少子化が進む今、その煽りを受けて激しい競争を強いられるのが進学塾業界です。東京商工リサーチの調査によると2023年の進学塾の倒産件数は前年比28.5%増と過去20年間で最多。市場が拡大(新しい塾が増える)する一方で、進学実績や指導方法、学習環境などに特長を示せない塾の生き残りは厳しさを増しているといいます。
そうしたなか、生徒や保護者にアピールする特長の1つとして「フレグランス」を導入して差別化を図ろうという塾が増えています。ここでいうフレグランスとは植物由来の天然香料アロマオイルの香りのことで、アロマを置くことで交感神経を優位に傾け、集中力を高めて学習効果の向上が期待できるそうです。
香りをもって能率を上げる。これについてはビジネスシーンでも実践され始めています。職種にもよりますが、内勤の社員にとってオフィスは1日の3分の1以上の時間を過ごす場所になります。異なる仕事観の人たちと働くことでプレッシャーを感じたり、オフィス内での飲食のニオイが気になったり。蓄積されるストレスを解消するアイテムとしてフレグランスを取り入れる会社が増えているのです。
オフィスに香りを取り入れる利点はどのようなものがあるのか。アロマセラピストの野田薫さんは次のように話します。
「嗅覚は情動感情を司る脳の一部の扁桃体(へんとうたい)に直接伝わるため、香りが人に与える影響は大きく、感情や行動を左右します。たとえば、鰻を焼く匂いで急に食欲をそそられることがあるようにオフィスに漂う香りも仕事に向かう動機付けになったり、モチベーションに繋がることが期待できるのです」。
では実際にオフィスでアロマを活用するには、どのような方法があるのか。
野田さんにアロマを香らせるお勧めの空間と、目的に沿ったアロマについて説明していただきました。
執務エリアには「ハーブ系アロマ」を香らせ、集中力を高める
脳を覚醒させる効果があるとされるのがハーブ系の香りです。作業効率や業務効率をアップさせて生産性を向上させたい執務エリアには、集中力を高める効果が期待できる「ハーブ系アロマ」を香らせると良いでしょう。アロマディフューザーを使えばオフィス全体にハーブの香りが行き渡ります。手がけている仕事が佳境に入った時や、「集中力がなかなか続かない」と感じた時などにはぴったりのフレグランスです。
会議室には「シトラス系アロマ」を香らせ、決断力を高める
意思決定や情報共有をおこなう際に欠かせない会議ですが「会議の時間が無駄に長くなる」というのは改善すべき問題です。こうした時は、目の前の課題に集中するだけではなく気分転換をしてリラックスする瞬間も大切です。話が煮詰まってなかなかまとまらない会議には、ぜひ柑橘類の果実の果皮から抽出された「シトラス系アロマ」を香らせてみてください。気分が前向きになり、決断力を高めるのに効果的です。
エントランスには「フローラル系アロマ」を香らせ、緊張をほぐす
来社されたお客さまに好印象を与えるためには、エントランスで「フローラル系アロマ」の香りを漂わせることが効果的です。フローラル系のアロマは花から抽出しているためほんのり甘く華やかで、リラックス効果と、緊張をほぐしてくれる作用があり、お客さまへの「おもてなし」の演出をすることができます。また、応接室に用いれば、お互いの緊張がほぐれやすくなり商談がスムーズに進む手助けになります。
さまざまなプラス効果が期待できるフレグランスオフィスですが、それを具現化するためには社員の合意が欠かせません。なぜなら、香りの好き嫌いは人によって感じ方が異なるからです。しかもその差異はかなり大きなものがあり、職場の香りをめぐっては「香害(こうがい)」などという造語があるほどです。
また、ごくまれにアロマオイルの精油成分が体質的に合わない人もいます。
だからこそまずは、全ての社員にヒアリングをおこない、香りの好みや健康状態などを確認して、合意を得ておくことが必要なのです。そこで配慮を求める声が挙がった場合は、アロマを香らせる範囲を限定する必要があります。そうしたことを踏まえ、ぜひ「香りの有効活用」をご検討ください。香りの有無でオフィス空間は劇的に変わります。
■記事公開日:2024/06/25
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼協力=野田薫 ▼画像素材=AdobeStock