良い仕事をする上で大事なのは間違いなくオフィスの環境です。成長を遂げている会社は、確固たる戦略性や会社の思想に基づいて"働き方のカタチ"をオフィスで具現化しているものです。ここではそれを実現させた企業にフォーカスして、新たな時代に相応しいオフィスの数々をシリーズでご紹介してゆきます。
美容・ヘルスケア求人業界のフロントランナー
株式会社リジョブのオフィス
今回編集部が訪ねたのは、美容・ヘルスケア業界や介護業界に特化した求人メディアの企画・運営で右肩上がりの成長を続けるソーシャルベンチャー株式会社リジョブのオフィスです。こちらのオフィスは、東京・池袋の「サンシャイン60」47階に、約700坪という広大なスペースを有するWorking Parkで、平時は200人を超すスタッフが働いているそうです。
入居は昨年(2019年)3月。思いも新たにスタートを切ったものの、今年に入って新型コロナに直面。ステイホームやリモートワークを推奨する風潮にあって、新オフィスを持て余しているのではと思いきや、"集う場"としての人と人の繋がりや、それらが築く可能性を改めて考える機会を得た探訪となりました。
ENTRANCE
出会いが咲き誇る、天空の一本桜
求人メディアを事業のドメインに据えるリジョブでは、「新しく仕事に就く春のイメージ」や「いつまでもフレッシュな気持ちを忘れない」といった心情を象徴するシンボルとして"桜"をコーポレートフラワーとし、オフィスの至るところにdecorationしています。その最たるものが、エントランス中央に佇む一本桜です。この桜は誰しもが目を見張るほどの大木で、オフィス移転時の搬入はひと苦労だったそうです。そして、桜を背にした大窓の向こうには、ビルの47階から俯瞰する東京のオフィス街が。このエントランスは、お迎えするお客さまを華やいだ気持ちにさせる"おもてなし"の装置であると同時に、11年前、約20坪のオフィスからスタートしたリジョブの成長の証しともいえるスペースです。
エントランスからNorth sideへ。南欧風のホワイトレンガが形づくるアーチをくぐりアプローチをひたすら進むと、リジョブのシンボルともいえるREJOB PARK(桜咲く公園)へと続きます。その間、アプローチの両サイドにはパブリックなミーティングがおこなえる会議室が4部屋設けられています。それぞれの会議室がコーポレートフラワーである桜をモチーフに、オオカン、イチヨウ、ソメイ、ヤエベニのネーミングで棲み分けられ、各部屋のクロスには桜のパターンがデザインされるという徹底したこだわりようです。
REJOB PARK
人と人との結び目をつくる"広場"として
アプローチを抜けるといきなり視界が広がります。それはまるで公園のようなランドスケープで、家族連れがピクニックをしていても何ら違和感がありません。ここは、新オフィスの基本コンセプトである「REJOB PARK」がそのままネーミングされた多目的なエリアで、平常時は会社説明会や100名を超える規模のイベント会場として、また日ごろは、採用者の面接やスタッフの憩いのスペースとしても利用が可能です。歩測で約25mもの奥行があるフィールドには人工芝が敷き詰められ、靴を脱いで上がるスタイルです。
リジョブの新オフィスは単なる"職場"ではなく、『人と人との結び目を世界中で増やし、心の豊かさあふれる社会を創る』というビジョンを具現化させるための空間です。スペースに多様性を持たせることでスタッフがそれぞれお気に入りの場所を自分で見つけて仕事をすることができ、業務効率の活性化や空きスペースの稼働率が向上するような工夫も成されています。
また現在は、REJOB PARKのイベント開催等を通して、地元(豊島区)の地域コミュニティとの関わりを深め、企業市民としての位置づけも確かなものになりつつあります。
SAKURA LOUNGE
環境を変えて、新しい発想を導き出す
REJOB PARKの奥にあるラウンジが「SAKURA LOUNGE」です。リジョブではフリーアドレスは採用しておらず、基本的には執務エリアに割り当てられた個々のデスクで仕事をします。そうした一方、メディアの企画・運営という仕事柄、新しい発想を導き出すために、環境を変えて業務に集中できるようなスポットをそこかしこに存在させています。SAKURA LOUNGEもその1つで、一人で集中して仕事をしたり、少人数での会議もおこなうことができ、新しいイノベーションが起こせるような環境がつくられています。また、毎週金曜日には、社員が集うバルも開かれる(現在は休止中)という、なんとも羨ましい環境です。
North side(桜咲く公園エリア)とSouth side(執務エリア)を結ぶコアスペースにも斬新なアイディアが活かされていました。一般的には書庫や倉庫などに利用されることが多いこの場所を、ラグを敷いてソファを置き、まるで自宅感覚で仕事をしたり、休憩できる空間をつくりあげています。
公園のベンチで仕事をするもよし、地上47階のラウンジから下界を見渡しながらアイディアを練るもよし、自宅のリビング気分に浸りながら企画書を書くのもよし。働く場所は選りどり見どりです。
SAKURA GARDEN
周囲に配慮しつつ、効率化を図る
コアスペースをSouth sideに抜けると広大な執務エリアが広がります。執務エリアのオフィスプランも極めて柔軟で、基本的には固定席でありながらも、エリア内には"周囲の人への心配り"を設計前提に、誰でも自由に利用できる仕事スペースが設けられていました。
エリアの中央の「SAKURA GARDEN」と名付けられたスペースは、少人数でのショートミーティングや業務を立ちながらおこなえる(レストランのボックス席タイプも併設)スペースになっています。見通しの良い執務スペースに目線の高さを変えたワークスペースをつくることで、スタッフ同士のコミュニケーションを促進させ、作業や対話の効率化を目指しています。その一方で、目線の高さに植栽を配置して視線を遮る工夫が成されるなど、自由な中にも周囲のスタッフへの配慮が感じられました。
