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Vol.26苦手な人との付き合い方

職場や取引先に苦手な人がいる。けれど「仕事だから無視するわけにはいかないし...」と悩むビジネスパーソンが少なくありません。厄介なのは、その人が"イヤな人"というわけではないのだけれど、なんとなく鬱陶しく思ったり、近寄りがたさを感じてしまい「この人は苦手」というレッテルを脳が勝手に貼ってしまうケースです。
いったん「苦手」と脳が判断してしまうと、「嫌い」という偏見で相手を見るようになります。その結果、ますます苦手意識が強くなり仕事に行くのが憂鬱になります。このように、「苦手意識のある相手」とはどのように接すれば良いのか?テレビや社会人向けオンライン研修で大人気の公認心理師・産業カウンセラー大野萌子先生にアドバイスをしていただきました。

「苦手」と感じるのは"潜在意識"が関係している

「この人が苦手」という感情は脳の勘違いである場合があります。相手に問題があるわけではなく、自分の奥深くに隠れていた「潜在意識」が大きく影響していることが少なくありません。
例えば......

●子どもの頃に意地悪をされた同級生に似ている
●学生時代に叱られた先生と話し方がそっくり
●前職でパワハラを受けた上司と好きなブランドが同じ

など、自分が持っている過去の脳内データと結びつくことで、無意識に「苦手」と脳が感じてしまうケースもあるのです。したがって「なんとなく苦手」と思ったときは、まず「悪い記憶」のフィルターを取り払い、その人自身に意識を向けて「具体的にどこが苦手なのか」を冷静に考えてみることが必要です。
その上で"確固たる苦手意識の理由"がある場合は、それを相手に伝えることです。
「なぜ苦手か」に目を向け、気持ちを率直に伝えてお願いする

●過去にトラブルがあったなら「今回はこのように進めたいです」と伝える
●嫌な思いをした経験があるなら「別の方法でお願いできないでしょうか」と伝える

このように自分の気持ちを率直に伝えてお願いするのが良いでしょう。
もちろん、それで改善されるか否かは相手次第です。ただ、訳もなく相手に対する印象だけで「苦手」と思い込んでいたり、理由を明らかにしないまま苦手意識を抱いていると、関わる度に嫌な気持ちが強くなります。早めに「なぜ苦手なのか」に目を向けて、その人との向き合い方を改善することが良策です。

ボーダーラインを設けて、細く長く付き合う

特定の人に対する苦手意識だけでなく、自分の気持ちを表に出せずに"居心地の悪さ"を感じている人がとても多くいらっしゃいます。このようなタイプの人に多いのが、他人の頼み事をなんでも受け入れてしまう「他者優先」の思考です。
組織やコミュニティの中でストレスの少ない人付き合いをしていくためには、適度な距離感を保つことです。自分の許容範囲を知り、そのボーダーラインを超えた要求には「NO」と言うこと。そして「断ること=悪いこと」と考えるのではなく、「断ることも大事なコミュニケーション」と捉えることです。

「自分のボーダーライン」をはっきり示す
小さな組織やコミュニティでは、頼まれ事を断るのは勇気がいるかもしれません。しかし「自分のボーダーライン」を持っているほうがネガティブにならずに済みますし、細く長く人付き合いができるのも事実です。
その場合、相手に対する接し方としては...

「全部はできませんが、ここまでならできます」
「夜の会合は行けませんが、午前中は出席できます」

など、すべてを拒絶するのではなく、自分にできる範囲をはっきり示すことです。自分の都合や気持ちを無視してまで他人に合わせていると必ずどこかで歪みが出てきます。そうならないためにも、程よいところで線引きをして心地良い付き合い方を探りましょう。他者を優先することは素晴らしいことですが、自分自身を大切にすることも忘れないでください。

どうしても合わない人とは距離を取る

ときには「何を話しても意見が一致しない」「関わると仕事がスムーズに進まない」など、良好な関係を築けない相手もいます。その場合は物理的に距離を取ることです。「仕事では、苦手な人でも良い関係性を保たないといけない...」と考える人が多いと思いますが、苦手意識を持つ相手の顔が見えるだけで心が乱れ、仕事に集中できなくなる人もいます。こうした場合は決して無理をする必要はありません。
もちろん社会人として最低限の報告・連絡・相談は必要ですが、「極力接点を少なくする」「対面する機会を減らす」「他のメンバーを介して伝えてもらう」など、物理的な距離を確保しましょう。それが自分の気持ちを穏やかに保ちメンタルを安定させる秘訣です。
私がこれまでカウンセリングしてきた方の中で、オフィスのレイアウト変更を機に「苦手だった人と物理的な距離ができて気持ちが楽になった」という方もいらっしゃいました。
パーテーションを設置する、座る位置を変えるなど、苦手な人を視界に入れないようにするだけでも効果があります。近年、多くの会社が導入し始めているオフィスのフリーアドレス化なども有効な施策といえるでしょう。フリーアドレスの環境では固定の席がないため、特定の人と距離を置くことができストレスを軽減する効果もあります。
苦手な人は距離を取る・視界に入れないことで気持ちが楽になる

Point公認心理師・大野萌子さんからの
メッセージ

人間関係が上手くいっている人は、困ったときにサポートしてくれる人が多いため仕事が上手くいく傾向にあります。つまり、人付き合いが上手なほうが仕事も精神面もプラスに働く効果が期待できます。だからといって「苦手」を「好き」に変えるのは困難です。そもそも仕事上の関係性でそこまでの気持ちの変化は必要ありません。肝心なのは「苦手な人を理解して受け入れる」ことに他なりません。
これは、多様化が言われるいま「異なる価値観を受け入れる」ことと同じです。そして、多くの価値観を受け入れられる人は好感を持たれます。つまり、苦手な人と付き合うことは悪いことばかりではなく、自分の内面と向き合い、他人からの見られ方を変えるきっかけにもなります。無理をして相手に寄り添う必要はありませんが、先入観は行動力の邪魔をします。
いかがでしょう、皆さんは職場に「苦手な人」はいませんか?
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■記事公開日:2024/12/24 ■記事取材日: 2024/12/14 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼イラストレーション=吉田たつちか

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