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ビジネスエリア特集 Vol.12 愛知県 名古屋市

成熟度を増していく代表的なオフィスエリア、
名駅・丸の内・伏見・栄のいま、そしてこれから。

進化が止まらない中部地方最大の経済都市

人口約230万人。日本のほぼ中央に位置する名古屋市は、中部地方において今最も注目されている産業と経済の中枢都市です。その陸のゲートウェイとなる名古屋駅の乗降客は、一日およそ1,147,000人と東京駅を凌いで全国第6位。周辺には、オフィスビルやホテル、百貨店などによる「複合立体都市」が形成され、古くからのオフィス街である「丸の内」「伏見」や、名古屋を代表する商業地区である「栄」などと合わせて幅広いビジネスエリアが展開しています。
加えて2027年には「リニア中央新幹線(東京間約40分)が開業予定」。これにより、人的交流の拡大と地域経済の更なる発展が見込まれ、一層の活性化が期待されています。
 愛知県名古屋市ビジネス街

国際的なビジネスエリアへと変貌を遂げる 【名駅エリア】

名古屋駅の表玄関とも言える「名駅エリア」は、現在、名古屋市の発展を象徴する国際的なビジネス街へと変貌しています。その再開発は2000年頃からスタートし、以来、超高層ビルや大型オフィスビルの建設が盛んに行われ、オフィスエリアとしての成熟度を見せています。

ところが名古屋駅は、JR、名鉄、近鉄、そして名古屋市営地下鉄などの路線が入り交じり「便利だけれど、乗り継ぎが分かりにくい」というターミナル駅ならではの課題を抱えていました。この課題を払拭したのが「リニア中央新幹線」の計画発表です。これにより、名駅エリアの再開発が急加速しています。

名古屋市市民経済局(以下・市民経済局)によると、駅周辺のオフィスには、市外、県外から通勤される方も多いと言います。また、駅周辺に国際部門や総務部門のオフィスを構え、交通の利便性をメリットとして海外や他府県との商談に活用される企業も数多くいらっしゃるとのこと。いわば名駅エリアは、国内外とのビジネスの玄関口にもなる、名古屋市内でもいささか趣を異にするビジネスエリアと言えるでしょう。

金融街であり、新たな居住区でもある 【丸の内エリア】

元来「丸の内エリア」は名古屋城の築城後、南側に生まれた商業の中心地でした。地下鉄東山線と桜通線が交差する一帯を指し、現在では伏見通に沿って新しいオフィスビルが建ち並び「丸の内とともに隣り合った伏見までは、いわゆる名古屋市の金融街とも言える地域です」と市民経済局は話します。
確かに、日本銀行名古屋支店を中心に金融関連企業のサインが目立つものの、歩いてつぶさに観察すると、北側に官庁街が所在することからか、林立する中小規模のオフィスビルには法律関係企業を中心とした企業の入居が見受けられるのがこのエリアの特徴です。

また丸の内エリアは、名古屋市の代表的なオフィス街という顔を持つ一方で、ここ近年は、名駅エリアの著しい発展にともなって居住地域としても注目されつつあるようです。事実、名古屋駅から丸の内に向かって歩くと、居住用マンションも多く、高層マンションの建設も進んでいるのが分かります。徳川家康の時代に開かれた商人の町は、今後、職住近接を実現する最先端の街へと変貌していくことが予想されます。

名古屋を代表するビジネス街 【伏見エリア】


名古屋城を起点として南に下り、丸の内を越えて桜通を挟んで所在するのが「伏見エリア」です。丸の内同様金融街としての一面を見せるかたわら、東に広がる商業地区「栄」と近いことから、より一層、近代的な印象が特長と言えるでしょう。市民経済局によると「丸の内のキースポットを日本銀行名古屋支店とするならば、伏見のそれは、昭和初期に建てられた東海銀行の前身、旧名古屋銀行の本店(旧三菱東京UFJ銀行貨幣資料館)ではないでしょうか」とのこと。その重厚な佇まいは、この街が金融の中心地であることを象徴しています。また、付近に建つオフィスビルも丸の内よりも大型で、行き交う人の多彩さからも、多種多様なビジネスを営む方々がここを事業拠点としていることをうかがい知ることができました。

