働き方改革を進めるなか、近年クローズアップされている『健康経営』は、社員の健康管理を経営の視点で戦略的に取り組もうという新しいマネジメントメソッドです。健康経営を実現するためには、ココロとカラダの健康を維持するオフィス環境(ウェルネスオフィス)の構築が不可欠です。その具体的な施策として、場所や時間を選んで働けるABWの導入やリフレッシュできるカフェスペースの設置、社員同士のコミュニケーションを活性化するコミュニティスペースの設置などが挙げられますが、そうしたなかでも"オフィスの緑化"は最も実行しやすく効果的な手法として注目されています。
植物は二酸化炭素を取り入れ酸素を輩出する光合成をおこなうため、オフィスに観葉植物を置くとナチュラルな空気清浄がおこなえます。また、観葉植物は吸収した水分を葉から蒸散する作用があり、エアコンで乾燥しがちなオフィスに潤いを与え快適性を向上させます。このようなことから、受付やデスク周り、さらには会議室やコミュニティスペースなどに植物を置いて緑の多いオフィスに生まれ変わらせることで、さまざまなウェルネス効果が期待できます。
植物が人に与える影響について多角的な研究をおこなっている千葉大学は、植物が身のまわりにあるオフィスでは働く人々の環境満足度が満たされ、仕事へ向かうモチベーションが向上することを突き止めました。
加えて、疲労やストレスが軽減されることも確認されています。さらに、デスクに花を飾ると心身をリラックスさせる副交感神経の働きが29%アップし、ストレスがかかった時に優位に傾く交感神経の活動は25%ダウンして、不安や怒り、敵意や緊張が大幅に低下するという結果も得られています。植物はまさしく"グリーンサプリメント"であり、オフィスの緑化は単なる見栄えの良さだけではなく、作業効率を改善して生産性の向上に繋がることが科学的に立証されているのです。
ただし、オフィスに植物を取り入れる場合に注意しなくてはならないのが、なるべく手のかからないものを選ぶことです。植物の種類によっては水やりを頻繁におこない、温度管理や害虫駆除などが必要になる場合もあります。また、落葉の清掃や剪定なども時期によってはしなければなりません。全てを業者任せにすることもできますが、当然ながら費用が発生します。オフィスの緑化で一番のネックになるのはこの点で、緑化に取り組んだのはいいけれど、世話を途中で放棄された観葉植物たちが片隅に押しやられて枯れている。そんなオフィスも少なくありません。
そこでお勧めしたいのが、フェイクグリーン(人工観葉植物)です。フェイクグリーンの精度は年々向上しており、実際に触ってみないと本物なのかフェイクなのか全く判断がつかない(触っても分からないものもあります)ほど精巧で、種類も豊富です。人工植物なので当然ながら光合成はおこなわれず、オフィスの空気環境に好影響を与えるものではありません。しかしながら、緑があるオフィスは落ち着いた雰囲気を創出するため、安らかな気持ちにさせてくれる点は本物の観葉植物と変わりありません。
■記事公開日:2024/02/26
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=Adobe Stock