若手のための“自己キャリア”

#5 鳥の眼、虫の眼、魚の眼

時代やトレンドの変化をいち早く捉える視点

NHK連続テレビ小説『まんぷく』が人気です。きっと、毎朝楽しみにされている方も少なくないと思います。1話はたったの15分。毎回「もう終わっちゃった」と感じるほど短いものですが、最終回の151話までをトータルで均すと2,265分(37時間75分)という、とてつもなく長いドラマになります。
こうしたドラマづくりで重要なのが、脚本家が"鳥の眼"と"虫の眼"をバランス良く持っていることです。
つまり、ドラマの全体像は鳥瞰して考え、毎朝の1話1話の内容は虫の眼で考える。途中で飽きさせることなく、最終回を迎えた後にも「面白かった」と言われるようなストーリーに仕上げなくてはなりません。

ビジネスにおいても、顧客の要望に応えるためには、マクロ的な広い視野で仕事の大局観を掴む鳥の眼と、ミクロの視点で部分最適を注視する虫の眼で物事を捉えることが大事であると言われてきました。ところがスピード化が言われる昨今は、鳥と虫の視点に加えて、"魚の眼"を持つことがビジネスパーソンのキャリアアップに欠かせない要素となっています。
魚の目とは、時代やトレンドの変化をいち早く捉える視点です。ファストファッションの興隆に代表されるように、消費者の価値観が変わり易く、サービスや製品寿命の短命化が進む今は、他者(他社)に先んじて状況把握を行い、素早くアクションを起こせることがBusiness Winnerの条件になります。

そんな"眼力"を鍛えるために実践したいのがフィールドワークです。キープレスのコラムでお馴染みの清野裕司氏は、30年間ほぼ欠かさず、土曜日になると百貨店を訪れてくまなく歩いていらっしゃるそうです。清野氏いわく「百貨店はトレンドに敏感で時代性に富んでおり、そこを観察し続けることで一定の所得者層の消費動向と、季節や時代の移り変わりが見えてくる」のだとおっしゃいます。
もちろん百貨店探訪は行動パターンの一例に過ぎません。肝心なことは、インターネットや書籍で得た客観情報のみならず、実際に現場に足を運んで観察し、小さな変化に敏感になること。これが魚の眼を鍛えることになるのです。ぜひ皆さんも自分の現場に繰り出してビジネスの"動体視力"を鍛えてください。

POINT

仕事の全体像を把握しているのはベテランの役割。その中で任された部分の精度を上げるよう努めるのが若手の役割。そして時代の変化を捉え、相応しいアイディアや仕事の進め方を提案するのはマーケティングスタッフの役割。それが当たり前の時代がありました。ところが今は、それら全ての裁量を若手が担える時代になりつつあります。それをキャリアアップのチャンスと考えるか、或いは、仕事が増えて面倒と考えるかで成長のスピードは格段に違ってきます。しかも、変化を捉える"魚の眼"は、一定レベルまでは機動力で補えるビジネススキル。これといった自分の強みを認識できていない若手の皆さんは、注意深く社会を見渡して、ここをブラッシュアップできれば存在感をアピールできる大きな武器になるはずです。

ビジネスライター 吉村高廣の視点

「ボーっと生きてんじゃねーよ!」ご存知、今年の流行語大賞のトップ10に入った"チコちゃん"のお叱り名言です。今回フォーカスした鳥、虫、魚の視野観の本質は、まさにこの言葉に集約されているように私は思います。同じものを見ていても、同じ仕事をしていても、状況の変化を敏感に察知して行動する人と、まるで無頓着な人がいます。当然ながら仕事を進めてゆく上でこれは大きな差になります。したがって、変化に疎い人は、これからのビジネスシーンで活躍するのは難しくなってゆくでしょう。チコちゃんのお叱りに「耳が痛い」と感じるなら、アクティブに行動して徹底的に"魚の眼"を鍛えることが大事です。

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■記事公開日:2018/12/12
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=PIXTA

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