伏見・丸の内を語る上で忘れてならないのが、かつてこのエリアは、全国でも有数な繊維の問屋街であったということ。現在も「長者町繊維街」の周辺で、その名残りを残す繊維、衣料、雑貨の店舗や企業が営業を続けているほか、近隣にはオフィスビルが建ち並び、輸入家具店やインテリアショップ、洒落たカフェなどの路面店が賑わいを見せるビジネスエリアへと変貌を遂げています。

人々で賑わう中心的な商業地区 【栄エリア】

百貨店をはじめとして、ファッションやグルメ、アミューズメントが集積した商業地区、それが「栄エリア」です。エリアの中心に所在する緑豊かな久屋大通公園には栄のシンボルとも言えるテレビ塔が。また、商業施設からバスターミナルまでを有する立体都市公園オアシス21は、名古屋市民の憩いの場となっています。
「名古屋市は戦後行われた、防災、交通、景観など、将来の都市像を見据えた復興計画によって広く整然とした道路整備が成されているのが特長です」という市民経済局の言葉通り、この栄地区も例にもれず、中心的な商業地としては「異色」とも思えるほどゆとりのあるビジネスエリアが広がっています。

古くから商業の中心地であった栄エリアと、発展著しい名駅エリアとでは「どちらが都心か」。これは地元紙の社会面でも取り上げられるほどの関心事であったようです。しかしながら、栄エリアと名駅エリアではその趣はまるで異なります。名駅エリアを今後さらに変化し続ける"期待の街"とするならば、栄エリアは長年名古屋市のセンター街として存在してきた"安定感のある街"と言うことができるでしょう。この2つのエリアが互いに競いあっていくことで名古屋市はますます活性化していくに違いありません。

アクセス、支援、さまざまなメリット

名古屋市の特長は、日本の真ん中というロケーションの良さと、陸・海・空の充実した交通網の発達です。他府県へのアクセスなら新幹線、市内であれば6つの路線が網羅された地下鉄の利用が便利です。地下鉄の環状線が日本で初めてネットワークされたのも名古屋です。そして2027年のリニア開通によって、名古屋駅を起点とした国内移動は短縮されてますます便利になります。
また、国内18都市、海外40都市を結ぶ中部国際空港(セントレア)、国内9都市を結ぶ県営名古屋空港の2つの空港へは名古屋市中心部からわずか30分ほどとアクセスも至便。"ものづくり名古屋"の物流拠点となる名古屋港は、日本を代表する総合港湾として世界約160の国々と結ばれています。

交通や物流のアクセスばかりでなく、制度の面でも名古屋はアドバンテージを持っています。名古屋市では、個人、法人ともに市民税の一律5%の恒久減税を実施。さらには、名古屋に進出する企業のオフィス賃料や、固定資産税等への補助制度を実施するなど、手厚いサポートが受けられることも、名古屋でビジネスを行う追い風となることは間違いないでしょう。

取材手記

名古屋と言えば、まず思いつくのが「ものづくりの街」。名古屋城の築城とともに始まった名古屋のものづくり産業は一大文化として開花しました。とくに近年は、医療、福祉、健康分野や次世代自動車など、今後の成長が大いに期待される次世代産業も着実に発展しており、中でも、航空宇宙産業の集積状況は目覚ましく、名古屋を含む中部地方は、日本の航空機・部品生産額の50%以上を占める一大生産拠点となっているそうです。

ところが、名古屋市の産業別総生産額(2016年度)を見ると、構成比率のトップは製造業ではなく、商業・サービス業が第1位。これは、大都市特有の商業・サービス業中心の産業構造であることを示しています。ものづくりに対するポテンシャルは疑うべくもなく、実はそれを上回る商いの地盤がある。さらにこの先リニアの登場を迎える名古屋市は、目が離せないビジネスエリアであることは間違いないでしょう。

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■記事公開日:2017/02/16 ■記事取材日: 2017/01/26 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣 ▼撮影=田尻光久 ▼イラスト地図=KAME HOUSE ▼取材協力・空撮等資料提供=名古屋市長室広報課

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