商品価格相場の比較サイト『aucfan.com』の運営と、中小企業や個人事業主を対象とした在庫流動化ソリューション(仕入れ卸サイト)『NETSEA』の運営などを事業の軸として、BtoB卸市場のDX化に取り組む株式会社オークファン。アフターコロナの最適な働き方を具現化するため、今年6月1日、旧SONY本社ビル跡地に民間都市再生事業計画の目玉として新設された超高層オフィスビル『住友不動産大崎ツインビル東館』に移転しました。新オフィスは移転前のオフィスより面積は縮小したものの、働きやすさにとことんこだわった環境を構築。「社員が出社して良かったと思えるような空間にしたかった」と言うオフィス移転のプロジェクトリーダー尾藤紅音さんの思いがそこかしこに活かされた社員ファーストのオフィスでした。
コミュニケーションの装置としてカフェカウンターを設置
コロナ禍によって、「作業をこなすだけなら、出社しなくても仕事は出来る」と実感された方も多いのではないでしょうか。そうした一方で、コロナ以前に人と人とのリアルな関りによって蓄えてきた『コミュニケーション貯金』が目減りしているのが現実で、社員にオフィス回帰を促す企業が増えています。
しかしながら、リモートワークや在宅勤務のメリットを存分に享受した社員たちが、それでもオフィスに戻りたくなるためには、魅力的な施策を講じなくてはなりません。オークファンが移転計画を立てる際、まず着目したのがリフレッシュエリアの設置と充実。その象徴となっているのが、オフィス中央に鎮座する円形カフェカウンターです。
カフェカウンターの設置は、社員同士が気軽にコミュニケーションがとれる"装置"として、より活発な交流を生むことが狙いでした。あえて円形にしたのは「コミュニケーションを循環させる」という意味があってのこと。気軽に利用することが出来て、お茶を飲みながら雑談をしたり、軽い打ち合わせや仕事をしても構わない。名目はリフレッシュエリアですが、単なる休憩エリアではなく多目的な使い方が可能です。
職場の中央にカフェカウンターがあるオフィスというのはかなり大胆なレイアウトですが、カウンター周辺にはソファ席や高さ違いのスタンディングデスクなどを配置。一帯をフリーアドレスエリアにすることで社員が接点を持ちやすく、コミュニケーションが必然的に生まれるよう計算されたレイアウトとなっています。
女性目線で考えた本当に役立つダイバーシティのカタチ
多くの企業で女性が働きやすくなるようさまざまな制度の整備が進められています。しかしながら、名ばかりの制度をつくっても女性が活躍出来るわけではありません。名目上どれだけ制度を充実させても、それらが本当に役立つものか、利用しやすいものかは別問題です。
オークファンでは、女性社員の割合が全体の約40%を占めています。こうした中、急な体調不良の時でも安心してゆっくり休めるよう女性用休憩室を設置。室内に常備している生理用品類や痛み止め薬などは自由に使うことができます。
これらは働く女性を支援する会社としての姿勢を示す取り組みでもあり、今後女性の採用を増やしていく上でアピールポイントにもしていきたいとのこと。こうしたサービスを具現化出来たのも、プロジェクトリーダーである尾藤さんが"女性視点"で采配を振るったからに他なりません。
変化する会議のカタチに準じて会議室の在り方を再評価
仕事の仕方が変化するに伴い、これまで必要不可欠だった会議室の在り方も問われています。業態によっては会議室の利用頻度が著しく減少傾向にあるものの、依然、会議室がオフィスの中で果たす役割は大きなものがあります。
オークファンでも、移転に伴い会議室の在り方を見直しました。移転前のオフィスでは、大人数(6人~12人)の会議室を複数設けていましたが、コロナ禍で会議は基本オンラインにシフト。社外の方々がご来社される場合も自然と少人数での訪問となったため、6人会議室2部屋、4人会議室2部屋と少人数かつ最小限の会議室を残したそうです。
そのかわり、オンライン会議の個別ブースを8部屋設けて効率化を図っています。移転前のオフィスには個別ブースがなかったため、6人会議室を1人で占領してしまい、話が長引くと"会議室渋滞"が起こることもあったそう。オフィスにおける個別ブースはアフターコロナのマストアイテムだとおっしゃいます。
フリーアドレスで部署を超えたコラボレーションが活発化
オークファンではオフィス移転後からフリーアドレスを採用しました。これにより、業務の内容や進行フェーズによって自由に席を選ぶことが出来るようになり、これまで関わる機会が少なかった他部署のスタッフとも接する機会が増え、期待通り、社員同士のコラボレーションが活発化したそうです。
オフィス内は、営業チーム、開発チーム、経理部門など、部署ごとに区分けが成されていて帰属エリアを決めています。そのエリア内で自由に席を選ぶことも出来ますし、円形カフェカウンター・ソファ席・スタンディングデスクを配した中心エリア、さらには、視界が広がる窓際のカウンター席を、誰もが自由に使えるフリーアドレス席としています。今回の移転でオークファンにとってフリーアドレスはプラスに作用していますが、「業態によって向き・不向きがあるのでは」と尾藤さんはおっしゃいます。
「大手商社のようにデスクと椅子が整然と並んでいるオフィスを、わざわざフリーアドレスにする必要はないと思います。
その規則性には理由があるからです。当社のようにカフェカウンターやソファ席、スタンディングデスクなどを設けて、働き方を自由に変えられる、或いは変えた方が良いアイディアや結果が期待できる業態ならフリーアドレスとの相性がいいと思います。そのあたりの見極めは大事ですね」。
コミュニケーションが活発化するオフィスづくりを。
組織開発室 広報担当 尾藤 紅音さま
コロナの影響で出社率を落としてリモートワークを推奨。移転前の出社率は約30%でした。当然ながら空席が目立ち、固定費(家賃)の削減とアフターコロナも出社と在宅のハイブリッドワークを継続することを視野に入れ、オフィスの移転が決まりました。
場所(エリア)的には「ここでなければ」というこだわりがあったわけではありません。こちらの大崎ツインビル東館が2022年1月に竣工した新築ビルでしたので非常に綺麗で"見た目に惚れた"という感じです。そもそもこの地区自体が再開発途上のエリアで、はす向かいにはこれから西館が建設されますし、それに伴い周辺もオフィス街らしい佇まいを見せて行くことが計画されているようです。
私がオフィス移転のプロジェクトリーダーを任されたのは移転先がこちらに決まってからのこと。全ては手探りでしたが、自分の中での方向性は「Discover Office(オフィスの魅力再発見)」。出社する機会が減り、社会的にもリモートワークの利点が声高に言われていた中、「出社するのもやっぱりいいな」と、多くの社員の方々に思っていただけるようなオフィスづくりを目指しました。
エンゲージメントの向上も念頭に置きました。エンゲージメントを平たく言えば、社員の会社に対する愛着だったり思い入れなど"社員と会社の絆"のようなものだと思いますが、それを実現させるために必要なのは、オフィス内における福利厚生の具現化だと私は考えました。
リフレッシュエリアの充実や、女性用休憩室の新設しかりで、社員が高い満足度を感じることが出来る職場であれば、自ずと"愛社精神"のようなものが育まれて行くのではないでしょうか。
私自身、出社して仲間と話していると、触発されてやる気が湧いてくることがたくさんがあります。私にとってのオフィスとは、モチベーションや明日頑張るチカラを与えてくれる場所です。今回のオフィス移転もそういった発想で力を尽くしました。ただ、当社は良くも悪くもベンチャー気質で業務が流動的です。そういった意味では今のオフィスが完成形とは考えていません。