企業見聞 企業見聞

企業見聞


シャボン玉石けん株式会社

福岡県北九州市若松区南二島 2-23-1
http://www.shabon.com

本当に価値あるものを、北九州から全国へ

私たちの暮らしを清潔に保つ上で欠かせない、石けんやシャンプー、洗濯洗剤などの日用品市場は、景気の波に比較的左右されないマーケットであると言われる。しかし、今後の少子高齢化という社会的背景を考えれば、当然ながら全体需要は縮小し、消費者の方々にとって本当に価値のあるものだけが生き残っていく「大競争時代」が到来することは間違いない。

では「本当に価値のあるもの」とは何か。そしてその価値を、消費者が正しく理解し、納得して手に取ってもらうためには、いかなる術をもって伝えていけば良いのか。その鍵を握るのがマーケティングの力だ。

「健康な体ときれいな水を守る」という企業理念のもと、40年以上もの間「無添加石けん」をつくり続けている「シャボン玉石けん」。北九州から全国に向けて、理念に基づいた、ブレない商品づくりと広告戦略で、飛躍的な成長を遂げている企業の一つだ。その仕掛け人ともいえるマーケティング部部長・松永康志氏は「当社商品の潜在需要を掘り起こして、伸びていくのはまだまだこれからです」と笑顔で語った。
本当に価値あるものを、北九州から全国へ

安心・安全だけでは消費者に響かない

もともとシャボン玉石けんは、合成石けんを製造販売し成功を遂げた企業だ。ところが、今から40年前の1974年、先代の社長がドル箱だった合成洗剤を捨て、無添加石けんに切り替えることを決断。結果、売上は1/100以下に激減し、17年間赤字経営が続き、その間、100人ほどいた従業員は一時5人まで減ったという。シャボン玉石けんには、それでもなお無添加にこだわり続けた歴史がある。「当社が標榜する『人と自然にやさしいものを』というモノづくりへの思想は、先人たちが強い意志を持って取り組んできた上に成り立つ、揺るぎないメッセージです。したがって我々の誇るべき価値は何か、と問われれば、やはり安心・安全を具現化した無添加にこだわった商品力に他なりません」と松永氏は言う。

とはいえ「無添加」という言葉は、現在、多くのメーカーが使い始めている。しかし、シャボン玉石けんは、香料無添加、防腐剤無添加ということは当然のこととして、主成分は何なのかというところで無添加の基準を考えている。「そこを消費者の皆さんに正しくご理解いただきたいのです。その手段の一つが『無添加を疑え。』という、一見逆説的なキャッチコピーです」と話す松永氏。また、「せっけんハミガキ」の広告では口の中に入れるものなので食品と同じ視点で商品を選択する気づきを与える広告にした。つまりこの広告表現は「本当の安心・安全とは何か」を消費者に啓蒙するために、マーケティングから発想されたシャボン玉石けんの自信の表れでもあるのだ。
安心・安全だけでは消費者に響かない

基本は「売れるであろう商品」のセグメント

現在は、いいものさえつくっていれば売れるという時代ではない。そこで商品の魅力を後押しするのがマーケティングの役割だ。
そこで松永氏は「どれを売るか、何が売れるか」を整理して、せっけんハミガキ、洗たく槽クリーナー、酸素系漂白剤、シャボン玉浴用(固形石けん)、バブルガード(ハンドソープ)、この5つを強化アイテムと決め3年前から販売強化行った。結果、この5アイテムは大きく売上を伸ばし現在の売り上げを牽引する商品に成長している。企業広告ではロングセラーで配荷率も高いシャボン玉浴用にしぼって訴求し、強化アイテムやせっけんシャンプーや洗濯用石けんなどの重要カテゴリーなどにハロー効果を出すようにしている。全ての商品をまんべんなく売ろうとするのではなく、「明らかに売れるであろう商品」をマーケティングベースでピックアップし、販売戦略や広告手法も、その商品を軸に考えていくことが「売れる仕組み」づくりの基本となる。
基本は「売れるであろう商品」のセグメント

マーケティングが活きる風土がある

小規模の会社の場合、ほとんどの事案をトップが決めるのが普通だ。それが全て上手く機能すれば専門的にマーケティングを担う人は必要ない。そうした会社は、すでに経営者が優秀なマーケターだからだ。ただ現実的にそれは稀なケースに違いない。かつてのシャボン玉石けん然り、合成洗剤から無添加石けんに切り替えたのも先代社長は社内でもカリスマ的な存在としてトップダウン中心で会社を動かしていた。

