皆さんは"良質な睡眠"を取れているでしょうか?「とりあえず6時間以上は寝ているから大丈夫」と、時間を質に置き換える方が多いのですが、質の高い眠りとは、スムーズに入眠できてスッキリ目覚められること、そして「ぐっすり眠れた」と実感出来ること、この3つが判断の基準となります。そして良質な睡眠を取ることは、身体や脳の疲労を回復させて生活習慣病を予防したり、仕事のパフォーマンスを上げる"生体リズム"の維持に直結します。
ところが、健康総合メーカーが20歳以上の全国の男女約6,500人を対象におこなった睡眠調査によれば、約95%もの人が「睡眠に対して不満がある」と回答しており、その理由の内訳は「寝ても疲れが取れない」、「就寝中に目が覚める」、「寝起きが悪い」といったもの。コロナ禍で蓄積されたストレスが原因で、生体リズムの乱れが顕著であることが判明しました。ただでさえ"世界一の不眠大国"といわれる日本は、睡眠の質低下がもたらすビジネスマンの深刻なメンタルリスクと、生産性損失リスクが懸念されています。
睡眠の質が悪いと仕事のパフォーマンスにどのような影響があるのか。公認心理師の大野萌子さんによると、注意力や集中力などが低下して単純なミスを誘発するだけでなく、感情抑制力が低下して周囲に対して攻撃的な振る舞いをすることがあるそうです。また、創造力や緻密な調査や計算が求められる仕事は避けて、比較的単調な仕事を求める傾向が見え始めることもあるのだとか。ところが、同じ人が質の高い睡眠を取ると、創造性や緻密な調査が必要とされる仕事に主体的に取り組むようになるケースも少なくないそうです。
睡眠の質を改善するための方法は人それぞれで、「これがベスト」はありませんが、いろいろ試しながら自分が快眠できる環境を整えていくことは、同時に仕事のスキルアップにつながることは間違いありません。
5人に1人が睡眠障害を抱えている日本。ストレスや働き方の多様化などからさらに増加傾向にあるとも言われています。医学的には「不眠はうつの症状の1つ」とみなされており、放っておいてこじらすと改善が難しくなり、仕事や人間関係に悪影響を与えます。にも関わらず日本では、睡眠自体が軽視されていて、ビジネスマンの平均睡眠時間は5時間~6時間というのが実態です。
『ゲゲゲの鬼太郎』の作者である水木しげるさんは、どれほど忙しくても1日10時間は寝たといいます。そして氏は、『睡眠のチカラ』という漫画の中に次のような言葉を残しています。《人間は寝ることによってかなりの病が治る。私は「睡眠力」によって傷とか病気をひそかに治し今日まで「無病」である。私は「睡眠力」は「幸福力」ではないか、と思っている》。1日10時間は寝すぎとしても、もっともなお言葉ではないでしょうか。