アイペット損害保険株式会社(以下アイペット損保)は、2004年の創業以来順調に成長を続けており、現在の保有契約件数(契約総数)は75万件を超えて業界第2位のシェアを有しています。2020年10月にはアイペットホールディングス株式会社を立ち上げて持ち株会社体制に移行。アイペット損保を中核に、経営理念実現に向け、ペットライフを豊かにする様々なサービスの提供(獣医師によるオンラインでのペットの健康相談など)を手掛け、各社のリソースを有効活用し、事業の効率化・顧客サービス強化に努める、ペット保険業界のイノベーターです。
そうした取り組みをさらに加速させるべく、2022年5月にグループ本社を六本木から豊洲に移転。新オフィスのコンセプトを『仲間と働くことを楽しめるような空間』と定めて、開放的な空間利用と従業員の働き易さにこだわりつつも、金融機関ならではの機密性をも同時に担保したオフィスをつくり上げました。
新しいワークスタイルの実現に向けたオフィスを構築
会社の顔ともなるエントランスは、来訪者に開放的な印象を与えることをコンセプトとしています。ダクトや電気配管を露出させるスケルトン天井を採用したのも、エリアに高さを与える狙いがあってのこと。移転前のオフィスよりもやや坪数が小さいため、視覚的に広く・高く見せる工夫がオフィスの各所に施されています。また、会社のロゴマークにハートがデザインされていることから、所々に曲線をあしらって柔らかな雰囲気のエントランスとなっています。
当初、執務エリアをフリーアドレスにすることについて、「いまひとつピンとこない」という方がいらしたそうです。当然ながら、「慣れ親しんだ自分の席がなくなる」ということに漠然とした不安を持つ方がいても不思議はありません。ただ、結果的には良い選択だったとおっしゃいます。
その日の仕事内容に合わせて臨機応変に働く場所を選べることで業務が効率化した。スムーズな情報共有がおこなえるようになった。といったデイリーなメリット以外にも、他部署に頼み事をしに行く時、固定席だと各部署でまとまっているため"アウェイ感"があって気が重かったが、部署間の壁が取り払われたことで頼みたい相手に直接コンタクト出来るようになって、ストレスがなくなった。などという効果もあったそうです。
気分転換のためのリフレッシュエリアは、従業員同士のコミュニケーションを活性化する場としても大切な役割を担っています。人が集まる場所には自ずと情報が集まり、そんな中から斬新なアイディアが飛び出して来る場合もある。それはまさしく、休憩中の"やわらか頭"だからこそ出来る知的交流に違いありません。とはいえもちろん、リフレッシュすることが最優先。とってもお洒落なビストロテーブルがあり、立ったまま利用できるハイテーブルもあり、寛ぎ方は自由自在です。
働き易さをサポート。生産性もモチベーションも向上
開放感があるけれど意外と落ち着くボックス席。急にミーティングが必要になってもひと目で空き状況を確認できますし、たくさんの資料を机上に広げて仕事をする場合や、複数人が同時に作業する場合など、使い勝手の良いスペースです。アイペット損保では、「フリーアドレスの一部なので、節度を守ってさえいただければ、 どんな使い方もアリ」ということです。
視界を妨げないガラス張り会議室は閉塞感を感じさせません。また、室外の様子が見える環境でのミーティングは、心理的にオープンになって議論が活発化しやすくなります。一方、会社の方針を決める経営会議や取締役会、セミナーや研修などをおこなう大会議室(DogとCat)については、外から室内が見えないように壁で囲まれ、用途に応じて使い分けているそうです。
在宅勤務のメンバーと出社メンバーとのオンラインミーティングに欠かせないのが1人会議用ブースです。基本的にはオンラインミーティング以外の使用は禁止。集中して仕事をしたい場合は、別に設けられた集中ブースを使用します。フリーアドレスは、従業員同士のコミュニケーションが促進するというメリットがある一方、作業に集中したくても周囲の視線や音が気になり仕事に集中できない、という課題が生まれがち。集中ブースはフリーアドレスのオフィスに効果的な設備かも知れません。
アイペット損保では移転前から、コミュニケーションを活性化させるために『ipet LOUNGE』という懇親会を設けていたそうです。社内にバーカウンターがあると従業員は気軽に参加できるのではないかと考え、コロナが落ち着いたら社内で立食パーティーといったイベントなどにも活用することを想定しているそうです。さらに移転後、制度的な福利厚生として設けられたのが、昼食費用を補助する『にゃんコインランチ』です。自己負担わずか200円で宅配弁当(内容はかなり充実しています!)が食べられるという、なんとも羨ましい制度です。
