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Vol.37 仙台市

高機能オフィスビルへの建て替えを促して「選ばれる街」に

 東北の経済を牽引する100万人都市仙台市では、現在、再開発が佳境に入ろうとしています。仙台で再開発が相次ぐ背景には、市が2019年に打ち出した大改革「せんだい都心再構築プロジェクト」の後押しがあります。その概要は、容積率の緩和や企業立地促進助成制度の強化などをおこなうもので、期間は2030年まで。目的は、仙台市が抱える構造的な課題の解決です。市によると、「中心部には旧耐震基準のオフィスビルが少なからずあることや、東北大学(仙台市青葉区)には優秀な学生が集まるものの就職を機に首都圏に流出してしまう」などの課題に対して、高機能オフィスビルへの建て替えを促して企業を呼び込み、雇用の受け皿をつくり「選ばれる街」にする。これが現在おこなわれている「仙台大改革」の目論みです。

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せんだい都心再構築プロジェクトの恩恵を受け続々と【駅前地区】

 JR仙台駅西口周辺は、東北経済の中心地として多くの企業が支店を構えるビジネス街です。特に、広瀬通や青葉通の周辺がオフィス・商業の両側面における中心ゾーンでもあり、SNSのアンケートによると仙台市民の約62%が駅西口周辺を「仙台の真の中心街」と答えています。

 駅前地区は東二番町通までの「駅チカ」街区で、再開発は、南北線広瀬通駅周辺、仙石線仙台駅周辺で集中的におこなわれています。中でも「せんだい都心再構築プロジェクト」の第1号ビルとして2023年11月に竣工した「アーバンネット仙台中央」(青葉区中央4丁目)や、高水準の安全性能と環境性能を実現させたハイグレードオフィスビル「T-PLUS仙台」(青葉区中央3丁目)などは、駅前地区の新たなシンボルになるオフィスビルとして注目されています。

 再開発がおこなわれた青葉区中央はオフィス街ですが、その一角に、1948年に興った「仙台朝市」が共存しています。市場は今なお「仙台の台所」と呼ばれるほど活気があり、外国人観光客が押し寄せる人気のスポットにもなっています。
 駅前地区では2026年までの間にも新たなオフィスビルの建替えや再開発計画が進められます。2025年5月竣工予定の「NANT仙台南町」(青葉区中央3丁目)は、JR仙台駅西口から徒歩約7分のオフィスビルで、ショールーム等の幅広いニーズに応えられる設計に。建築物の環境総合性能評価システム「CASBEE」でAランクの取得を目指しており、環境性と快適性に富んだオフィスビルが誕生します。
注目のオフィスビル

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仙台屈指の金融街のランドスケープを変えるビルが竣工【一番町周辺地区】

 東二番丁通の西側から定禅寺通までの一帯が一番町周辺地区と呼ばれるエリアで、老舗百貨店の藤崎や日本銀行仙台支店があり、古くから仙台市を代表する商業地として賑わってきました。
 このエリアの特長は「アーケード文化」です。「サンモール一番町」を筆頭に4つのアーケード街が結びつき、週末は買い物客で大賑わい。また、東北三大祭りの1つ「仙台七夕まつり」の会場でもあり、仙台発展の一翼を担う経済インフラになっています。
 片や、ビジネスエリアとして見た一番町周辺地区は、"仙台屈指の金融街"とも言える地区で、仙台高等裁判所や地方裁判所が位置する南町通付近には、法律関係ビジネス(弁護士、司法書士、行政書士などの事務所)が多く見受けられる非常に落ち着いた雰囲気です。

 そうした一方、2015年に東西線の青葉通一番町駅が開業して以降、駅周辺には新たなオフィスビルや店舗が新設されました。2023年8月に「M.BALANCE仙台一番町」(青葉区一番町1丁目)が竣工。また同年11月には、大規模で斬新なデザインのオフィスビル(木造と鉄筋コンクリートのハイブリッド構造)「ウッドライズ仙台」(青葉区国分町1丁目)が竣工し、新しいオフィスのカタチとして一番町周辺地区のランドスケープにインパクトを与えています。

注目のオフィスビル

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ビジネス拠点としての期待が高まる東口のこれから【駅東地区】

 かつては「駅裏」などと呼ばれていた仙台駅東地区ですが、近年はビジネスエリアとして大きな進化を遂げています。エポックとなったのは、東西自由通路の拡幅やエスパル仙台東館の開業で、駅周辺の利便性が大幅に向上。東西の人の行き来がスムーズになりビジネスが活発化しました。
 2021年には「JR仙台イーストゲートビル」が竣工。地上13階、地下1階建ての災害に強い多機能高規格オフィスビルとして設計されています。1階のエントランスホール(ダテリウム)では、仙台各地域の魅力を発信するイベントを毎月開催。仙台の新たな発見や楽しみを体感することが出来ます。こうした取り組みにより、ビジネス拠点としての魅力を一層高めています。

 また、2023年6月にオープンした「ヨドバシ仙台第1ビル」は、仙台駅東口から徒歩1分(東口直前)という好立地。ビルとしての最大の魅力は最新の耐震構造を採用している点で、制震構造により地震に対する安全性が極めて高く、安心して仕事に向かうことが出来ます。
 仙台駅東まちづくり協議会によれば、「住む・働く・楽しむが混在した多様なアクティビティがあるまちの実現を目指す」とのこと。まだまだ再開発をおこなう土地も、進化の余地も十分残されている駅東地区ですが、将来的には、西口の駅前地区や一番町周辺地区とは違った発展の遂げ方をして行くかも知れません。

注目のオフィスビル

日本一起業しやすい街を目指して「仙台から東北の未来を変える」

 仙台市は、起業家やスタートアップを支援するためのさまざまな取り組みをおこなっています。きっかけとなったのは2011年の東日本大震災。「他者のために」という思いを胸にチャレンジする社会起業家をバックアップするべく、2013年に「日本一起業しやすい街」を目指すと宣言。その後、起業支援センターの設立や、さまざまな起業家育成プログラムが実施されています。

 また、2020年には内閣府より「スタートアップ・エコシステム拠点都市」に選定され、新規ビジネス創出への機運が高まりました。仙台市は、社会課題の解決と持続可能な成長を両立出来るスタートアップの創出を目指して、ベンチャーキャピタルや支援機関と連携しながら積極的な支援をおこなっています。
 これらの取り組みにより「仙台から東北の未来を変える」といった意気込みで、ワンストップで起業手続きができる仕組み(企業しやすい環境づくり)を具現化。既に、東北大学の学生によるメディア開発事業や、ウェアラブルセンサーを用いて高齢者などの心身の健康の向上を目指す事業など、数々のスタートアップ企業が生まれ、新規ビジネスやサービスが開始されています。

詳細につきましては、こちらで確認してください
仙台スタートアップ・エコシステム推進協議会ホームページ
https://sendai-startup-ecosystem.jp/
仙台市 支店、支社、出張所、営業所、分室など、事務所開設・オフィス探しは・・・インターネットで簡単検索
■記事公開日:2024/07/30 ■記事取材日: 2024/07/19 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文・撮影=吉村高廣 ▼取材協力/仙台市・株式会社藤崎・参考/仙台市編「仙台の再開発(前半・後半)ほか

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