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ビジネスエリア特集 Vol.4 広島県広島

西日本エリアの経済中枢都市・広島。
将来に向けた都市のバージョンアップが始まる。

未来像を写し始めた広島

皆さまがよくご存じのデジタルカメラ。カメラとしての「写す」という仕組み自体は、実に100年ほど前から変わりがありません。『小さな箱の片面につけたレンズから入った光を箱の反対面に像を結ばせ、シャッター速度や絞りで光の量を調整し撮像素子に像を当てる』というシンプルなもの。仕組み自体は不変的でありながらも、カメラそのものは決して古い道具ではなく、最先端技術を結集させたガジェットとして、いつの時代でも受け入れられ愛され続けてきました。
都市はこのカメラによく似ています。都市が持つ受け継がれてきた風土・伝統・文化は、例え時代が変化しても常に継承されてきました。と同時に、懐古的にならず歴史に縛られることなく、都市は最先端の「経済と暮らし」の拠点となるようにバージョンアップしていくことが求められています。
山陽地方の中央部に位置し太平洋ベルトを構成する中核都市として戦後の経済発展を支えてきた広島。その広島が、高い機能性と効率性を備えた最先端の経済都市へとバージョンアップし始めました。はたして広島の未来像は、いまこの一瞬を切り取ってみるとどのように写るのでしょうか。編集部ライターが見聞してきました。
未来像を写し始めた広島 未来像を写し始めた広島

環境の変化が広島を動かす

広島は、京阪神エリアと福岡商圏のほぼ中間地点というビジネスに有利なロケーションだけでなく、瀬戸内工業地域を構成する工業都市としての一面があります。このため全国展開する企業においては、西日本エリアの市場戦略上、広島は重要なキーになる都市だと捉え、営業所や支店を多く設置する傾向にあります。
このように単なる地方都市に止まることなく、各企業、さらに経済・ビジネスの屋台骨を支える経済中枢都市として発展してきた広島が、周辺環境の変化に大きく影響を受けた時期がありました。

1975年の山陽新幹線開通に始まり、政令都市移行(1980年)、広島空港移転(1993年)、山陽自動車道開通(1997年)。さらには中国地方と四国地方が橋で結ばれます。倉敷市(岡山県)と坂出市(香川県)、神戸市(兵庫県)と鳴門市(徳島県)間に橋が架けられるなど、広島周辺でのインフラが整備されます。

こうしたニュースが次々と広島に駆けめぐると、広島の「中国・四国地方の経済都市の中心地」という、これまでの揺るぎない立ち位置が脅かされることになります。特に道州制導入が真しやか囁かれ始めると、関西圏に広島より近い岡山市に将来を感じる企業が増えてきたことも事実です。(写真:広島市内紙屋町・八丁堀地区)
広島市内紙屋町・八丁堀地区

これまでの広島でよいのか

「もちろん、これまでの経済中枢都市としての広島は大事です。しかし社会経済情勢が厳しさを増している中、長期的な視点に立った都市づくりも考えていかなければいけません」と、広島市都市整備局広島駅周辺地区整備担当は話します。

広島のCBD(中心業務地区)となる紙屋町(かみやちょう)・八丁堀地区は、官公庁、地方銀行、都市銀行の本支店、保険・証券会社、各種企業のブランチ、商業施設などが集積しています。オフィスビルのほか複合ビル、ファッションビル、公共施設が建ち並び、地下街も商業施設が充実。路面電車が走り、バスセンター、新交通システム・アストラムラインの発着駅などが集中する都市核となっています。

また、紙屋町・八丁堀地区よりやや南に位置する本通りは、かつての西国街道(山陽道)の一部として江戸時代から商いのエリアとして発展してきました。現在でも、中国・四国一の繁華街・商店街として多くの市民で賑わいをみせるなど、紙屋町、八丁堀、本通り周辺は、広島経済を牽引してきた地区になっています。(写真:広島市内鯉城通りと広島本通商店街・地下街の紙屋町シャレオ)
これまでの広島でよいのかイメージ

政令都市にふさわしい表玄関へ

政令都市にふさわしい表玄関へイメージ
それに対して政令都市の表玄関とも言えるJR広島駅周辺はどうでしょう。もともと駅周辺は、広島の台所として市民に愛されてきた小さな店が軒を連ねた『愛友(あいゆう)市場』が広がっていました。この広島駅地区Cブロック再開発組合で理事長を務める川崎雅博さんは「建物の老朽化や店主の高齢化などで愛友市場の営業継続が厳しくなってきたのです。市場の継続も含めてなんとかしたいという市民の思いから、民間活力による再開発を進めました」「商業施設だけでなく、住居、温浴施設を備えたスポーツ施設、医療施設など、暮らしたくなる街づくりをお手伝いしています」と夢を膨らませます。

「充実した住環境を提供する予定です。隣接する、先に再開発で完成した商業施設と共に広島の顔として市民の皆さまに愛される街にするのが一番」「街の愛称も募集予定です。地元優先で開発しています」Bブロック再開発組合理事長の前岡眞仁さんの言葉からも、広島駅地区の再開発に対する期待度が大きいことがうかがえます。

広島駅地区の再開発プロジェクトは、広島市民が見守る中、着々と進んでいました。(完成予想図:Cブロック地区・Bブロック地区)

楕円形の都市づくりへの思い

広島市都市整備局広島駅周辺地区整備担当によると「駅を中心に、新幹線口の医療や事務所、大型商業施設、南口の商業、住居エリア、さらにスタジアムが一体となります」「紙屋町・八丁堀地区と駅周地区とが互いに刺激しあう"楕円形の都心づくり"をすすめています」。また駅周辺に完成予定の高層住宅には「大阪や東京、福岡でリタイアを迎えた広島出身の方にも暮らしていただきたい」と、Iターン、Uターンによる都市部人口減少の歯止めになる可能性も高いと話します。

「駅周辺と紙屋町・八丁堀地区とは、わずかに1キロから2キロ程度しか離れていません。この二つのエリアが有機的に結ばれることで、人の流れやモノの流れに新しさが生まれてくる。回遊率が高まることで広島全体の経済は活性化し、長い目で見ると中国・四国地方広域の経済発展になるのではないでしょうか」広島市内で代々約四百年もご商売をされ、広島の経済を見つめてきた赤松製薬・赤松薬局のご主人、赤松正康さんの言葉には説得力がありました。(写真:広島市内本通り商店街の赤松薬局前で店主赤松正康さん)
楕円形の都市づくりへの思いイメージ
空港の従業員のシャツから衣料品店、文具店、雑貨屋、果物店、居酒屋から何まで。赤が目立つ街でした。広島のイメージカラーは燃える「赤」という印象でしょうか。取材日は広島三大祭りの一つ「とうかさん大祭」。市中の提灯の「赤」も街に映えていました。祭りのせいか活気あふれる若者たちと、街の燃える赤を見ていると、次世代の広島像がイキイキと逞しく育っていくように思えました。 編集部ライター・渡部恒雄 とうかさん大祭
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■記事公開日:2014/06/30
▼編集部=構成 ▼編集部ライター・渡部恒雄=文・撮影 ▼KAME HOUSE=イラスト地図 ▼空撮/完成予想パース/資料等提供=広島市都市整備局広島駅周辺地区整備・Bブロック再開発組合・Cブロック再開発組合

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