市に生まれ変わらせることを目的とした大規模プロジェクトです。ここで現在、商業施設、オフィス、ホテル、都市公園などを有する「グラングリーン大阪」の整備工事が、今年秋の「まち開き」を目指して進められています。

 グラングリーン大阪のエリア内には、JR大阪駅に直結した大規模複合オフィスビル「パークタワー」と「ゲートタワー」が建設されます(共に2024年11月竣工予定)。
 パークタワーは1フロア約4,130㎡とJPタワーと並ぶ関西圏屈指の広大なオフィス空間により、多様な働き方に合わせたワークスペースを実現できるオフィスタワーとなります(高層部にはキャノピーbyヒルトン大阪梅田が入居)。
 ゲートタワーは1フロア約1,580㎡の来店型ビジネスにも対応したオフィスタワー。カーボンニュートラルやSDGsへの取り組みも積極的で、サステナビリティに優れた次世代のワークスペースとして注目されています。

注目のオフィスビル

3
御堂筋の玄関口で進む超高層ツインタワー建設(淀屋橋)

 府内屈指のオフィス街である淀屋橋エリア。関西圏有数の金融街でもあり、大阪のビジネスをけん引するエリアといっても過言ではありません。
 エリアの中心には、市内を南北に貫くメインストリートの御堂筋が縦断。最先端とレトロなオフィスビルが肩を並べる独特な魅力を持ったエリアです。そんな淀屋橋の玄関口(御堂筋線淀屋橋駅付近の東西の角地)に、デザインに統一性を持たせたツインタワー(オフィスビル)が建設されます。

 駅東側の角地には、エリアで最高層となる高さ約150m・地上30階建ての「淀屋橋東プロジェクト(仮称)」が2025年5月に竣工予定のほか、淀屋橋駅コンコースの歩行者通路の拡幅工事なども同時稼働の予定です。
 御堂筋を挟んだ駅西側には、高さ約135m・地上28階建ての高層オフィスビルが建設されます。東側のビル同様、2025年竣工予定です。
 東西のツインタワーが完成すれば、淀屋橋周辺エリアのオフィスワーカーはもちろん、観光客の回遊性も高まりそうな気配。ビジネスに、観光に、ショッピングに、淀屋橋のさらなる活性化が期待できそうです。

4
街並みの佇まいを刷新して若々しいオフィス街に(本町)

 梅田と難波の中間に位置する本町エリアは、豊臣秀吉の大坂城築城を起源として栄えた商いの街。かつては関西圏で力を振るった老舗の商社や繊維関係の有力企業が軒を並べていたそうですが、現在は御堂筋沿いに多様な企業が集うオフィス街に生まれ変わっています。
 本町は大阪市を代表するビジネスエリアの1つですが、築年数が経過したビルも多く、街並みは昭和な佇まい(良く言えばレトロな印象)が否めませんでした。ところが近年は大規模な再開発事業(オフィスビルの建設)が続き、街の雰囲気も徐々に変わりつつあります。
 このほかに本町では、第二有楽ビルと学校法人旧相愛学園8号館などを一体的に建て替える「(仮称)本町4丁目プロジェクト(オフィス・ホテル・学校・店舗で構成される大型複合ビル)」などの建設が控えており、今後本町エリアはさらに若々しく活気づくことが期待されています。
注目のオフィスビル

5
新たなランドマークとなる大型複合オフィスビルを(心斎橋)

 心斎橋エリアの象徴ともいえる「大丸心斎橋本店本館」が建て替えを終えて2019年9月にリニューアルオープンしました。御堂筋側の外壁は長年市民に親しまれてきたシンボリックな外壁が保存されており、レトロな印象の街並みが残されています。
 このエリアの再開発の目玉は、御堂筋と長堀通に面した心斎橋新橋交差点北東側でおこなわれている「心斎橋プロジェクト(仮称)」。この計画は、老朽化した心斎橋プラザビルと心斎橋フジビルを一体的に整備して、新たなランドマークとして大型複合オフィスビルを新設しようというもの(2026年2月竣工予定)。

 事業主のJR西日本によれば、髙さ約132m・地上28階、地下2階。低層階にはハイブランドの店舗を誘致し、中層階にオフィス、高層階にはホテルが入居する大型複合オフィスビルとなり、8階のオフィスロビーは御堂筋を望む屋外テラスと接続し、オフィスワーカーに寛ぎを与える空間の構築を目指しているとのこと。また、地上約120mの最上階には、大阪の景色を一望できる ルーフトップバーの設置が計画されています。

注目のオフィスビル

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御堂筋からクルマが消える!(御堂筋将来ビジョン)

 大阪市の中心部を南北に貫く御堂筋は誕生から約85年が経ちます。建設当時とは人々の行動形態が変わってきているため、大阪市は「車中心から人中心の道へと再構築」をスローガンに、100周年にあたる2038年に御堂筋を全面フルモール化(完全歩道化)する「御堂筋ビジョン」を策定し、既に側道の閉鎖が段階的に始まっています。
 御堂筋を完全に歩道化することで都市資源(人・サービス・企業・情報等)の交流を活性化させて新たな魅力や価値を創出。それらを世界に発信することを視野に入れています。これらは、大阪市の都市計画における一環であり「大阪市の魅力を最大化させること」が目的だそうです。
 もちろんこの計画には賛否両論があって懸念を抱く人も少なくありません。完全歩道化により自動車の通行が制限されれば、当然ながら交通網に影響が及び、そのことがマイナス要因になる事業者が出てくる可能性があります。それを回避するためにはインフラの再整備が必須になります。御堂筋の魅力を高めつつも交通の利便性を維持することは事業者にとっては絶対条件になるはずです。
 将来の社会ニーズといった点では、若年層の自動車離れなどを考慮すれば「ひと中心の御堂筋」を目指すことはとても前向きな取り組みだと思います。ただそれは周辺事業者の理解があってのこと。大阪市の発展と市民の利便性を両立させるために公民が議論を尽くし、最適化を図ることが必要だと思います。
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■記事公開日:2024/03/25 ■記事取材日: 2024/02/13・14 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣 ▼撮影=吉村高廣
▼取材資料=新大阪駅周辺のまちづくり(大阪市)・新しい開発インパクト(大阪市)・梅田3丁目計画(仮称)の建物名称および同建物内商業施設名称を「JPタワー大阪」および「KITTE大阪」に決定(日本郵便)・大阪駅西地区の開発計画について(JR西日本)」・うめきた2期開発プロジェクト(三菱地所)・淀屋橋駅東地区都市再生事業(中央日本土地建物)・心斎橋プロジェクトについて(JR西日本)・御堂筋将来ビジョン概要版(大阪市)・大阪の開発計画まとめ(大阪日日新聞)

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