日本経済の一翼を担う大阪市、そのキーエリアを往く①
新大阪・西中島、梅田、南森町、淀屋橋・本町、臨海部
市内ビジネスエリアへも直結 【新大阪・西中島エリア】
新幹線の発着駅である新大阪駅から、地下鉄御堂筋線・西中島南方駅までの一体地区は、大阪の北の玄関口"梅田"から、淀川を挟んで北側に位置しており、市の中心地からは外れています。しかしながら、梅田、淀屋橋、本町、心斎橋、難波、天王寺などの主要なオフィス街や繁華街に直結した、抜群のアクセスの良さと、全国各地への利便性が高いことから、市外・府外企業の大阪進出拠点としてオフィスの需要が急増。大阪市経済戦略局によると、ここ近年は新エネルギーやライフサイエンス関連企業の進出が数多く見られるといいます。
新大阪・西中島エリアが位置する淀川区は、オフィス街としてだけではなく、高い技術力を持った中小企業の工場や本社が集積しており、新ビジネス創出の可能性もったポテンシャルの高い地域ともなっています。また、新大阪と関西国際空港とを直結するなにわ筋線、JRおおさか東線やリニア中央新幹線の乗り入れなど、長期的な大型インフラ構想があり、今後はさらに大きな発展が期待されるエリアです。
"北の玄関口"から"関西の玄関口"へ 【梅田エリア】
大阪の北の玄関口「キタ」と呼ばれる梅田。そのキーステーションとなる大阪駅周辺は、1日約250万人が利用する西日本最大のターミナルです。駅周辺には3つの百貨店を中心に多数の商業施設が立地し、ファッションやエンターテイメントなど、最先端のトレンドを発信する躍動的なエリアとなっています。
大阪駅周辺エリアは半径約1km内に7つの駅、オフィス、商業施設、ホテル、金融機関などがコンパクトにまとまったビジネス環境に優れたゾーンです。主要街区のすみ分けは、大阪駅、大阪駅北(うめきた)、大阪駅南、西梅田、阪急梅田駅・茶屋町の5つ。中でも、大阪駅北(うめきた)の開発は著しく、2013年4月にはオフィス、商業施設、ナレッジキャピタル、ホテル、超高層マンションなどからなる大型複合施設「グランフロント大阪」がオープン。年間約5,000万人もの来場者が訪れるなど、関西の中枢を担ってきたこの地域が、より一層の利便性と賑わいに満ちた"関西の玄関口"へと成長し、大きく発展を遂げています。
さらに、阪神百貨店と新阪急ビルの一体的な建替えが2022年に竣工予定。加えて、大阪駅周辺地区は一定条件を満たす事業者が税制優遇をはじめ様々な支援を享受できる"特区地域"に指定されるなど、企業活動を行う上でのメリットも充実。加速的に発展をとげるビジネスエリアとして期待されます。
歴史と人情が同居するオフィス街 【南森町エリア】
南森町地区は、大阪市の主要ビジネスエリアを南北に結ぶ大動脈・地下鉄御堂筋線からはやや東側に位置するものの、南森町駅には谷町線(市営地下鉄谷町線東梅田駅より1駅2分)と堺筋線、さらに、大阪天満宮駅にはJR東西線の3線が乗り入れる、中規模のオフィスビルが建ち並ぶビジネスエリアです。近年では、こうした立地条件の良さから、グラフィックデザインやIT関連などを中心とした新進企業のオフィスが増加。大阪天満宮のお膝元として歴史を紡いできた街が、にわかに様変わりしています。
れっきとしたビジネスエリアでありながら、もう1つの顔を持っています。それが「天神橋筋商店街」の存在です。この商店街は、全長約2.6kmのアーケードに、約600もの店が商いを営む「日本一長い商店街」とされており、端から端まで歩くと30分ほどの時間を要します。エリアの中心には大阪の"天神さん"が腰を据え、商店街には昔ながらの人情味あふれる大阪があり、それらを取り囲むようにしてビジネスマンが行き交っている。それが、他エリアにはない南森町地区ならではの魅力です。
緑豊かな関西屈指のオフィスエリア 【淀屋橋・本町エリア】
