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Vol.36 名古屋市

リニア時代に備え、強い経済力と持続可能な街づくりが進む

 中部地方の中核都市として発展を続ける名古屋市。代表的なビジネス街はJR名古屋駅東側周辺の「名駅(めいえき)」を起点として「丸の内」、「伏見」、「栄」の4エリア。これらは半径約3km内に位置していますが、各々の特長に見合った再開発がおこなわれています。またこの先、リニア中央新幹線が整備されれば(名古屋~品川間約40分)、ビジネスの進め方は大きく変わるでしょうし、経済への波及効果も絶大。これを睨み名古屋市は、駅前広場やロータリー、新たな交通インフラなどを整備して「交通渋滞を減らすとともに名古屋駅前のイメージアップを狙う」としています。
 ここ数年、「再開発の勢いが止まらない」と言われてきた名古屋ですが、実際に歩いてみると「街の発展はまだまだ続く」と強く実感。2017年の取材時よりもさらに大きく進化した名古屋をレポートします。

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再開発やリニア計画で人気も地価も爆上がり【名駅エリア】

 名駅エリアは"世界最大の駅ビル"と称されるJRセントラルタワーズの開業(1999年竣工)を皮切りに、大規模複合ビル(ミッドランドスクエア、スパイラルタワーズ、JPタワー名古屋、大名古屋ビルヂング)の建設ラッシュに沸き、超高層ビルが集積したビジネスエリアを形成しています。
 また同エリア内には、利用者の健康や快適性などを支えるビルの仕様や性能、取組みを評価する『CASBEE-スマートウェルネスオフィス認証』で、東海圏のオフィスビルとしては初めてSランク(最上位)を取得した「第2名古屋三交ビル」が竣工するなど、ビルのスケールのみならずSDGsやBCPを強く意識したハイスペックオフィスの供給もおこなわれています。
 名古屋駅は、JR、地下鉄、近鉄、名鉄、市営バスなどが乗り入れており、市内外の移動はもちろん国内外へもアクセスしやすいターミナルステーションです。名古屋駅から中部国際空港までは「空港線ミュースカイ」を利用すればわずか28分でアクセス可能。海外と取引がある企業はもちろん、日本中を飛び回る企業のビジネスパーソンも快適にサポートします。
 ちなみに、2023年に公表された愛知県内の地価の平均変動率で最も上昇率が高かったのはミッドランドスクエア前で、1㎡あたりの土地価格は1,900万円(東京の日本橋兜町が18,000万円)。リニア中央新幹線に伴う名古屋駅周辺の再開発の影響で、その価値は今後ますます高騰していくものと思われます。
●名古屋駅周辺ビル6棟を一体開発「名鉄 名古屋駅地区再開発」

 既に日本屈指の高層ビル群が形成されている名駅エリアですが、さらに、名鉄百貨店などの既存ビル6棟を建て替えて一体的に再開発をおこなう計画が進んでいます。計画範囲はJRの線路に沿い南北約400mにも及び、名古屋でおこなわれる再開発としては最大規模です。
 当初は2027年の完成を目指していましたが、新型コロナウイルスの流行やリニア中央新幹線の工事が足踏みしていたため、時期についての見直しがおこなわれ、新たな再開発計画の原案が公開されました。

 公開された最新のイメージ図では、高さ約180mの超高層ビル3棟が建設され、オフィス、ホテル、商業施設で構成されています。各ビルは中層階の「空中回廊」で接続されており、バスターミナルも太閤通の上空をまたぐような構造になるようです。3棟の延べ床面積は40万㎡。これは駅前にそびえ立つJRセントラルタワーズと同じ規模になります。この大規模再開発により名駅エリアは、ビジネス街としてさらなる活気が生まれることは間違いないでしょう。現時点の計画では、2030年頃の完成を目指しています。

注目のオフィスビル

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歴史ある街並みに最先端オフィスが屹立する【丸の内エリア】

 名古屋城の南側に位置する丸の内エリアは、名古屋市の中でも"トラディショナルなビジネス街"といった風情を感じられる落ち着いた一角です。城の近くから"行政と商い"が中心地となって発展するのが都市化の定石ですが、当エリアも例にもれず、愛知県庁、名古屋市役所などの官公庁が名古屋城下を固め、周辺には弁護士や税理士などの士業事務所が散見します。主なオフィス街は桜通、伏見通、大津通の主要道路に面しており、中高層のオフィスビルが建ち並ぶビジネスエリアとして日中は賑わいを見せています。

 また丸の内は、他のエリアに比べて高層マンションの建設(建設予定地も含め)が非常に多く目立ちます。名古屋市内でも緑が多く落ち着きのある一帯ということもあり、今後は職住近接により「働く人のワークライフバランス実現を目指す企業に選ばれるビジネスエリア」として進化していくことも考えられます。
 大規模なオフィスビルが少ない丸の内エリアに、今年の3月、高さ約85m・地上16階の高層オフィスビル「名古屋シミズ富国生命ビル」が竣工しました。ひときわ強い存在感を示す外観は城下町の碁盤割の街並みを表現しており、丸の内エリアの新たなランドマークになっています。
 丸の内エリアは「栄」と「名駅」を結ぶ中間地点です。名古屋シミズ富国生命ビルの誕生で、名駅と栄を繋ぐ壮大な都市スカイラインが形成されました。
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新旧が再開発で調和する新しい街並み【伏見エリア】