SAKURA CAFE
人が集い、夢を語り、成長を遂げてゆく
ここは、主に休憩や憩いの場として利用するスペースです。執務エリアとの境界に設けたオフホワイトのフェンスがブラインド的な役割を果たし、仕事をする人、休む人、互いの存在をさほど意識することがありません。
リジョブでは、求人メディアの企画・運営とは別に、社会課題の解決と事業を両立させる「咲くらプロジェクト」の運営を手がけています。これは、美容やリラクゼーションの分野において、日本の技術やサービス、おもてなしの心を途上国の子どもたちが身に付けることで、一人前の施術者として自立できるようサポートしようというもの。SAKURA CAFEで提供している一杯50円のコーヒーの収益の一部も「咲くらプロジェクト」の活動資金に充てられています。2015年からCSV推進プロジェクトに取り組み始めたリジョブは、こうした"職場の余白"とも思える空間を、移転前のオフィスからことのほか大事にしてきました。
人が夢を語り、それを具現化できるのはオフィスに他なりません。これまでも、そしてこれからも、リジョブはオフィスを起点として、ここに集う人々と共にさらなる成長を目指します。
那須 りな(経営推進グループ)
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山田 健介(経営管理グループ)
オフィスというリアルの中で、企業文化は育まれる
リジョブは創業11年目になりますが、2014年のM&Aを経て、新しいリジョブのカタチにバージョンアップしました。その時に組織のビジョンやCI、VIなどを検討して、求職者の方々が希望する仕事に出会って、新たな門出を迎える春をイメージして桜をコーポレートフラワーとすることが決まりました。
移転前のオフィスにも桜の木をオブジェ的に扱うスペースが存在していましたが、こちらのオフィスへの移転テーマが「進化」ということに決まり、桜のオブジェも、より"おもてなし感"の強いものにグレードアップしようということになり、エントランスに一本桜が配置されました。コンセプチュアルな言い方をすれば、この桜の木の下でたくさんの出会いがあって、人と人の結び目が花開くというイメージです。
人と人の結び目とは、求人事業に限ったことではありません。コロナ禍以前は、芝スペースを使って、介護の次世代を考えるイベントを2か月に1回開催しており、毎回100人以上の方が参加されていました。また、介護施設を経営されていらっしゃる方から、「リジョブの芝スペースで高齢者向けのファッションショーをやりたい」という申し入れを頂戴したこともありますし、豊島区で子ども食堂を運営されていらっしゃる方が「何かイベントができないものか」と見学にいらしたこともあります。このように、こちらにオフィスを移転してからというもの、実に多くの"人との縁"が築かれるようになりました。これは意外なオフィスの移転効果でした。
コロナ以降は弊社でもリモートワークを採用しています。ただ、そうした状態が長引くと、社員同士の結びつきが薄くなってしまうのではないかという心配があったのですが、緊急事態宣言が明けて、久しぶりに出社して皆の顔を見た時に、すごくリアリティがあって嬉しい気持ちになりました。その時に「オフィスはみんなにとって単なる"仕事場"ではなく"拠り所"になっているんだ」と感じました。同じように感じた仲間は少なくないはずです。企業文化というのは、こうしたリアルの中で育まれるものと私は思います。
経営推進グループ
コーポレート推進室
広報担当 那須 りな
新オフィスへの移転で、進化の条件は整った
今回のオフィス移転は、実働わずか2日。金曜日に締めて、土日で引っ越しを完了させるという強行軍でした。というのも、メディアを運営しているためサービス止めるわけにはいかなかったのです。ただ、一番の気がかりはその後で、通信インフラが問題なく機能しなくては意味がありません。当然ながら事前検証はおこなっていましたが、200人が同時にネットを使いだしたらその負荷に耐えられるのか。予測できないトラブルがどこかに潜んでいそうで眠れない日が続きました。
オフィスの移転計画については、「一人になれること」と「誰かと繋がること」といった表裏一体の課題がありました。前者については、前のオフィスには、集中したい時に一人になれるスペースがなく、それが仕事の生産性を阻害する1つの要因になっていました。一方後者は、内向きになりがちの視野を外に向けるため、オフィスを開放して外部からの刺激を取り込めるスペースを確保すること。それぞれの課題に相応しい場づくり、それが自由にできるスペースづくりを念頭に、移転計画を具現化することに臨みました。
今後はコロナを横目で見ながら働き方を調整する必要があります。ただ、一部には、「会社通勤するのはナンセンスだ」などという風潮もありますが、それがビジネスパーソンのスタンダードかといえばそんなことは決してない。例えば「オフィスが自分の希望する状態にあれば出勤したい」という声もあるはずです。したがってこれからは、選択できる働き方を用意することが大事だと思います。いずれにしても、その人がいないことによってリレーションシップが崩れてしまわないように環境を整えること。それがこれからの仕事かと思っています。
新しいオフィスになって社員のモチベーションは間違いなく上がっていますし、社内の結びつきも強くなったと感じています。ただそれ以上に、外部の方々との結びつきがこれほど増えるとは思っていませんでした。進化を目指すリジョブのこれからは、こうした人との関係をさらに広く、もっと深く突き詰めてゆかなくてはなりません。新オフィスへの移転によってその条件は整ったということができるでしょう。
経営管理グループ 総務人事部
総務・人事労務セクション
チームマネージャー 山田 健介