米国シリコンバレーのGoogle本社は、従業員に対してオフィス勤務に戻るよう義務付ける期日を2022年まで延期することを明らかにしました。これは、新型コロナウイルスがいま尚世界各国に拡大し続けていることを受けた措置で、同様に、Apple、Facebookも2022年1月からのオフィス再稼働を発表しています。これに対して多くの日本企業が敏感に反応。来年初頭からは2年近くに及ぶリモート期間に終止符を打ち、各地のオフィス街はビジネスパーソンたちで活況を見せ始めることになりそうです。
こうした流れがある一方、日本生産性本部がテレワーカーを対象におこなったアンケートによれば、「コロナ収束後もテレワークを行いたいか?」の問いに、「そう思う」と回答した人は28.6%で、「どちらかといえばそう思う」は45.5%。両者を合わせたテレワークを望む割合は74.1%であることが分かりました。
コロナ禍によって私たちの働き方は大きく変わり、自分なりの働き易さのスタイルを身に付けた人も少なくないはずです。しばらくの間は、3密を避けたり、オンラインツールを活用しつつ仕事をおこなう必要があるでしょうし、社員の要望に応じてオフィスのレイアウト変更が余儀なくされることも考えられます。
これまで私たちは、ごく一般的なデスク配置の"アイランド型レイアウト"に何の疑問も抱かず身を置いてきましたが、アイランド型はスペース効率が良い反面、創造性を刺激したり、生産性を追求するようなオフィスデザインではありません。
また企業の視点もこれまでは、「どんな環境ならより良い成果が出せるか」と、オフィスの在り方を事業戦略の1つとして考えることはありませんでした。それがコロナ禍で"多様な働き方"を経験した人たちがオフィスに戻り、柔軟かつ可変性の高いオフィスの必要性が示されてゆくことになるのだろうと思います。
社員やパートタイマーといった社員区分を撤廃して、全スタッフを「正社員」とし、いち早く「同一労働同一賃金制度」を導入して話題となった大手クレジットカード会社では、大規模な「オフィス改革」にも着手して成果を挙げています。変革のキーワードは、「オフィスのペーパーレス化」、「電話のスマートフォン化」、「デスクトップPCからノートPCへ」などの3つ。これらの条件がクリアできれば、あえて固定席を設けずとも、好きな場所が"自分の席"になるといったコンセプトです。
キャビネットで仕切られたオフィスでは、人が異動するたびに大掛かりな"紙文書の大移動"も強いられるため、人員の増加や変動に柔軟に対応できませんでした。ここに文書管理システムを導入して紙文書を電子化したことで、オフィスで幅を利かせていたキャビネットがなくなりスマートな文書保管とスムーズな閲覧が可能になりました。特に、コロナ禍でリモートワークとなった社員は、自宅からでも社内文書にアクセスできるなど、この仕組みが大いに活かされたそうです。
2022年からは、これまで当たり前だった働き方が過去のものとなり、オフィスはあらゆる見直しがおこなわれ、最適化されてゆくことになると思います。もしかするとアフターコロナの時代においても、働き方はドラスティックに変化してゆくかもしれません。御社はその変化を受け入れる心構えがありますか?
■記事公開日:2021/10/06
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=AdobeStock