 伏見エリアは、中高層のオフィスビルが林立し、銀行をはじめとする金融・証券会社が多く「オフィス中心の街」と紹介されがちですが、御園座、劇団四季、名古屋市科学館やプラネタリウム、美術館などの文化的な施設が集約するエリアでもあります。街の活気をつくりだしている来街者も"ビジネスパーソン"だけではなく、多様性に富んだ"大人の街"という印象を受けました。

 伏見駅は地下鉄2路線(東山線と鶴舞線)の利用が可能で、名古屋駅と栄駅の中間駅のため各方面へアクセスするにも便利です。
 さらに、仕事帰りに「ちょっと一杯」と気軽に立ち寄れる飲み屋街「伏見地下街(長者町横丁)」に直結。この横丁は昭和32年の開業で、日本酒を専門的に扱う店や"せんべろセット"などを提供している店が多く見受けられました。
●伏見駅至近のハイグレードオフィスビル「(仮称)錦通桑名町ビル計画」着工
 伏見駅から徒歩1分という好立地で注目の再開発事業「(仮称)錦通桑名町ビル計画」が進んでいます。これは、高さ約60m、地上13階、延床面積約26,000㎡のハイグレードオフィスビルを建設するもので、竣工は2025年10月を予定しています。
 この再開発計画が注目される理由は、名古屋都市計画における「名古屋駅・伏見・栄地区都市機能誘導制度」を活用している点です。定められた「高品質オフィス」の整備に加え、帰宅困難者用退避施設の整備、建物周辺および屋上テラスの緑化、歩行者空間の拡張および伏見地下街との接続等、さまざまな公共貢献を実施することで100%を超える容積率緩和を実現しました。
 事業主である鹿島建設のプレスリリースによれば、外観デザインは、高層部は繊維問屋街にちなみ織物から連想される縞模様と竹林をイメージした縦連窓を採用。低層部は街並みとの調和を考慮して、水平を強調したファサードや天然木を使った温もりのあるデザインとして、街に憩いの場を提供するとのことです。
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大規模再開発で栄にもっとビジネスを!【栄エリア】

 東西に走る広小路通と南北に走る大津通が交わる栄交差点を中心に百貨店や大型商業施設が林立し、一大繁華街を形成している商業エリアですが、前回(2017年)名古屋を取材した時の栄は、商業施設の集客力で名駅エリアにナンバーワンの座を奪われ、エリアの成長ポテンシャルがやや不安視されていました。ところが、再開発が進む今は繁華街としての賑わいの復興はもとより、ビジネスを呼び込む起爆剤になっています。

 再開発に関しては、超高層ビルが建ち並ぶ名駅エリアが先行しているものの、栄でも近年は高層ビルの建設計画が進んでいます。
 1つは今年4月、高さ約158m・地上33階の大型複合ビルに生まれ変わった中日ビル。9階から22階はオフィスフロア、24階から32階にはホテルが入り、さらに地下から7階まではレストランやショッピングフロアとなっています。89店舗もの飲食店がオープンした中、名古屋初進出の店が28店舗。栄が誇るランドマークとなっています。

 もう1つは、栄広場跡地で進められている超大規模複合施設「(仮称)錦三丁目25番街区計画」です。高さ約211m・地上41階建ての内部に、ホテル、オフィス、シネコン、商業施設の4用途を集積させるというもので、公益財団法人名古屋都市センターのニュースレターによると、国はこの再開発事業を「優良な民間都市再生事業計画」として認定したそうです。2026年夏の開業を目指し工事が進んでいます。
 栄交差点を中心とした広小路通沿いで進む再開発は、「名駅」VS「栄」の2大商圏勢力図で一歩遅れを取っていた栄エリアが対抗軸を示したことになりす。2つのエリアの相乗効果で名古屋のさらなる進化が期待されます。

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名古屋市企業進出促進補助金

名古屋市内に初めてオフィスを開設する企業さまをサポートします
 製造業のイメージが強い愛知県。事実、歴史ある製造業が数多く活躍していています。
 そして、名古屋は交通アクセスが抜群で、リニア中央新幹線が開業すれば東京・名古屋間の移動時間は約40分、将来、大阪まで全線開業した場合は三大都市圏が約1時間で結ばれることになり、また、世界につながる中部国際空港に約30分でアクセスでき、総取扱貨物量が日本一の名古屋港も擁しています。
 加えて、名古屋市内の大学数・学生数は20政令指定都市の中でトップクラス、その学生の多くは県内の就職を希望しており、6人のノーベル賞受賞者を輩出した名古屋大学は現在も日本や世界の先端をいく研究者も多く、名古屋は人材が豊富な街です。
 今後も経済成長し続けるポテンシャルを持つ名古屋、そんな名古屋市では、企業の進出を促進するため、名古屋市内に初めて事業所(オフィス)を開設する企業に対して、開設に要する経費の一部を助成しています。

 詳細につきましては、こちらで確認してください。
https://www.city.nagoya.jp/keizai/page/0000173534.html
名古屋市経済局 イノベーション推進部 産業立地交流課
名古屋市 支店、支社、出張所、営業所、分室など、事務所開設・オフィス探しは・・・インターネットで簡単検索
■記事公開日:2024/05/28 ■記事取材日: 2024/05/09・10 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣 ▼撮影=吉村高廣 ▼作図=桑原今日子 ▼取材協力・資料提供=名古屋市
▼参考資料=名古屋駅周辺まちづくり構想、名古屋都市センターニュースレター、名鉄名古屋駅地区再開発全体計画

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