先ごろ世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数」の中で、日本の女性管理職登用数が他国に比べて著しく低いことが判明しました。調査対象となった156カ国のうち日本は118位で、先進国はもとよりアジアの新興国よりも劣っています。また、気候変動問題(カーボンニュートラル)や再生可能エネルギーの利用などについても国や企業の取り組みの遅れが指摘されています。
もちろんさまざまな背景があるため、一概にそれらを「悪いこと」と評価することは出来ませんが、グローバル化が進む現代社会において、世界の潮流に後れをとることはビジネスをおこなう上でマイナスです。
ではなぜ、日本は遅れが目立つのか。
スイスの国際経営開発研究所(IMD)がおこなった調査・分析では、その要因のひとつにデジタル化が進まないことを挙げています。とくに、ビッグデータの活用やデジタル人材のグローバル化については、調査した63カ国中で最下位。こうした現状が、国際社会の変化に迅速に対応出来ない「日本のいま」を象徴しています。
また、「日本独自の企業文化が足枷になっている」という指摘もあります。日本企業の多くは今なお「支配型リーダーシップ」が主流で、上司の顔色を伺いながら仕事をするため意思決定が遅く、社会や市場の変化に迅速に対応することが出来ません。いわゆる「プロセスより文化」という企業体質が組織の硬直化を招いているのです。
そこで今求められているのが「サーバント(支援型)リーダーシップ」です。従来の「支配型リーダーシップ」は上司が部下を引っ張っていくイメージですが、サーバントリーダーシップは上司が先頭で引っ張るのではなく、部下と向き合い、個々の力を引き出すことで組織としての目標を達成していくスタイルです。つまり、主役はあくまでも社員一人ひとりで、彼らが成長し活躍出来るよう支援するのが上司の役割です。
経済の成長期は、経営トップやベテランの経験が全てで「余計なことは考えずに、言われた通りにやればいい」という中で結果を出すことが出来ました。ところが今は、多様化するニーズや価値観に対して、柔軟に対応しなければ結果が出ません。リーダーのスキルについても、部下を手駒として「支配」するのではなく、個性や特性を尊重して「支援」して行くことが会社の成長の鍵となり、延いてはそれが、日本の遅れを取り戻す小さな一歩になるのかも知れません。
■記事公開日:2024/07/30
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼写真=Adobe Stock