誰もが予想していた通り、2021年1月8日に東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象として2度目の『緊急事態宣言』が発出されました(1月14日からは11都府県に拡大)。これに伴い政府は、不要不急の外出自粛を呼びかけるとともに、企業に対してテレワークやローテーション勤務などの実施によって、オフィスで働く人員を7割削減するよう要請しました。さらに東京都では、1月8日から2月7日までを『テレワーク緊急強化月間』と定め、「ぜひとも、出勤者数の7割削減を目指していただきたい」と嘆願。連日会見に臨む都知事の表情からは、焦燥感と疲れ、そして苛立ちのようなものが日を追うごとに感じ取れるようになってゆきました。
多くの人が当事者意識をもってテレワークを考えたのは、昨年の緊急事態宣言の時です。日本生産性本部が昨年5月におこなった調査では、約41%(1都3県)の企業がテレワークを実施していましたが、宣言が解除されるとともにオフィスに人が舞い戻りました。
テレワークが定着しなかった理由は、さまざまな意味で "家庭の事情"が大きかったようです。中でも、「小さな子どもがいるので簡易的にパーテーションを設けても仕事に集中できない」、「家庭の机や椅子では長時間の作業は辛い」といった声が顕著でした。仕事環境を整えるための補助金制度を設けた企業もありましたが、「補助金でオフィスチェアを購入したら家族から邪魔者扱いされて肩身が狭い」などといった声すらあったほどです。また『テレワーク難民』などという言葉が聞かれるようになったのもこの頃です。
国や自治体のリーダーたちは「出勤者数の7割削減」を求めていますが、さまざまな事情で「家では仕事の生産性が上がらない」というのが実情で、それを裏付けるように22日に発表された調査結果では、実施率が約33%と昨年5月を下回っています。
そんな中、いち早くテレワーク難民たちの救済に乗り出したのがカラオケボックスです。ひと頃は閑古鳥が鳴いていたカラオケボックスですが、いま、大手カラオケチェーンのほとんどは「テレワークプラン」を設けていて、飛び込みでは入店できない店があるほど人気です。密室なので集中して仕事ができますし、Wi-Fiも自由に使えてインターネット環境も万全。他人の目を気にする必要がないため電話やオンライン会議などにも最適です。さらに、ほぼ全てのカラオケ店がフリードリンク。料金も1時間あたり300円前後と格安で、中には1か月の「貸し切りのプラン」を打ち出している店もあります。
カラオケボックスのほかにも、ビジネスホテルが部屋をサテライトオフィスとして利用してもらう「テレワーク応援プラン」を設けるなど選択肢の幅が広がっています。一例を挙げると、東京都立川市の「東横INN立川駅北口」では、都内在住・在勤の人を対象に、"500円deデイユースシングル"というテレワークプランを設けていて、8時から23時までを1室わずか500円で利用することが可能(2月18日まで)。机も椅子もオフィスと同等とまではいきませんが、快適な環境で仕事をすることができそうです。
テレワーク難民の受け入れ先が増えることは当事者にとっては有難いことですが、感染対策の視点から求められている「出勤者数の7割削減」に対して、テレワークの実施率が約33%というのは由々しき状況です。テレワークに強制力はありませんので各々の企業判断ということになりますが、だからこそ、再度気を引き締め直し、ウィズコロナに相応しいオフィスの在り方を考えてみることが必要ではないでしょうか。
■記事公開日:2021/01/27
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=PIXTA