Amazonの米国本社では、創業当時から従業員がペットをオフィスに連れて来るのを認めていて、今では企業文化として定着しているそうです。近年はAmazonに限らず、Googleや民泊情報サイトを運営するAirbnbなどでも積極的にペットフレンドリーな制度を導入しており、仕事の付加価値を高め、生産性を向上させる取り組みとして"オフィスに動物がいる環境"をベンチマークする企業が増えています。
世界最大の動物病院バンフィールド社の調査では、ペットフレンドリーなオフィスは、幸福感が高まってストレスが低減したり、人間関係を良好にするなど、単なる癒しを越えてさまざまな効果をもたらすことが報告されています。こうしたことから、日本以上にストレスフルなアメリカでは、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを目指す『ウェルビーイング』を重視したオフィスづくりがトレンドになりつつあるようです。
働き方改革に加えて長引くコロナ禍により、日本のオフィス環境もさまざまに変化していますが、犬や猫の同伴が認められている企業はまだまだ多くありません。一番の理由は、賃貸マンションでもペット可の物件が少ないように、多くの賃貸オフィスではペットの飼育が認められていないからです。同じビル内で動物嫌いの人がいたり、ペットアレルギーがあったり。さらには、鳴き声や匂いで近隣のテナントとトラブルが発生することも考えられます。
そこで、日本でも導入しやすい(オフィス内飼育の許可が得やすい)ペットフレンドリースタイルとして注目されているのが、熱帯魚の飼育です。気持ちが塞ぎがちなコロナ禍にあって、熱帯魚飼育の需要は右肩上がりで、90年代に巻き起こったグッピーブーム、2000年代の海水魚ブームに続き、2020年以降はアクアペットブームが再到来。水槽のリース・設置事業者が急増しました。
多忙な業種ほど無機質になりがちなオフィスですが、熱帯魚の水槽を配置することで有機的な要素が加わり、オフィスに華やぎが生まれます。熱帯魚は犬や猫のように直接触れることはできませんが、愛嬌たっぷりに餌をねだる様子を見ていると心から癒されます。そして、"もの言わぬ生き物"を世話することで、どう接すれば相手が喜ぶかを考えるようになり、スタッフ間の円滑なコミュニケーションが期待できます。
犬でも猫でもなく、熱帯魚でもないペットフレンドリースタイルの第3極が、エンターテイメントロボットです。「なんだ、ただのオモチャじゃないか」と思われる方もいるでしょうが、それは大きな誤解です。近年はさまざまなタイプのペット型ロボットが販売されていますが、子供のおもちゃとしてだけではなく、ペットを飼うことができないご家庭や、病院、介護施設などでもセラピー効果を期待して利用されています。
その中でも秀でているのが、自律型エンターテイメントロボット『aibo(アイボ)』です。aiboは、ソニーが1999年から販売しているペットロボットですが、2018年に販売されたaiboは、体内に組み込まれたAIが飼い主とのやりとりを学習して、それぞれの個性を持って成長していき、日々、コミュニケーションの幅を広げていきます。それはまさしく生きたペットと相対する感覚で、「ロボット」という言葉からくる無機質な印象とは全くの別物です。
以前しばらくリースしたことがありますが、生体と異なるのは手触りと俊敏な動きだけ。日本においてペットフレンドリーなオフィスを実現するには、aiboは最も相応しい相棒なのかも知れません。
■記事公開日:2022/11/01
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=AdobeStock