世界190超の国々で酒類ビジネスを展開するCAMPARI GROUP(本社イタリア・ミラノ)は、2020年2月に合弁会社としてCT Spirits Japan株式会社を設立し、日本市場の拡大を目的に活動を始めました。パンデミックという荒波を乗り越え、社会が落ち着きを取り戻した2024年、国内における洋酒市場のさらなる発展及び事業拡大を目指すべく、CAMPARI GROUPの100%子会社として、商号をCAMPARI JAPAN株式会社に改め、本社を新青山ビル西館(港区南青山)へ移転。新オフィスを起点に、ブランドイメージの向上と、収益を増大させる新たな取り組みが始まっています。そんな新オフィスを、代表取締役社長 阿部哲氏、執行役員・人事総務本部長 高野涼子氏、人事総務本部コーディネーター 赤坂恵利香氏の3名にご案内いただきました。
ネイビーブルーをエントランスのシンボルカラーに適用
CAMPARI GROUPには「ブランドコード」が定められていて、ロゴマークやパンフレット、ウェブサイトさらには名刺のサイズに至るまで、あらゆるツールが万国共通のルールの下で、デザイン・制作されています。したがって、例えそれがCAMPARI JAPANのオフィスであっても「オフィスの顔」となるエントランスを好き勝手な配色でつくり込むのはNG。ブランドコードに則ってデザインされなければなりません。
CAMPARI GROUPが基調色としているのは、ホームページやProducts Guideで使われているネイビーブルー。新エントランスについては、ブランディングの観点からネイビーブルーがシンボルカラーとして適用されています。
CAMPARI GROUPにとってのネイビーブルーは、ブランドの信頼性と高級感を象徴する色。また、落ち着きと洗練を感じさせる色でもあり、生活感が出やすい「エントランスの内線電話や待合のソファ」は一切置かず、CAMPARI GROUPのブランドの品質と伝統をシンプルに象徴しています。
1950年代アメリカのオーセンティックBarを再現
Barカウンターの設置はCAMPARI GROUPからのマストな要望。カウンターデザインは各国それぞれですが、すべからくオフィスにBarを設けて、CAMPARIブランドの歴史や思想をエディケーションする場にしたり、カクテルのつくり方をデモンストレーションする「CAMPARI ACADEMY」を開催するなど、単なる社内交流やリフレッシュスペースとしてではなく、Bar文化を継承する実践の場であり、CAMPARIブランドのアイデンティティを象徴したオフィスの心臓部になっています。
全体のデザインは、avant-garde、contemporary、classic、coolと、4方向のデザイン案が設計会社から提案され、バーテンダー出身のブランドアンバサダー(初代CAMPARIバーテンダーコンペティション 日本チャンピオン)を交えて協議した結果、coolな方向性でつくり込みを進めることが決定。一方、Barのコンセプトは1950年代アメリカのオーセンティックBarの雰囲気を再現しました。デザインの世界観はcoolに、その一方、カウンタートップには木材を用いて暖か味のあるカウンターBarに仕上げるなど、CAMPARI JAPANとしての独自性がありました。
自在にレイアウトの変更が出来るAgile(アジャイル)・ラウンジ
多くの場合オフィスラウンジは、福利厚生のひとつとして従業員のリフレッシュやコミュニケーションのきっかけづくりを目的に設けられます。しかしながら、CAMPARI JAPANのラウンジは、日ごろのミーティングや商談で利用するのが主たる目的。(ワークスペースとして利用している従業員もいます)
また、会社としての全体会議や新商品発表会、さらにはセミナーやステークホルダーを招いたレセプションパーティーなどもここでおこないます。自社オフィスでイベントを開催すれば、来訪者に会社の雰囲気や文化をダイレクトに感じてもらうことが出来てブランドイメージを印象付ける上で極めて大きなメリットになります。そして、それを可能しているのがオーセンティックなBarカウンターであり、フロアに配置されたラウンジ什器です。デスク、チェア、は全て可動式什器を採用しており、目的や使い方に応じて柔軟かつ自在にレイアウト変更が出来る「アジャイル・オフィス」の発想を取り入れています。
そして、それを可能しているのがオーセンティックなBarカウンターであり、フロアに配置されたラウンジ什器です。デスク、チェア、は全て可動式什器を採用しており、目的や使い方に応じて柔軟かつ自在にレイアウト変更が出来る「アジャイル・オフィス」の発想を取り入れています。
高額商品の商談は、RARE ROOMでひっそりと
CAMPARI GROUPで取り扱うブランドの中で、一部の高額商品については「RARE(レア)」という名目でカテゴリー分けしています。こうした稀少商品の商談をおこなうのが、ブックスタンドの向こうに設けられた応接室「RARE ROOM」です。一見何の変哲もないブックスタンドが、実は隠し扉になっているというなんともユニークなオフィス設計で、スタンドの左側を押すとまさしく高額商品の取引に相応しい"重厚感のある小部屋"が現れます。
