世界中で35億人以上が観戦するといわれるサッカーワールドカップ。昨年は、日本代表の活躍に一喜一憂された方も多かったのではないでしょうか。多くの人々が観戦している大会であることから、大会のスポンサー企業にも注目が集まります。スポンサーにはランクと取り決めがあって、全ての試合や関連したイベントで自由に広告を出せる権利を有する『FIFAパートナー』は、1業種1社しか契約することが出来ません。
例えば、販売台数世界20位の自動車メーカーテスラが契約した場合は、販売台数世界一のフォルクスワーゲンは契約することが出来ないことになり、テスラは圧倒的な存在感を示すこととなります。当然ながらスポンサー料も超高額で年間20億円から50億円。それ相応の企業体力が求められます。それでも、かつてはこのポジションは日本企業の定位置で、スタジアムには必ず複数の日本企業のスポンサー広告が見受けられました。
ところが昨年のカタール大会では、日本企業のスポンサー広告が全く見当たりませんでした。調べたところ、実は、2014年のブラジル大会まで契約をしていたソニーが、経営状況の悪化を理由に撤退したのを最後に、日本企業は1社もFIFAパートナーにエントリーしていないそうです。その一方でカタール大会では、14あるスポンサー枠のうち、その半数の7枠は、中国を初めとして、韓国、インド、シンガポールといった新興国のアジア企業がエントリーして存在感を示していました。
長らく日本は、アジアで唯一の先進国としてG7に加盟し、世界経済にインパクトを与えてきました。ところが近年は、新興国の発言力が増して「世界のパワーバランスは変化した」と言われています。事実、現在のG20では中国やインドなどの影響力が拡大する一方、日本の存在感は小さくなっています。これから日本は、何をもって存在感を示していくのか。再びスタジアムに日本企業の名前が躍る日は来るのか。サッカー日本代表の大活躍に心を熱くしながらも、そんなことを考えたサッカーワールドカップでした。
■記事公開日:2023/01/18
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼写真=Adobe Stock