5月29日、群馬県高崎市と栃木県佐野市で、今年初めて最高気温が35℃を超える猛暑日となりました。5月から猛暑日となるのは3年ぶりのことで、今年の夏は例年以上の気温上昇が見込まれています。気温上昇の原因の1つが、森林破壊により地熱のコントロールができなくなる地球の温暖化です。環境省によれば、このまま温暖化が続けば、やがて世界の平均気温は最大6.4℃上昇して北極海の氷が消滅。予想を超えた異常気象が起こるリスクもあるそうです。こうした状況に歯止めをかけるために、企業での取り組みが期待されているのがFSC森林認証紙(以下FSC認証紙)や、関連製品のオフィス利用です。
FSC認証紙によって生産される製品には、コピー用紙、ノート、ティッシュペーパー、紙ハンガー、紙ストロー、容器ラベル、段ボール等があり、これらの導入企業は、環境保全に前向きで、SDGsへ積極的な取り組みをおこなう優良企業と評価され、CSR(企業の社会的責任)の観点からも注目され始めています。
FSCとは、管理された森林から供給される木材(適正に伐採された木材)であることを認証する制度のことで、26カ国の環境NGO・林業者・林産物取引企業者などが中心となって設立された、森林管理協議会(Forest Stewardship Council)の略称です。認証するに相応しい紙(及び紙製品)には、5年間有効な認証書とFSC認証マークが付与されます。実は、この認証マークが環境保全やSDGsへの取り組み認知以外に、ビジネスにも実利的なメリットをもたらす可能性を秘めているのです。
例えば、名刺や社封筒、会社案内などのビジネスツールの片隅にFSC認証マークが付いていれば、自治体の入札評価に影響することが考えられます。入札評価や購買調達基準は、環境配慮促進法やグリーン購入法などの影響を受けるため、FSC認証紙を積極的に使う企業として、有利になる可能性があります。更には、リクルーティングにおいても意識の高い応募者に対して好印象を与えることが期待出来ます。
ここ近年はFSC認証を受けた紙や製品を導入する企業が増えました。花王、イオン、キリン、無印良品、ユニクロ、スターバックスコーヒー、イケアジャパン、日本生活協同組合連合会、日本マクドナルドホールディングスなどそうそうたる大企業が名を連ねていて、追従する有名企業も加速度的に増えています。その一方で、国内企業の9割以上を占める中小企業においてFSC認証紙を導入しているのはほんの一握り。企業ベースの取り組みで、微力ながらも森林保護、延いては地球の温暖化に歯止めをかけるためには、さらに多くの中小企業の皆さんが、オフィスにFSC認証紙や関連製品を導入して、環境保全への興味喚起とCSRに対する意識強化を全社的に図っていくことが必要です。
コロナ禍の2年半、デスクの間仕切りやアクリルパーテーションの設置といった非接触型オフィスの実現や、テレワークや時差出勤の導入など、私たちのビジネススタイルは大きく変わりました。それは、なかなか進まなかった"中小企業の働き方改革"を加速させることにもつながりました。つまり「やれば出来る」ことを私たちは知ったのです。地球温暖化への取り組みも同様で、FSC認証紙の導入はその第一歩になるはずです。まずは御社でも、コピー用紙あたりから見直しを検討してみてはいかがでしょうか。
■記事公開日:2022/06/27
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=PIXTA AdobeStock