オフィスデザインの進化形の一つであるアジャイルオフィス。これまでの働き方にとらわれないオフィス形態として注目されています。アジャイル(迅速な・素早い)オフィスとは、業務内容に応じたレイアウト変更が簡単にできるオフィス計画のことを言います。
例えば、最新の『オフィス探訪』で紹介したクラウドサーカス株式会社では、ソフトウェアの開発案件別にスタッフの顔ぶれを変えてチームビルディングするため、手軽に新チームのデスクレイアウトができるようアジャイルオフィスを導入しました。社内アンケートでは、オフィスに対する満足度は約80%で、半数以上の社員が「コミュニケーションが取りやすくなった」と回答したそうです。
固定席で仕事をするオフィスの場合、新たにチームビルドしようとする場合は、大掛かりなデスクの移動などが必要になり、業務に支障が出るのがネックになります。
その点、アジャイルオフィスでは固定席を設けず、誰でも簡単に動かせるキャスター付きのデスクやチェアが利用され、新しいプロジェクトが立ち上がると、そのチームに相応しいデスクレイアウトへの組み直しが迅速におこなわれます。もちろんチーム編成がたびたびあっても業務が滞るようなことがありません。
先に記したクラウドサーカスでは、業務への取り組み方自体を「アジャイル開発」と呼んでおり、細かくアップデートを繰り返しながらソフトウェアの完成形に近づけていくそうです。オフィスも同様、案件の内容を鑑みたり、スタッフの声を参考にして、その時々でベストと思われるオフィスのカタチに変えていくことが、モチベーションや生産性を上げるポイントになるそうです。
アジャイルオフィスは、出社人数に応じて、デスクやチェアの増減が容易なため、テレワークなどの新しい働き方にも親和性があります。今後さらにテレワークをおこなう社員が増えていけば、オフィスに在席している社員の使い勝手に合わせて、その都度デスクの配置が変更されることになるかも知れません。そうした場合もアジャイルオフィスが導入されていれば容易に実現できます。
様々な利点があるアジャイルオフィスですが、導入にあたっては、その目的を明確にすることが肝心です。導入目的を社員一人ひとりが理解していないとメリットを生かしきれません。例えば、「せっかくフリーアドレスを導入したのに、毎日同じ席に座る社員がいる」と悩む企業があります。こうした事が起こらぬよう、社内研修などを通してアジャイルオフィスの導入目的を共有することが大事です。特に、従来のオフィス形態に慣れ親しんだベテランはアジャイルオフィスに適応するまでに時間がかかるはず。アジャイルオフィスを成功させるためには、設備や環境を用意するだけでなく、社員の意識を変える努力も必要です。
■記事公開日:2022/08/12
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=PIXTA AdobeStock