今年の夏も厳しい暑さとなりそうです。昨年は、浜松市が最高気温41.1度を記録して、熊谷市の日本最高気温に並びました。しかし今年は、例年よりもひと足早い梅雨入りが予測されており、これまで以上に"じっとり暑い夏"になるとも言われています。
空調メーカーの大手ダイキン工業が、東京で生まれ育った男女500人を対象におこなった『令和元年東京の夏の空気感調査』によると、ここ近年の東京の夏は、43.6%が「耐えられないくらいの暑さ」、21.6%が「命の危険を感じる暑さ」と回答していて、なんと6割以上の人が、夏の東京は深刻な暑さで、「とても仕事どころではない」と感じていることが分かりました(図1参照)。
湿度の高い時期は、体温調節機能が低下して熱中症の危険性が増加したり、体内に熱がこもって体力の消耗が早く、ダルさを感じやすくなって仕事に向かう気力が低下します。したがって、湿度75%を超える不快日が連日続く各都市圏エリアでは、適切な湿度管理にもフォーカスしたオフィス計画が求められます。
その指標となる室温や湿度については、労働安全衛生の観点から法律で基準が設けられていて、空調設備を設けているオフィスでは、室温が17℃以上28℃以下、湿度については40%以上70%以下にすることを努力義務として定めています。したがって一般的な目安としては、室温24℃から27℃、湿度50%から60%くらいに保てるよう計画すると良いでしょう。
さて、そこで問題になるのが"換気"です。新型コロナウイルスへの対策として関心が高まった換気ですが、実は、コロナ以前に設置されたビル空調(業務用空調を除く)の多くには換気機能が装備されていません。仮に機能があったとしても、2020年に厚生労働省が新たに示した換気量(30㎥/h×人数)を満たせていないものがほとんどで(御社の空調設備もぜひ確認してみてください)、換気をおこなうためには、小まめに窓やドアを開けて自然換気をする必要があります。
ただ、真夏の炎天下に窓を開けることは、「湿気を含んだ外気をわざわざ室内に取り込むようなもの」といったマイナスイメージがあるため、厚生労働省が推奨する"30分おきに1回5分の窓開け換気"は逆効果と考える人が多いようです。しかし、その認識は間違いで、オフィスのような広い空間で湿度対策をおこなう場合は、やはり自然換気が有効です。
そもそも、エアコンをかけているのに涼しくならないのは、人の出入りなどでオフィスに忍び込んだ外気が熱だまりをつくり、それを上手く逃がすことができないことに原因があります。そうした熱気を逃がしつつ換気をおこなうためには、必ず2カ所以上の窓やドアを開けて"空気の流れ道"をつくることが肝心。さらにその場合は、キャビネットや書棚などの扉も全開にして、細部に滞った熱気も外に逃がしてあげることが、オフィスを換気しながら湿度対策をおこなう最善策です。御社でも今年の夏は、オフィス内の湿度に着目して、正しく自然換気をおこなってください。
■記事公開日:2021/05/27
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=AdobeStock