知らない相手と話すのが怖い
2020年5月に総務省が公開した『通信利用動向調査』によると、固定電話の保有状況は全世帯平均が69.0%で、そのうち、50代世帯が83.1%、40代世帯65.6%、30代世帯でぐっと下がって19.6%、20代世帯に至ってはわずか5.1%と、家庭における固定電話は、次第にその影を潜めつつあります。こうした傾向は、若年層になればなるほど固定電話を使った通話コミュニケーションの経験値が低く、「電話を取り次ぐ」「伝言を受ける」といった基礎的な電話応対を経験しないまま社会に出る若者が多い裏付けになっていると考えられます。
もはや電話は"迷惑ツール"なのか
多様化する現代のコミュニケーションツールの中で、こちらの都合に関係なくかかってくる電話を"迷惑なツール"とする向きがあります。仕事中でも仕方なく手を止めて、差し迫ったことでもない話題を一方的に聞かされれば誰だって「イラっと」するはずです。簡単な連絡や報告ならショートメールで済みますし、カジュアルな話題ならLINEのスタンプで十分です。こうした考え方の延長で、少し込み入った仕事の話題であっても「電話よりもメールでやり取りしたい」というイマドキ社員が少なくありません。
それでも新人に電話を取らせるべきか
「今や、電話を取るのは新人の仕事だなんて時代遅れ」という風潮も確かにあります。しかし、仕事の基本として、電話応対は対外的なトレーニングになります。クライアントや協力会社の名前を覚えたり、相手の話しぶりをベンチマークすることで、社会人としての常識やビジネスマナーを身につけることもできます。いわば、「電話をとることは成長への近道」という発想で、新入社員が積極的に電話を取ることを奨励している会社も少なくありません。基本的には私もこうした意見に賛成です。
かたや、新人に電話応対を任せることでトラブルが起きても困るし、固定電話恐怖症になって会社を辞められても困る。したがって、新入社員には電話を取らせないという会社もあります。外線電話専用の窓口番号を設けて、ファーストコンタクトの応対は専門の業者さんに任せる会社も増えています。
内線電話がかけられず給湯室へ
コロナ時期ということもあり、今年は新入社員のカウンセリングを1対1のZoomでやりました。基本的な決め事としては、カウンセリングの当日に、人事の担当者にどこの会議室が空いているかを内線電話で確認して、そこに移動してZoomミーティングにアクセスすることになっていました。ところがです。ある新入社員が会議室ではなく給湯室からアクセスしてきたのです。理由を聞くと「内線電話のかけかたが分からなくて、周りの人にも聞けなかった」ということでした。
普段のコミュニケーションから見直す
トレーニングを始める前の準備運動として、まず、電話機の基本操作を教えなくてはなりません。保留や内線の取り次ぎなど、慣れてしまえば簡単なことでも新人にとってはここが最初の壁になります。さらに、電話応対に必要なアイテムの準備が必要です。忘れてならないのはペンとメモ用紙。電話はメールのように記録が残らないため、情報を正確に伝えるためにメモをとることは必須です。さらに、取り次ぎの際に手間取らないよう、社内の内線番号表を手元に用意しておくと電話を保留してからスムーズに取り次ぎができます。以上のことが疎かだと必ずミスが起こります。