良い仕事をする上で大事なのは間違いなくオフィスの環境です。成長を遂げている会社は、確固たる戦略性や会社の思想に基づいて"働き方のカタチ"をオフィスで具現化しているものです。ここではそれを実現させた企業にフォーカスして、新たな時代に相応しいオフィスの数々をシリーズでご紹介してゆきます。
これなら行きたい! Chatwork株式会社のオフィスに納得
ネットワーク上でリアルタイムなコミュニケーションを実現するチャット。ビジネスを円滑に進める役割を果たす注目のツールです。今回訪ねたのは、そのサービス提供におけるトップランナーともいえるChatwork株式会社のオフィスです。効率的でとっても便利で今風だけど、コミュニケーションの基本はやっぱりface to faceじゃないの?と、いささかアナログチックな思いを胸に、東京タワーの麓にあるオフィスを訪問しました。ところがそこに広がっていたのは"社員ファースト"な思想を軸に、洗練を極めた超快適な仕事空間。広報担当の大江ふみえさんにアテンドしていただきました。
7th floor
スクラップアートとオープンソースの家具
2つのミーティングルームとシアタールームを有する7階来客フロア。総合受付前には、古いステーショナリーをコラージュしたスクラップアート風のオブジェが存在感を放っています。実はこのオブジェは単なる装飾ではありません。過去のコミュニケーションツールに対して敬意を払いつつ、これからはChatworkが、より時代に即したビジネス環境を創造してゆく。そんな思いが込められているそうです。それを具象化する工夫として、目を凝らして見るとChatworkと文字が浮き出る仕掛けになっています。
Chatworkのこだわりを象徴するものはエントランスにもありました。イタリアの工業デザイナーであるエンツォ・マーリの木製家具です。Webの世界ではソフトウェアのプログラムのソースコードがオープンソースとなっていて誰でも自由に使用することができます。エンツォ・マーリのオフィス家具も同様で、本に図面が公開されていて、それを見ながらDIYすることができるようになっています。こうしたことから"オープンソースの象徴"としてエントランスに鎮座させているのだそうです。
職場の快適さに貢献するシアタールーム
シアタールームはちょっとした小劇場で、使い勝手も多岐にわたります。会議室としての利用はもちろん、勉強会やセミナー、記者発表など事業にかかわるもののほか、終業後には会社の部活動(映画部や軽音楽部)が防音設備の利点を活かしておこなわれています。また、先ごろのラグビーワールドカップ時には、スクリーンの前でお酒を片手に大いに盛り上がっていたのだとか。こうした仕事以外の使い方が会社の中にコミュニケーションの輪を幾重にもつくり、社員の満足度や職場の快適さにもつながっているそうです。
5th floor
異なるスキルをジョイントするカフェエリア
5階執務フロアは、入り口を入ると左側に開発のエリアが、右側にはビジネスのエリアがあり、その中央に広いカフェスペースを設けるという大胆なレイアウトになっています。この理由は「チャットサービスを提供する会社だからこそ対面でのコミュニケーションが大事」という考え方が根底にあり、中央にカフェスペースを置くことで、普段は顔を合わせぬ双方エリアの社員同士が交流することで、ひと時のくつろぎを得るだけではなく、ビジネスを加速させるヒントも生まれるといいます。このエリアの魅力は、社内コミュニケーションの活性化だけではありません。夜になるとバーカウンターでお酒を飲んで、ほろ酔い加減で退社するなんとも幸せな社員もいるそうです。
世界中の名作チェアをより取り見取り
カフェエリアの西側、東京タワーを望む一角にはカウンター席が設けられ、ズラリと世界の名作チェアが並んでいます。色合いこそ黒一色で統一されていますが、デザインは一つひとつが個性的で座り心地もそれぞれです。時には気分を変えて、自分のデスクを離れてお気に入りの椅子を選んで座り、仕事に勤しむ社員も少なくないそうです。
交流の場があり、世界の名作チェアにも座り放題、さらに言えば7階のシアタールームしかり。なぜここまで社員に至れり尽くせりの仕掛けを設けているのか。その理由は、会社の中に"お気に入りの場所"を見つけてもらい"会社に来たくなる理由"を持ってもらうことだそうです。オフィスは働く人が主役であって、主役たちがその気にならなければ良いものはつくれない。Chatworkにとってオフィスは、それを実現する装置なのです。
コミュニケーションの基本はface to faceです。
Chatwork株式会社 経営企画室 広報 大江ふみえさん
こちらのオフィスには2017年10月31日に移転して来ました。移転にあたって打ち出したコンセプトは「働き方をアップデートできるオフィス」です。私どもは、チャットサービスを通して働き方を変えるお手伝いをしています。だからこそ、私たち自身も常に新しい働き方を模索してそれを実践する企業でなくてはならない、そんな考え方に基づいています。
私どもが考える"新しい働き方"とは、リモートワークのように「やることさえやってくれれば働く場所は問いませんよ」という割り切った考え方ではありません。もちろん事情によっては在宅勤務に切り替えられる柔軟性はありますが、基本的にはオフィス勤務を推奨しています。そのためには、常にフレッシュな気持ちになれて、時間を経ても新たな発見があるような"柔軟性のあるオフィス"であることが大事です。その理想のカタチが現在のオフィスと言うことができるでしょう。
また、仕事の性質上、私どもはオフィス内でもチャットでコミュニケートすることがあります。一見すると「そういうのって冷たくないか?」と思われがちですが、そんなことはありません。どこかできちんとface to faceのコミュニケーションがとれていれば、簡潔な言葉でもスピーディーな意思の疎通が可能になります。つまり"アナログな営みをデジタルの力で最大化する"ということです。まさしくこれは、私どもが提供するChatworkのコンセプトでもあり、オフィスの在り方にも紐づいている考え方です。
■記事公開日:2019/12/12 ■記事取材日: 2019/12/03 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣 ▼撮影=田尻光久