淀屋橋から本町にかけてのエリアは、押しも押されぬ関西屈指のオフィス街。南北を通る御堂筋に沿って大阪を代表する企業本社や、大阪市役所とその関係機関ビルが立ち並ぶ大阪経済の中心地です。条例によって景観も維持されており、整備されたビル群や、緑にあふれた美しい街並みもこのエリアの特長です。
大阪市経済戦略局によると淀屋橋地区は、複合型ビルや商店・飲食店が多いため、生活の利便性が極めて高く、近年ではオフィスビル開発だけではなく、居住用高層建物の開発プロジェクトも数多く見られ"暮らしの街"としても期待が寄せられているそうです。また、交通インフラについても、市営地下鉄御堂筋線および大阪と京都を結ぶ京阪電車が乗り入れるターミナル駅であり、市内各地へのアクセスにも優れたビジネスエリアです。
本町地区は、全長約4kmに及ぶ御堂筋のほぼ中間地点に位置し、大阪市都心部を東西南北につなぐ複数の地下鉄路線と主要幹線道路が交差する交通の要所となっています。大阪の地場産業である繊維産業の中心地であったことから、古くから大阪を代表するビジネス街として知られ、多くの有名企業がここから誕生。次回『大阪市・後編』でご紹介する"船場エリア"もこのエリアの一画に位置しています。
新たな国際観光拠点の形成をめざしたまちづくり 【臨海部エリア】
大阪湾臨海エリアでは、アジアとの交流・交易の歴史を背景に、研究開発拠点やオフィスなどに最適な立地を活かし"世界に開かれたビジネス拠点"を目指したまちづくりが進んできました。1970年代に造成された人工島、咲洲(さきしま)のコスモスクエア地区においては、新エネルギーやライフサイエンス関連の産業集積が進んでおり、独立行政法人・製品評価技術基盤機構により"大型蓄電池システム試験評価施設(世界最大級)"が開設。日本が誇る最先端技術の一翼を担うエリアとして大いに注目されています。
また、2025年日本万国博覧会の大阪誘致の実現をめざしている夢洲。万博ムーブメントを活かした革新的な技術の創出の推進等とあわせて、統合型リゾート(IR)を核とした国際的エンターテイメント拠点や多くの集客交流が見込まれるビジネスイベント等の拠点の形成をめざしたまちづくりの検討が進められています。また、夢洲・咲洲地区も、大阪駅周辺地区同様、条件を満たした事業者が税制優遇をはじめとする様々な支援を受けることができる"特区地域"として指定されています。
取材手記
商いの街、ものづくりの街、くいだおれの街...さまざまなキャッチフレーズで語られる大阪市。それらに加えて、今回、代表的なビジネスエリアを歩いてみて強く実感したのは「大阪市は鉄道の街」ということでした。事実、平成23年度の大阪市の統計によると、鉄道密集率は東京を抜いて全国第一位。主要なビジネスエリアを南北に結ぶ地下鉄御堂筋線を幹線として、ほとんどの駅に複数の支線が乗り入れるという充実したネットワークに、「商売(ビジネス)の基本は道づくりから」という大原則を改めて実感しました。
繰り返し記してきた通り、大阪市の主要ビジネスエリアは、大阪市を南北に縦断する地下鉄御堂筋線に沿って点在しています。今回は、新大阪・西中島エリアから南下して淀屋橋・本町エリアまで、さらには大阪市のウォーターフロント臨海部エリアにスポットを当ててご紹介しました。次回、大阪市《後編》では、船場エリア、心斎橋・難波エリア、阿倍野・天王寺エリア、京橋・大阪ビジネスパーク(OBP)エリアをご紹介いたします。
■記事公開日:2017/05/29 ■記事取材日: 2017/05/11・12 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣 ▼撮影=吉村高廣 ▼イラスト地図=KAME HOUSE ▼取材協力・空撮等資料提供=大阪市