活発な交流がおこなわれるオフィスを。
人事総務部 総務グループマネージャー兼経営企画部リーダー 入江 穂さま
オフィス移転にあたっては、社内に事務局を設けて全体スケジュールをマネジメントしました。もちろん、事務局だけで進めるのではなく、活発な交流がおこなわれ、新しい発想やアイディアが生まれるオフィスづくりが出来るよう、各部署からメンバーを募って『オフィス移転プロジェクトチーム』を構成。従業員からもしっかりと意見を募るかたちで議論を進めました。
多くの要望やアイディアが寄せられましたが、弊社らしいユニークなものの1つが、各々の会議室にペットネームを付けるというもの。DogやCatといった分かりやすいものから、Kookaburra(クーカブーラ:オーストラリア産カワセミ)といった一般的には耳馴染みのないものまで、弊社で取り扱っている保険商品に加入できるペットの中から名前とシルエットを割り当てています。
執務エリアは基本的にフリーアドレスを採用して、ワークスタイルの自由度を広げています。ただし、財務、人事といった機密性の高い情報を扱う部門については、フリーアドレスにはせずにグループアドレスやある程度の固定化を図り、他の部署からは目が届きにくいよう配置しました。
移転後にアンケートをおこなったところ、皆さん今のオフィスには概ね満足されているようでした。一部「ウォーターサーバーを増やして欲しい」などといった要望もありましたが、そうした要望については即時対応して改善を図っています。ただ、今の状態が完成形だとは思っていません。事業戦略や形態、社会環境の変化などによってもオフィスの在り様が変化していくことは十分考えられます。したがって、定期的に従業員からの声に耳を傾け、金融機関としての節度を保ったオフィス改革が必要だと思っています。
オフィスには、同じ志を持った仲間がいる。
広報部 広報グループ主任 守谷 絵里さま
弊社は金融機関ですので、お客様の個人情報をたくさん扱っています。したがって、これまで(前オフィス)は在宅勤務が容易ではありませんでした。しかしながら、コロナ禍で緊急事態宣言が発出されて在宅勤務をせざるを得なくなった。そこで最初は、暫定的に在宅勤務の制度を設けて運用していましたが、一向にコロナ収束の兆しが見えない。そこで、従業員の感染リスクの軽減、BCP(事業継続)の観点、 アフターコロナの働き方も視野に入れて、昨年(2021年)の4月から正式に在宅勤務や時差勤務を制度化しました。
ところが、それと同時に、従業員の帰属意識や仲間意識のようなものが低下して、従業員間のコミュニケーションの希薄化が懸念されました。前のオフィスは2フロアだったので、そもそも他部署とのコミュニケーションには難があったんです。加えて在宅勤務制度では、1か月の営業日数のうち在宅勤務できる日数は、原則、利用する月の営業日数の8割を上限としており、1か月の出社は4、5日といったところです。こうしたことで、同じ部署内でも従業員同士のコミュニケーションが圧倒的に少なくなったのです。もちろんコロナだけがオフィス移転の要因ではありません。オフィスの契約更新時期であるとか、働き方改革を抜本的に見直すこと、さらには、移転に伴い省電力化をはじめとしたESG(環境・社会・企業統治の観点を持った経営)への取り組みとして環境配慮型の職場づくりなど、考えるべき要素が幾つかありましたが、カタチとしては、社会環境の変化が移転を後押ししたという感じです。
IT技術が進化したご時世だからこそ、「オンライン上やバーチャルな世界の中で、一人で仕事ができてしまう」と錯覚する方が少なからずいるように思います。この先、コロナ禍が長引けば、こうした方が増えていくかも知れません。しかしながら、出社をすることで「同じ志を持った仲間がいる」と認識することは非常に価値があることですし大切なことです。仕事は「個」でするものではなく、「仲間」と協力して進めるもの。オンラインでは味わえない人間味のあるコミュニケーションをface to faceでしてもらいたいと思います。そのためには在宅勤務と出社勤務を組み合わせて、より働きやすい環境づくりをしておかなくてはならない。それが今回のオフィス移転の土台にあります。