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ビジネスマンのメンタルヘルス

Vol.2コロナブルーからココロの健康を保つ


新型コロナがもたらした閉鎖的な環境(自粛生活)の中で、その変化に適応できすに"社会的孤立"に陥ってしまった方の状態を「コロナブルー」と言うそうです。マインド面では、不安感、恐怖感、焦燥感、やる気の喪失、集中力の欠如、気分の落ち込みなどが現れ、またフィジカル面では、疲れやすさやカラダのだるさ、睡眠障害などが顕在化するなど、何らかのアラートが点滅します。
しかしながら残念なことに、その収束は目処が立っていません。特効薬もありません。加えて経済の冷え込みは著しく、コロナが収束した後の世界を考えても憂鬱のタネは消えません。これはまさしく国難。八方ふさがりとも思える今の状況を乗り越えるためには、いかなる術をもって日々に臨めばよいのか。カウンセリングを受ける心持で大野萌子先生にお聞きしました。

コロナブルーに陥りやすい人のタイプは?

責任感が強くて几帳面、真面目な方がなりやすいと思います。そうした方ほど仕事には安定感があるものの、反面「こうあるべき」という思いが強すぎて融通が利かないところもあり、極端な環境変化に適応できずストレスがかかりやすい傾向があります。したがって、コロナのような状況下では、どう対処していいか分からず、気持ちが不安定になっている方が少なくありません。自分のやり方やルーティーンのようなものをもっている方は、それが崩れてしまうことによる不安感や焦燥感が色濃く表れます。

逆に、順応性が高い人もコロナブルーに陥りやすいように思います。たとえば、最初は在宅ワークに戸惑いを感じていても、次第に新しい環境に馴染み、早い段階で生活リズムが整えられる。ところが、自粛要請が解除されて「いざ出勤」となると、そこでまた新たな変化が起こってマインドスウィッチが困難になってくる...。状況がめまぐるしく変わり、先が見えない今は、誰でもコロナブルーに陥る可能性はあるのです。
どんな人でもコロナブルーに陥る可能性がある

負の感情に陥りやすいのはどんなとき?

人との接触が極端に減っているときです。前回のテーマでもお話ししましたが、人はどんなに小さなことでも「話すこと」によって自分の気持ちをある程度整理できます。ところが自粛期間が長引くと、人と接触する回数や時間が大幅に減り会話も少なくなります。また、自粛解除後に対面する機会が増えても、マスクやソーシャルディスタンスが求められる今は、会話は最小限で終わらせようとか、なるべく人には話しかけないようにしようという雰囲気があって、自分の気落ちを人と共有するゆとりがありません。こうした状況が続けば、気持ちはどんどんネガティブな方向に傾いてゆきます。

また、冒頭でもお伝えしたような几帳面で真面目な方は、より人とかかわることを避けようとするでしょうから"負のスパイラル"に陥りやすいとも言えます。一人暮らしの方が長期休暇中に誰とも接点をもたずに過ごしていると、休み明けに抑うつ状態になることがありますが、それに似た状況が、今いろいろなところで起こっていて、今後はさらに増えてゆくと見られています。
人との接触が減ると気持ちはどんどんネガティブな方向に傾く

負のココロのリハビリ対策はありますか?

不調のファクター(因子)が、人との接点が薄れて会話が少なくなったことにあるわけですから、まずは人と話す機会を増やすことです。こんなご時世ですからもちろん電話やオンラインで構いません。肝心なのは"話すこと"で、雑談程度の内容でもいいので、自分の気持ちや出来事をアウトプットできることが大事です。
この場合、家族のように気の置けない顔ぶれとだけでなく、会社の同僚や仕事関係のブレーンなど、日ごろは利害が絡む相手とも会話を持てるとより効果的なリハビリになるはずです。また、軽い運動をするとセロトニン(幸せホルモン)の生成が促進されるため、これを機に、散歩やウォーキングなどを習慣にすることもお勧めできます。

これらに加えて、気分の落ち込みが激しい方の場合は、情報をシャットダウンすることが望ましいでしょう。今はテレビをつけてもスマホをチェックしてもコロナ絡みのネガティブ情報ばかり。そうした情報に触れ過ぎてはいけません。往々にして人は不安になればなるほど情報を欲するものですが、仕事で必要なとき以外はネットやテレビも見ない、いわば"情報入手の自粛"が求められます。
気分の落ち込みが激しいときは情報をシャットダウン

わけもなく不安になるのはどうして?

