東北の経済を牽引する100万人都市仙台市では、現在、再開発が佳境に入ろうとしています。仙台で再開発が相次ぐ背景には、市が2019年に打ち出した大改革「せんだい都心再構築プロジェクト」の後押しがあります。その概要は、容積率の緩和や企業立地促進助成制度の強化などをおこなうもので、期間は2030年まで。目的は、仙台市が抱える構造的な課題の解決です。市によると、「中心部には旧耐震基準のオフィスビルが少なからずあることや、東北大学(仙台市青葉区)には優秀な学生が集まるものの就職を機に首都圏に流出してしまう」などの課題に対して、高機能オフィスビルへの建て替えを促して企業を呼び込み、雇用の受け皿をつくり「選ばれる街」にする。これが現在おこなわれている「仙台大改革」の目論みです。
JR仙台駅西口周辺は、東北経済の中心地として多くの企業が支店を構えるビジネス街です。特に、広瀬通や青葉通の周辺がオフィス・商業の両側面における中心ゾーンでもあり、SNSのアンケートによると仙台市民の約62%が駅西口周辺を「仙台の真の中心街」と答えています。
駅前地区は東二番町通までの「駅チカ」街区で、再開発は、南北線広瀬通駅周辺、仙石線仙台駅周辺で集中的におこなわれています。中でも「せんだい都心再構築プロジェクト」の第1号ビルとして2023年11月に竣工した「アーバンネット仙台中央」(青葉区中央4丁目)や、高水準の安全性能と環境性能を実現させたハイグレードオフィスビル「T-PLUS仙台」(青葉区中央3丁目)などは、駅前地区の新たなシンボルになるオフィスビルとして注目されています。
そうした一方、2015年に東西線の青葉通一番町駅が開業して以降、駅周辺には新たなオフィスビルや店舗が新設されました。2023年8月に「M.BALANCE仙台一番町」(青葉区一番町1丁目)が竣工。また同年11月には、大規模で斬新なデザインのオフィスビル(木造と鉄筋コンクリートのハイブリッド構造)「ウッドライズ仙台」(青葉区国分町1丁目)が竣工し、新しいオフィスのカタチとして一番町周辺地区のランドスケープにインパクトを与えています。
かつては「駅裏」などと呼ばれていた仙台駅東地区ですが、近年はビジネスエリアとして大きな進化を遂げています。エポックとなったのは、東西自由通路の拡幅やエスパル仙台東館の開業で、駅周辺の利便性が大幅に向上。東西の人の行き来がスムーズになりビジネスが活発化しました。
2021年には「JR仙台イーストゲートビル」が竣工。地上13階、地下1階建ての災害に強い多機能高規格オフィスビルとして設計されています。1階のエントランスホール(ダテリウム)では、仙台各地域の魅力を発信するイベントを毎月開催。仙台の新たな発見や楽しみを体感することが出来ます。こうした取り組みにより、ビジネス拠点としての魅力を一層高めています。
また、2023年6月にオープンした「ヨドバシ仙台第1ビル」は、仙台駅東口から徒歩1分(東口直前)という好立地。ビルとしての最大の魅力は最新の耐震構造を採用している点で、制震構造により地震に対する安全性が極めて高く、安心して仕事に向かうことが出来ます。
仙台駅東まちづくり協議会によれば、「住む・働く・楽しむが混在した多様なアクティビティがあるまちの実現を目指す」とのこと。まだまだ再開発をおこなう土地も、進化の余地も十分残されている駅東地区ですが、将来的には、西口の駅前地区や一番町周辺地区とは違った発展の遂げ方をして行くかも知れません。
仙台市は、起業家やスタートアップを支援するためのさまざまな取り組みをおこなっています。きっかけとなったのは2011年の東日本大震災。「他者のために」という思いを胸にチャレンジする社会起業家をバックアップするべく、2013年に「日本一起業しやすい街」を目指すと宣言。その後、起業支援センターの設立や、さまざまな起業家育成プログラムが実施されています。