『人生100年時代』と言われ、老後資金の確保が深刻な問題になっています。こうしたことから、近年は資産形成の重要性が高まっており、政府も税金面で優遇制度のあるNISAなどの金融商品で個人の資産形成を後押しするなど、もはや投資は特別なことではなくなりました。そんな中、2023年9月21日に、国内における金の相場が1万0063円/1gと過去最高額を更新。ネットニュースには『ついに1g1万円時代の到来!』といった見出しが踊り、マネーの虎たちがにわかに色めき立ちました。
金は通貨として利用される一方"商品"でもあります。したがって、インフレ時には他の商品と同じように価格が上がります。ご存知の通りインフレとは、品物の値段が上がり通貨の価値が下がることで、まさに今の日本はその真っ只中です。
言い換えるなら、インフレが続けば、現金(預貯金)で持っている資産は、その価値が目減りするということです。一方、実物資産である金はインフレによって価値が下がることはありません。ちなみに、コロナ前の2019年9月の金相場は1gが5320円でした。それが昨年9月には8807円となり、今年の価格は冒頭で記した通り1万円超。ここ数年の金相場はまさしくバブルでした。
先にも記した通り、金は通貨や株と逆相関していて、社会や経済が混迷している時ほど相場価格が上がります。特にここ数年は次々と景気にダメージを与える出来事が起き、その都度金は値を上げ続けて来ました。ところが今年5月、新型コロナウイルスがインフルエンザと同じ「5類感染症」に指定され、社会は落ち着きを取り戻しつつあります。同時にそれは、金のバブル期がピークを越えたことを意味しています。
そもそも金は、配当金や利子があるわけではなく利得を感じにくい商品です。価格上昇時に売却して差額で利益を得ることは出来ますが、投資商品としてのメリットは低いようにも思えます。その反面、経済情勢が海外(特に米国)の動きに影響される日本では"もしもの時の備え"として、有事に強い金を資産形成に組み込むことは正しい選択とも言えるでしょう。いずれにしても、今後の金の値動きは要チェックです。
■記事公開日:2023/10/25
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼写真=Adobe Stock