埋めるのは難しい?若手との溝
企業の新入社員カウンセリングで、「上司から飲みに誘われたらどう思うか」といった意識調査をしたところ、約8割の人たちが「行きたい」と答えました。これは、世間一般で言われる「上司と部下の溝」とはズレがあって意外でした。若者視点のネット情報には、『上司から誘われて関係を壊さず断るには』といった記事があふれていて、さまざまな断り方のテクニックが紹介されています。しかし、すでに折り合いの悪い上司がいる人は別として、それ以外は「誘われると嬉しい」というのが現実のようです。
自己開示できて共感的であること
とはいえ、「若手の考えていることがどうしても理解できない」といった声が企業のチームリーダーの間から聞こえてきます。私自身、若手社員をカウンセリングしていると思考の違いを痛感し、呆気にとられることがままあります。とはいえ職場においては部下としてつけた以上、彼らからの信頼を得て、一刻も早く戦力になるようマネジメントするのがリーダーの仕事です。こうしたことを念頭に置くと、求められるリーダー像とは「上手に相互交流ができる人」ということができるでしょう。そしてそのためには、リーダー自身が自己開示できて共感的であることが条件になります。
コロナ禍で求められるリーダーシップ
コロナでリーダーの在り方も変わりました。正しく言えば、基本的なスタンスは変わらないけれど、より"繊細さ"が求められるようになったと思います。たとえば、交代勤務などで顔を合わせる頻度が少なくなったり、リモートで繋がっている時間しか話ができなかったりと、今は、オフィスワークと比べて接触時間が極端に短くなっています。こうした状況においてリーダーには想像力が不可欠です。
会話を重ねてメンタルリスクを早期発見
接点が持ちにくいこの時期のコミュニケーションは、上司からの積極的な声掛けが大事です。「相談がないから大丈夫だろう」で放っておくのが一番危険で、メンタル的なことで部下のほうから上司に相談しに来た時は、既に深刻な状況まで追い込まれているケースがほとんどです。電話でもリモートツールでも、どんな方法でもいいので、細やかに接する機会を設けて欲しいと思います。会話が途絶えるとメンタル不調に陥る人がこの先どんどん増えることが予想されます。このあたりは今のリーダーの大事な役割と言えるでしょう。
ゆとりがなければ繊細な接し方はできない
メンタルリスクは、リーダーにも同じように(或いはそれ以上に)あります。プレーヤーとして能力が高い人が、必ずしも良いリーダーになるかといえばそんなことはありません。往々にして優秀なプレーヤーほど「他人の力を借りる」という発想ができずに、あれもこれも自分一人で背負い込んでしまいがち。結果、常に忙しくて、部下の粗ばかりが目について負のスパイラルに巻き込まれています。ゆとりがなければ、人に対して繊細な接し方はできません。したがって、リーダー自身のストレス解消がとても重要です。