それが今の社長に代変わりして、現社長は組織力の強化を始めている。しっかりとした組織をつくるためなら、人の意見もしっかり聞くし、頭ごなしに「こうやれ!」ということもない。「だからこそ、マーケティングの力も活きるのです」と松永氏は言う。「誰かがいいアイディアを持っていたとしても、それを言える風土がなければ、そのアイディアは世に出ることなく葬りさられるわけで、もしかするとそれは会社にとって大きな損失となっているかも知れません。会社の規模が小さくなればなるほど、社風=経営者の考え方、あるいは部門の長の考え方ということになるので、上の人がどのような考え方をするかで会社の力も変わってくるのではないでしょうか」と。
マーケティングが活きる風土がある

全社員が意識するマーケティング

マーケティングの役割は、ユーザーとの距離を縮めることであり、これからは社員全員がマーケティングの視点を持っていることが求められる時代になる。「素養として最も近いのは、やはり営業職です。直接お客さまと接しており、お客さまの求めるものは一番よく分かっているはずからです。実は私自身も海外の中国の営業や通信販売部を兼任しています。そうした意味では、小さな企業では特別にマーケティングの部署をつくらなくても、やりたい人がやればいいと思います」と。
ただ、ブランディングやPR、商品開発も一貫性が必要なため専門分野があったほうがよいと思われる。また、ひとつの商品を作る上でも社内では研究開発や製造、品質保証、物流、営業など多くの部門が関わり、経営陣へのプレゼンなどもある。外部においては、広告制作やパッケージのデザインなどは外部のプロにお願いすることになる。ただ、丸投げするわけにはいかない。その点は戦略的思考やある程度の経験が必要で、当然最初は失敗することも少なくないだろう。ここで大事なのは、失敗を許す環境であること。失敗をせずに次のステップに行くことはできない。したがって、失敗を許す風土を築くことも、社内でマーケターを育てる上では大切なことなのだと、松永氏は言う。 ただその一方で、マーケティングを導入すれば、即会社が変わる、売り上げが上がるというわけではないとも松永氏は言う。「当社で働いている社員は、もともと『健康な体ときれいな水を守る』という企業理念や、自分たちの商品をすごく愛している人が多いので、会社の軸は何も変わりません。マーケティングはもちろん大事です。ただ一番大事なことは、理念の共有や会社に対するロイヤリティや仕事に対する情熱だと思います」と。


全社員が意識するマーケティング 商品を愛する気持ちがあると、マーケティングはより楽しく、強固なものになります。
読者プレゼント
応募締め切り : 2014年7月22日(火)

いつもビジネスWEBマガジン《キープレス》をご覧くださいまして、ありがとうございます。この度は、2014年6月2日から7月22日にかけて行いました読者プレゼントに多数のご応募をいただきまして、誠にありがとうございます。

2014年7月28日に編集部スタッフが集まりまして厳正なる抽選を行いました結果、今回のプレゼント当選者は次の方々となりました。おめでとうございます。なおご当選者様ご本人様は、商品の発送をもって発表にかえさせていただきますので、あらかじめご了承ください。
■H.I.様(福岡県福岡市)/■H.F.様(愛知県名古屋市)
■S.W.様(宮城県仙台市)/■N.I.様(埼玉県川口市)
■K.S.様(東京都北区)以上、5名様、おめでとうございました。

プレゼントの一例

★ただいまプレゼント募集は終了しております。たくさんのご応募ありがとうございました。
※プレゼント・キャンペーン期間は2014年6月2日から2014年7月22日までです。
当選者数は5名様。応募者多数の場合は厳正な抽選の上、賞品の発送をもって発表にかえさせていただきます。
※賞品のお届け先は日本国内に限らせていただきます。
※三鬼商事の社員および関係各社は応募できません。
※ご応募は、お一人様につき1回とさせていただきます。また、同一メールアドレスで複数の方のご応募もできません。あらかじめご了承ください。
※プレゼントにご応募いただいた方の個人情報に関して、今後、キープレスで行う企画のための参考とさせていただきます。それ以外の目的に使用することはありません。
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■記事公開日:2014/04/28
▼編集部=構成 ▼編集部ライター・吉村高廣=文 ▼編集部・渡部恒雄=撮影 ▼写真・資料提供=シャボン玉石けん株式会社

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