こうした仕様(隠し部屋)にしたのは、1920年代アメリカの禁酒法の時代に、酒好きたちが密かに集った"おおっぴらにはできない酒場"「Speak Easy」のBar文化を取り入れた応接室にしたいという営業チームのマネージャーの遊び心あるアイディアを具現化したものだそうです。
特長的な応接室は、自社のビジネスコンセプトやブランドイメージを的確に伝えることができ、商談相手に記憶に残る体験を提供します。これにより関係が深まり、再訪やビジネスチャンス増加に繋がる可能性も生まれます。応接室の設計やレイアウトには工夫が必要ですが、その効果はとても大きなものがあります。
ちなみに、当初ブックスタンドの隠し扉は電動で開閉できるよう計画していたそうですがコストとの兼ね合いで断念。しかし、実際に扉を押してみると、その重量感が「高額商品の商談」に相応しい"重み"として感じることが出来ました。
日本の洋酒市場でCAMPARIブランドのさらなる発展を
CAMPARI JAPAN株式会社 代表取締役社長 阿部哲氏
世界的なスピリッツ企業であるCAMPARI GROUPは、日本(及びアジア市場)におけるブランド認知とマーケットを開拓するために、2020年に新会社(CT Spirits Japan)を立ち上げた。ところが運悪くコロナに重なる。コミュニケーション・ツールにもなり得る酒を扱う会社であるにも関わらず、リモートで商売をするというのは「まるで嵐の夜に出航の汽笛を鳴らすような船出だった」と阿部氏は当時を振り返る。
「CAMPARI GROUPには「TOASTING LIFE TOGETHER(お客さまやパートナーと一緒に、CAMPARI GROUPの商品で、人生のさまざまな瞬間に乾杯しよう!)」という理念がありますが、盃を交わすどころかリアルなコミュニケーションは皆無でした。しかしながら、幸か不幸か、当初は2020年に東京五輪が開催される予定で、期間中は新会社のオフィス(神宮前)で仕事が出来ないことが予め分かっていたんです。そのためテレワークに入る準備は整えており、戸惑うことなくリモートにシフトすることが出来ました」。
そうした経緯を経て2024年4月、本社名をCAMPARI JAPAN株式会社に改めると同時に、本社オフィスを新青山ビル西館(港区南青山)へ移転。移転の直接的な理由は順調なマーケットの拡大だ。この4年で事業は軌道に乗り従業員数も3倍に増えた。出社とリモートを組み合わせたハイブリッド勤務を実施して来たが、前オフィスの規模ではとても賄いきれない。オフィス移転は更なる成長に必然的な選択だった。
条件は、規模、利便性、そして給排水
オフィス選びにおいては押さえるべきポイントが3つあったと阿部氏は言う。第1はオフィスの規模感だ。約50人の従業員が一緒に働ける執務エリアを確保出来る広さであること、これを大前提にオフィス探しは始まった。第2は利便性の良さ。前オフィスは7つの駅が利用出来たが、全ての駅が徒歩12分以上と営業泣かせの距離。「移転先は、ぜひとも駅の近くにして欲しい」というのは従業員の総意でもあった。第3はマストな条件としてBarの設置が可能であること。その場合に問題になるのが給排水で、一般的なオフィスビルの場合、Barの給排水が許容出来るほどの物件は多くない。事実、給排水がネックとなり候補から外したビルもあったと言う。
「オフィスの規模感については、執務エリアだけではなく、Barや多目的に利用出来るラウンジスペースも含んだ広さの確保が私どもの要望でした。また、交通利便性の良さについては、従業員の通勤やご来社されるお客さまにストレスを感じさせないという側面と、営業動線を考えた場合、我々がターゲットとしているエリア(銀座、赤坂、六本木、渋谷、新宿、恵比寿等)に最寄駅から如何にスムーズにアクセス出来るかという2つの側面があります。そうした諸々の要望を、許容コストの範囲内で実現させたい。青山一丁目駅と直結したこの新青山ビル(青山ツイン)は要望を叶えるベストな選択だった思います」。
胸を張ってブランドイメージを伝えたい
利便性とは別に、CAMPARIブランドの世界観を反映して、人を惹きつけ、驚きがある空間に仕上げること。これが今回のオフィスづくりの基本コンセプトになった。その実現にあたっては、海外拠点のオフィス情報を収集したり、社内でオフィス移転のプロジェクトに携わりたいという有志を募り、物件の内見にも参加してもらいながら、さまざまな意見を反映して基本デザインを固めていった。
「営業からは"新しいオフィスは胸を張ってお客さまを呼べるような空間にしたい"という声が挙がりました。前オフィスは駅からの距離という事情もありましたが、会議室の広さや数など使い勝手の問題もありました。さらにはCAMPARI GROUP が大切にしているブランドイメージや世界観を"どう伝えたらいいのか"という悩みもあったようです」。
「営業にしてみれば、せっかくお客さまにお越しいただいたのだから"Wow!"と驚いていただきたい。coolでオーセンティックなBarやスピークイージー的な隠れ部屋のつくりの設置も、移転プロジェクトのメンバーがアイディアを出し合い、本気になって取り組んだ結果の賜物です」。