コロナを生き抜く① 対話が減ると、想像力が衰える。
豪華客船でのクラスターを発端に、
突如、私たちの前に姿を現した新型コロナウイルス。
その感染拡大によって、私たちの仕事観や生活スタイルは大きく変化しました。
真夏の炎天下でもマスクは必須のアイテムとなり、
通勤することが仕事の常態であったビジネスマンの多くが在宅で仕事をするようになりました。
そして季節は間もなく秋を迎えます。
しかしながら、状況は何一つ好転していません。
こうした時期にこそ批評眼をもって物事に接し、
小さな気づきを積み重ねてゆくことがマーケティングの役割だと思います。
そこで今回からしばしの間、主テーマを『コロナを生き抜く』として、
さまざまな事象を分析してみたいと思います。第一回は「対話と想像力の関係」についてです。
一方的に流れてくる情報に一喜一憂
この半年というもの、社会には淀んだ空気がただよっています。言わずもがな原因はコロナです。あるシンクタンクの試算によるとコロナ禍による日本の経済損出は、4月から6月期だけで約13.3兆円にも上り、これだけの損出がこの先数カ月にわたって継続すれば、業態や規模の大小を問わず、企業の資金繰りに甚大な影響を与えることは想像に難くないという報告があります。
そうした一方で、「今日もまた一日の感染者数を更新しました」「若者から中高年へと感染者が推移しているようです」「医師も看護師も疲弊していて医療機関はパンク寸前です」「国が示す方針と自治体の考えに齟齬があるようです」...と、デイリーなニュースでは毎日同じテーマについて、朝から晩までさまざまな"専門家"が、それぞれの立場で、ばらばらなメッセージを発信し続けており、「いいかげんウンザリ」という方も少なくないはずです。
私自身、コロナによる自粛生活を振り返ると、話しかける相手が人間でないことが多いことに気づいて「ハッ」としたことがありました。テレビ番組を観ていても一方的に流れてくる情報に対して、ひとり相槌を打ったり、反発したり。パソコンを開いてインターネットに繋いでも、その小さな窓から覗かれる世界だけが真実であるように思えてしまったり。自粛期間中は気軽に話し合う相手がいないので、どうしても独りよがりな解釈をしがちでした。
対話の欠如が招く無自覚な行動
テレビやネットを観ながらあれこれ言ってるうちはまだしも、独りよがりで、なおかつ無自覚な行動を起こす人は困りものです。「買い占め」「高額な転売」「便乗値上げ」「デマの流布」「誹謗中傷や差別」など、人としての本質が問われるような行動も少なくありません。さらに言うなら、大阪府知事の「うがい薬発言」もリーダーとして自覚の欠如が指摘されても仕方ありません。「うそみたいなほんとの話」と前置きして不確かな発言をしたことは明らかに軽率なスタンドプレーでした。
本質的には同じ土俵で語るべき話題ではありませんが、買い占めに走る心理も先走った軽率な発言も、その背景には、人との対話や議論の乏しさゆえに、目の前に差し出された情報を"リアルな事象"として鵜呑みにして行動・発信してしまう"想像力の欠如"が起因していると私は推測しています。
皆さんの職場ではいかがでしょうか?リモートワークや在宅勤務の導入で、スタッフ同士の会話が乏しくなってはいないでしょうか?「"創造力"の原点にあるものは"想像力"である」と言われるように、ビジネスにおいて、対話や議論の欠如は致命傷になりかねません。顔の見えない部下や同僚と、どれだけコミュニケートする機会をつくれるか。企業にとってこれは、ウィズコロナの大きな課題でもあります。
"顔の見えない相手との対話機会創出がウィズコロナの課題です"
Yuji Seino
清野裕司
1947年生まれ。1970年慶應義塾大学商学部卒業マーケティングを専攻 。商社、メーカーにてマーケティングを担当し、1981年(株)マップスを創設。現在、同社の代表取締役。マーケティング戦略の立案、商品・店舗の開発支援、営業体制の整備、ブランド開発、スタッフ養成の研修まで、業種業界を超えたマーケティング・プランナーとして、2500種類のプロジェクト実績。
株式会社マップス ホームページ:http://www.mapscom.co.jp
■記事公開日:2020/08/21
▼構成=編集部 ▼文=清野裕司 ▼画像素材=PIXTA