ところが海外のビジネスシーンでは『日本のビジネスパーソンは価格交渉が苦手』と見られています。
その理由はdebateに不慣れな国民性と、ビジネス英語ならではの決まり事を知らないことが原因だろうと思われます。
そこで今回は、『会社でipadを大量購入』というシチュエーションで、買い手と売り手、両方の視点から実際の交渉事例を紹介しつつ、その中で、押さえておきたいビジネス表現を学びます。
①見積り依頼
Could you give me a quote for 20 ipads?
iPad20台の見積もりをお願いできますか?
Check Point quote/estimate
「見積り」は、quoteで表現する場合と、estimateで表現される2つのケースがあります。estimateは、多少は上下するであろう「概算見積り」を求める場合に使用します。一方、quoteは、これ以上値引きする余地のない「正式見積り」を表します。見積りのやり取りは交渉の入り口です。ここを間違えると後でトラブルの原因になりかねません。iPad20台の見積もりをお願いできますか?
Check Point quote/estimate
A:We can be offered the price at 17,000 dollars before tax.
B:We can set the price at 17,000 dollars before tax.
税抜き価格17,000ドルでご提供することができます。
Check Point can be offered/can set
一般的に「提供できる」はcan be offeredと表現されますが、ビジネス上の取引で大量の商品を用意する場合は、can setを用いて「価格設定できる」という表現を用います。実際には、Aの方が丁寧な言い回しですが若干スマートさに欠ける印象があるため、ビジネスではBの表現が妥当と言えるでしょう。B:We can set the price at 17,000 dollars before tax.
税抜き価格17,000ドルでご提供することができます。
Check Point can be offered/can set
②値引き交渉
It exceeds the budget we want.
Could you make it 15,000 dollars?
当社の希望予算を超えています。
15,000ドルになりませんか?
Check Point make it
make itは一般的に「作る」と訳されますが、このほかにも、実現させる、構成する、正しくする、など、ビジネス英語では必須の多用される動詞です。この例文では、こちらの事情や条件に合わせて、「融通を利かせて欲しい」「やりくりして欲しい」などの意味となります。Could you make it 15,000 dollars?
当社の希望予算を超えています。
15,000ドルになりませんか?
Check Point make it
Attention!
値引きを要望するとき、以下のように問いかける方が少なくありません。
Can(Could)you give me a discount?
値引きをして(安くして)もらえませんか?
市場で野菜や果物を値切る場合には問題ありませんが、ビジネスの価格交渉には相応しい表現ではありません。CanをCouldに変えて丁寧な言い回しにしても同様です。ビジネスで値引きを希望する場合は、買い手の側から"具体的な数字を提示"しなければ交渉は前に進みません。ここは大事なポイントです。
③交渉クロージング
We are sorry, but we can't give discounts any more.
申し訳ございませんが、これ以上値引くことは出来ません。
Check Point
見積りのさい、quoteを用いて「正式見積り」を依頼しています。したがって、売り手が提示した17,000ドルは、最大限譲歩した価格と理解して、値引き交渉はここでおしまい。執拗な値引き交渉はご法度です。
値引きに代わるサービスは、日本と同じく「配送料無料」が一般的で、ここで手を打ちclosingするケースがほとんどです。申し訳ございませんが、これ以上値引くことは出来ません。
Check Point
見積りのさい、quoteを用いて「正式見積り」を依頼しています。したがって、売り手が提示した17,000ドルは、最大限譲歩した価格と理解して、値引き交渉はここでおしまい。執拗な値引き交渉はご法度です。
We will take care of the shipping cost.
送料は当社が負担します。
送料は当社が負担します。
海外での仕事を経験すると、普段のビジネスの中で、日本人がいかに曖昧な表現を多用しているかが分かります。それは、明確な表現には"責任"がついてまわるため、責任回避の"知恵"とも言えます。
しかし、海外のビジネスシーンでは通用しません。そしてその最たる場面が価格交渉です。今回ご紹介したシチュエーションが、そのまま展開されるケースはないでしょうが、それぞれの局面で、最低限留意したい"会話の作法"は盛り込みました。御社の交渉時の参考にしていただければ幸いです。