このコラムは「ビジネスライター」という肩書で原稿を書いていますが、私のファーストキャリアは広告のコピーライターです。昔は制作会社に勤めていて、住宅から船旅、化粧品に至るまで、ありとあらゆる広告コピーを書いていました。PRする製品やサービスがあれこれ変わるので、頭を切り替えるのがひと苦労でしたし、何より情報収集が大変でした。その頃はまだ、インターネットが普及していない時代でしたので、情報は足を使って集めなくてはなりません。大変な作業だからこそムダ足になってもいけません。そこで鍛えられたのが、情報を得て選択する「リサーチ力」です。現在は、経営者や技術者などにインタビューをして原稿作成する仕事が多くなっていますが、そうした仕事をする上でリサーチ力は欠かせません。詳しくリサーチができていれば、たとえ初対面の相手でも自信を持ってインタビューに臨むことができます。こうした自信は、どのようなビジネスであっても欠かせないスキルであると確信しています。
リサーチ力を向上させるための訓練は、実務を通しても行えますが、個人的な趣味の範疇でも可能です。仮にあなたが、1年後にハーフマラソンを走る目標を立てたとしましょう。その目標を達成するためには「自分に足りないものは何か」を、まず知らなければなりません。次いで、そこで出てきた項目を「潰して行くにはどのような手段があるか」の情報を得ます。手段が分かったら、それは本当に正しいのかを「他の情報と比較して検証・選択」します。あとは、自分が選択した手段を実践するのみです。ただし、趣味はビジネスと違い、目標達成時期がマストな条件ではありません。「この調子じゃとても無理」と思えるのなら、途中で手段を見直したり、目標達成時期を延期させてもいいでしょう。いずれにしても、ネットの中に氾濫している情報というのは、あくまでも「投稿者の主観である」という認識を持つことが大事です。
「リサーチ目的」、「調査内容」、「情報の照らし合わせ」、「納期」、以上を、リサーチを行う際に意識すべき4つのポイントとして挙げました。中でも重要なのが「情報の照らし合わせ」です。ネット上の情報は多様であるがゆえに、すべてが同じ結論に至ることはまずありません。正反対の評価もあれば、微妙に異なるもの、さらには明らかに悪意を含んだ悪口も少なくありません。こうした中からベストな選択をするためには、数多くの情報に触れて最も多い評価を基準とすべきです。ウィキペディアを参考にリサーチを済ませている方も少なくないと思いますが、それだけで終えていると痛いしっぺ返しがあるかも知れません。
相手のことについて十分な下調べができていないインタビューは絶対に上手くいかない。これは私が身を持って体験し、その反省から導かれた教訓です。あらゆるビジネスもこれと同じことが言えるのではないでしょうか。あなたの会社がどれだけ優れた製品やサービスを持っていたとしても、相手と向き合うあなた自身が、先方のことを正しく理解できていなければ「信ずるに値せず」と、人間的評価を下されてしまいます。「相手のことを知っている」、これはビジネスにおける最低限のマナーとも言えるでしょう。