コロナの問題はいくら考えてもどうにもなりません。つまり私たちは、自分の力ではコントロールできないものと対峙して、それに対して不安を感じたり、葛藤したりしているわけです。でも実はこうした状況は、コロナに限ったことではないのです。
メンタルヘルスの障害の1つに「予期不安」というものがあります。例えば、電車に乗ってお腹が痛くなったとしましょう。すると「また痛くなったらどうしよう...」と不安がよぎり、電車に乗るたびにお腹に意識が向くようになり、本来痛くもないはずなのに痛さを感じるようになってしまいます。それを気にすればするほど意識はさらにお腹に向き敏感になってゆく。皆さんもそんな経験はありませんか?実はコロナブルーに陥るトリガーもこうした思考にあると考えられます。

「37.5度が4日以上続くとコロナの疑い」という不確かな情報がまことしやかに広まったのも良くなかったと思います。熱っぽくて計ってみると37度前後という微妙数字が出てドキリとして、以後、頻繁に検温しなくては気が済まなくなったり、少し喉が痛くて咳が出たら急に不安感が芽生えたり、電車の中で咳をした人を見ただけで不愉快になって急いで車両を移ったり...そうした方が大勢いました。でも、そこには確かな根拠はないのです。にもかかわらず不安が芽生え、考えれば考えるほどその不安が雪だるま式に大きくなって、最終的にはどうにもならない無力感や恐怖にかわってゆくわけです。

予期不安がコロナブルーのトリガーになる

ウィズコロナを乗り切る対処方法は?

この先、第二波、三波が押し寄せれば、間違いなく再び自粛生活に逆戻りすることでしょう。それを乗り切る対策は"コントロールできることに意識を向ける"ことが最良の手立てだと思います。具体的には、いままで「やってみたいな」と思っていたことにチャレンジしてみると良いでしょう。語学や資格の勉強を始めてみたり、本屋大賞に選ばれた小説を第一回受賞作から片っ端に読んでみるのもいいでしょう。あるいは、料理のレパートリーを増やしたりYouTubeの投稿を始めてみたり。なんでもいいので興味があることにチャレンジしてみるといいと思います。要は、自分の努力次第で進歩や上達、成果が変わるものに意識を向けて、それに取り組んでみることです。

また、今現在の困りごとにフォーカスするなら、混雑した電車に乗ると気分が悪くなったり恐怖を感じるという方が非常に多くいらっしゃいます。そこで「電車に乗れないから会社に行けない」「会社は辞めなきゃならないかも」と後ろ向きの考え方をするのではなく、ラッシュにぶつからないように時差通勤するなど、自分でコントロールできる働き方にシフトして、コロナと共存しながら仕事を続けることが大事です。

コントロールできことに意識を向けウィズコロナを乗り切る

会社はどんなサポートをするべきでしょうか?

コロナブルーで会社に行けなくなってしまう。こうした方は今後増えてゆく一方で、その対策については会社のほうでも慎重に考えなくてはなりません。一般的な抑うつ状態の方が職場復帰するときには「復職支援プログラム」でサポートするケースがほとんどです。プログラムの内容は会社によってそれぞれですが、要は「リハビリ期間を設けましょう」というのがプログラムのコンセプトで、それと同じようなものがコロナでも求められることになるでしょう。

従業員のココロの不調が改善されても、すぐに会社のルールに合わせて勤務させようとしてはダメです。あくまでも当事者の状態や状況を鑑みて、半日勤務や午後出社など、働き方を柔軟に選択できる猶予期間を設けることが絶対に必要です。繰り返しになりますが、急激な"変化"はストレスの原因になるので、緩やかな変化の中で会社に戻ってきてもらえるような仕組みやルールづくりが必要になってくると思います。

復職支援プログラムでサポートすることが重要

Point産業カウンセラー・大野萌子さんからの
メッセージ

今のコロナ不安は、ワクチンや治療薬が完成しない限りは完全に払拭することはできないでしょう。結局のところは、誰に何を言われようと「どうにもならない不安が残ってしまう」という方もきっと少なくないはずです。ただ、何も手を打たずに、というより行動せずに不安や恐怖と向き合っていたら、それらは増殖してゆくばかり。ただステイホームしていても何一つ改善されません。自分でコントロールできるものに目を向けて、それに夢中になって取り組むことができれば、コロナブルーの深みにはまらず、また不安解消の兆しも見えてくるはず。ワクチンや治療薬ができるまでは、これが唯一の対処方法だと思います。

取材協力:一般社団法人 日本メンタルアップ支援機構
東京都中央区銀座1-3-3 G1ビル7階
https://japan-mental-up.biz/
無題ドキュメント
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■記事公開日:2020/06/12 ■記事取材日: 2020/06/05 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼イラストレーション=吉田たつちか

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