オリンピックで金メダルをとる。これはもう大げさな目標ではないと思います。代表監督時代に私が選手たちに常々言っていたのは、7:3くらいの実力差があると中国には勝てない。でも、6:4くらいの実力差なら有利に試合運びができるということです。勝負事、あるいはビジネスに置き換えてもいいかもしれませんが、相手より少しだけ力が劣っているなと感じるくらいの時が、最も良いパフォーマンスを発揮できるものです。ただ、この差が逆だとだめなのです。
というのも、ロンドンの時がそうでした。それまで一度も勝ったことのなかったシンガポールに3対0で日本が勝った。そこには「相手は強いけれど、何としてでも勝ってやる」という日本の執念があった。かたやシンガポールには「一度も負けたことのない日本だったら大丈夫だろう」というわずかな気持ちの隙があったのです。そうしたことが東京オリンピックでも中国相手に十分に起こり得るのではないかと私は思っています。