シリーズ清野裕司の談話室Vol.2 シリーズ清野裕司の談話室Vol.2

シリーズ清野裕司の談話室Vol.2

ビジネスチャンスをつかむご縁の活かし方

マーケティング論が主題にしている『顧客起点』という考え方は、企業が発信・提供する情報やモノについて、顧客が、どのように受け止めて受容するかという"受け手の評価"が根底にあります。したがって、送り手と受け手との関係性は、双方の出会い方や、その後の継続性や頻度が問われます。いわば、『ご縁』とは、物事が始まる"きっかけ"であって、関係形成の基本と言うことが出来ます。

若い方の中には、「ご縁を大切に」などと聞いても、いま一つピンとこない方もいるでしょうが、ご縁は決して神がかった講話などではなく、活かし方次第で人生の質を劇的に変えるチャンスにもなります。それはビジネスでも然りです。生き方や働き方を大きく変えるかも知れないご縁を、「掴んで」「活かして」「深めて」いくためにはどんな心掛けやおこないが大切なのか。私の実体験を通してお話ししたいと思います。

良縁は意図して選別できるものではない。

何かのきっかけで、相手との関係がより一層深まったり、逆に、気まずくなることがあります。しかしながらその時は、「何が原因だったのか」に思い至ることはなく、少しホットな思考が沈静して改めて考えてみると、プロジェクトの推進方法や、ビジネス価値観、さらには、相手との接し方や距離の取り方などが、関係性に影響していたことが分かるものです。

つまり、良縁か否かは、後になって思うものであって、意図して選別出来るものではありません。まずは、出会った相手と、これからどのような関係を築いて行きたいかを考えて、自らアクションを起こすことで、ようやくご縁の端緒を掴むことが出来るのです。

個人的な心掛けとしては、出会いの機会を得たことに対して、私の方から感謝の気持ちを記した御礼メールを送るようにしています。それに対して、何ら反応のない相手であれば、ご縁のきっかけが得られなかったとして、そのままに。意思の疎通が少しでもあれば、次に会うタイミングではどのような歩み寄りが出来るだろうかと考えます。大事なのは、最初から利得を期待して良縁を求めるのではなく、まずは、出会いの絆を太くすべき相手か否かを見定めて、相手に先んじたアクションをおこなうことに他なりません。

相手との距離感を間違えるとご縁は活かせない。

先述した"ご縁の掴み方"とややリンクしますが、関係性を活かすためには、「そこまでしなくても」と思われるようなことを無駄と思わず、実行することが大切だと私は考えています。これは私の仕事の流儀でもあり、先の"御礼メールを送って相手の反応を待つ"というのはまさしくその最初の一歩です。そこからは徐々に相手を知るべく、雑談を通して相手のパーソナルデータの収集に努めます。
初期段階で着目すべきは、身近な共通点や繋がりについてです。例えば、年齢/誕生日/出身地/出身校/趣味/組織内での立ち位置など、外延的な情報は相互理解をする上で有意義な情報になります。ところがここで、「雑談しながらパーソナルデータを探ることなど、ビジネスに何の役に立つのか」などと懐疑的に考える人は、後々後悔することになるかも知れません。

どのような出会い方をしようとも、ビジネスシーンでいきなり手の内を明かす人などいません。したがって、最初のうちは、外延的なバックグラウンドを認識して、接する上での距離感を測る(接し方を考える)ことが大事なのです。私の苦い経験上、後になって考えてみて、良縁になるはずだった出会いが消滅してしまった原因は相手との距離感を間違えて、私の方が突っ走ってしまったり、或いは、後手にまわって出遅れてしまったケースが殆どです。いずれにしても、自ずから何の働きかけもせずに、巡り合ったご縁が自然と活きてくることはあり得ません。 

短所には目をつむり良い点だけにフォーカスする。

ご縁を繋ぎ、お付き合いが長くなると、「何がきっかけで、これほど長い付き合いになったんでしょうね」といった会話になることがしばしばあります。きっかけは偶然の出会いであったとしても、その後のコミュニケーションによって、相手の脳力や魅力を知ることとなり、しばらくご無沙汰していても、「そうだ、あの人に相談してみよう」と、その存在がクローズアップされることがあります。まさしくこれが良縁です。

とはいえ、そうした人たちと全ての主義主張が一致するわけではありません。むしろ、付き合いが浅いうちは、とかく相手の短所に目が行きがちです。例えば、言葉遣いに配慮がない、我が強い、表情が乏しいなど。しかしながら、そうした印象を与える相手であっても、良い点を探して認めることが、ご縁を深めるポイントになります。時には、「遠慮のない人だ」と、相手に対して腹立たしく思うことがあるかもしれませんが、そこは目をつむり、逆に、相手の脳力や尊敬できる部分だけにフォーカスして、その立ち位置でお付き合いすることが肝心です。ビジネス上の良縁とは、必ずしも相性の良い相手ばかりとは限りません。

清野裕司のmarketing eye

しばらくご無沙汰していても、困った時に、
その存在がクローズアップされる。まさしくこれが良縁です。

Yuji Seino
清野裕司


1947年生まれ。1970年慶應義塾大学商学部卒業マーケティングを専攻 。商社、メーカーにてマーケティングを担当し、1981年(株)マップスを創設。現在、同社の代表取締役。マーケティング戦略の立案、商品・店舗の開発支援、営業体制の整備、ブランド開発、スタッフ養成の研修まで、業種業界を超えたマーケティング・プランナーとして、2500種類のプロジェクト実績。

株式会社マップス ホームページ:http://www.mapscom.co.jp

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■記事公開日:2022/12/26
▼構成=編集部 ▼文=清野裕司 ▼画像素材=Adobe Stock

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