クローダジャパン株式会社は、グローバルに事業展開するイギリスの化粧品や医薬品等の原料サプライヤーCroda Internationalの日本法人として、東京(本社)と滋賀の2拠点を構えています。2019年9月に本社を神保町から新宿(新宿パークタワー)に移転。快適でロケーションの良いオフィス空間に生産性の高いワークスペースを構築しました。
オフィスをご案内くださった人事総務部 部長 山田建樹さんによれば、オフィス移転に踏み切った第一の理由は、社員が増えて物理的にオフィスが手狭になったこと。またそれに伴って、会議室やミーティングスペースが不足して気軽に打ち合わせが出来なくなったこと。さらには、今後の人材採用といった点まで総合的に考えると、「より良い環境のオフィスに移転する時期にさしかかっていた」とおっしゃいます。
100年企業のホスピタリティを具現化したエントランス
Croda International picは、2025年に創業100年を迎える歴史と伝統あるグローバル企業です。その日本法人であるクローダジャパンのエントランスは、100年企業ならではのゆとりを感じさせる贅沢な
空間でお客様をお迎えします。それは堅実さを印象付けるだけでなく、来訪いただいたお客さまに快適に過ごしていただきたいという、ホスピタリティが具現化されたスペースでした。
個々のテリトリーを明確にして集中できる執務エリアに
固定席を設けないフリーアドレスを採用する企業が増えています。そうした中、クローダジャパンの執務エリアは固定席制を採用。机上面の広さを確保出来るL字型のデスクにデスクトップパネル(仕切りや目隠し)を設置することで作業環境を整え、より仕事に集中しやすい"個の領域"に。外資系企業では一人ひとりのテリトリーを明確にすることは一般的なオフィスデザインなのだそうです。また、椅子のカラーは社員が"オフィス移転に対する参画意識"を持てるよう4色の中から各自が好みの色を選定したそうです。
Croda International plcは2019年に会社の存在意義として"Smart science to improve lives(スマートサイエンスを用いて人々の生活を向上させること)"というPurposeを設けました。そのPurposeから想起される言葉や、Purposeを実現していくために必要な言葉を社員に募りました。それらをレイアウトして『One Croda』と文字が浮き出るプレートを作成して執務エリアに掲げました。あれから4年、コロナ禍を経て働き方は変わりました。今、改めて一つひとつのワードに目を向けると、その内容たるや実にさまざまで多様性に満ちています。そして、「こうした思いが1つになって現在のクローダジャパンを構築しているんです」と山田さんはおっしゃいます。
お客さまに製品の魅力をリアルに伝えるデモルーム
化粧品原料の処方のワークショップが出来るように設けられたデモルームは、ガラスの間仕切りを採用して廊下からも室内の様子が伺えるオープンな空間としています。移転前のオフィスは、地下鉄神保町駅から徒歩約1分とアクセスは抜群に良かったものの、お客さまをお招きして化粧品の処方を試すデモルームを設ける広さがありませんでした。
「滋賀県の工場にはデモルームがありますが、化粧品メーカーのお客さまは関東にもいらっしゃるため、わざわざ滋賀県までお運びいただくのは大変です。東京オフィスにデモルームがあれば、より多くのお客さまに弊社の製品を実際に手に取って体験していただき、その品質をリアルに感じていただけます。デモルームはオフィス移転において実現したい最優先事項の一つでした」。
対話・集中・リラックスできるコワーキングスペース
オフィスの中でも景観が最も良い多目的エリアは、新宿中央公園やその周囲を眺望しながらリフレッシュすることのできるカウンター席が多数設けられ、明るく開放的なスペースとなっています。当初は、気軽にミーティングが出来るスペースの確保が目的でしたが、せっかくの好環境ですのでさまざまなニーズに対応出来る機能を設けたそうです。
気分を変えてここで仕事をしたり、ランチタイムに使ったり、周囲の視線を遮るパーソナルチェアに座って気持ちをクールダウンさせたり。人それぞれ、その日の気分次第で使い方は異なりますが、このエリアはそれを限りなく叶えるコワーキングスペースとなっています。
また、海外から来社するクローダグループのエグゼクティブ達は、来訪時に社員との対話を希望されます。オフィス移転後この空間を設けたことで、オフィス内で立食スタイルのランチパーティを開催できるようになり、グループのCEOをはじめとしたエグゼクティブと日本の社員がざっくばらんに対話する機会が生れました。CEOと直接会話をしたことがモチベーションの向上につながり、社内に一体感が生れ、チームとしてより一層会社の目標達成に取り組むことが出来るようになったという点においても「非常に効果的な投資であった」とおっしゃいます。
休養室の設置で社員の健康を経営的な観点で支える
最近になってクローダジャパンは、体調を崩した社員に休んでもらえるスペースを確保するために、応接室を休養室につくり変えました。この休養室は普段はミーティングスペースとしても利用出来るようなソファーを設置し、体調不良の社員がすぐにシーツを引いて横になることができます。また、ブラインドを下ろせばプライバシーも確保出来ます。
クローダグループは『安全と健康』をゆるぎない価値観として大切にしており、クローダジャパンにおいても「安全や健康は、優先順位をつけられるものではなくて理念そのもの。常に最上位にあるべきものです」と山田さんはおっしゃいます。
「朝出社して、夕方に帰宅するという当たり前のことを当たり前に出来ることが大事なのです。オフィスであっても社員が負傷するリスクは色々あり、そうしたリスクを個々の社員がしっかりと認識し、自分のみならず仲間の安全を確保できるように出来ることはしっかりやる、それが会社とそこで働く社員の責務です」。これはまさしく社員の安全や健康を経営的な視点で戦略的に支える『健康経営』の取り組みであり、結果的にはさまざまなメリットが見込まれます。
海外とのリモート会議に欠かせないミーティングブース
会議や打ち合わせは、都庁と新宿中央公園を間近に望むロケーション抜群のメイン会議室の他、多目的エリア、さらには3つのミーティングブースでおこなわれます。特に稼働率が高いのはミーティングブースで、使用用途の多くが海外とのビデオ会議です。これはクローダジャパンの独特なカルチャーかもしれませんが、海外の社員とのコンタクトに電話は殆ど使いません。入社7年になる山田さんも海外の同僚と相手の顔が見えない電話で話をした記憶は「一度もない」とおっしゃいます。
「以前はskype、現在はteamsで相手の顔を見ながら会話します。電話の場合は耳だけで情報を理解しようとします。しかし、人のコミュニケーションの7割近くは相手の仕草や表情などから読み取っていると言われています。したがって、最も良いのは人と人とが向き合って対話することですが、それが出来ない場合でも、skypeやteamsでの対話なら、相手の仕草や表情が分かるので、意思の疎通はスムーズです。今ではこれが国を超えたコミュニケーションのスタンダードであると考えるようになりました」。
オフィス機能と遊び心のバランスで多様な働き方を
人事総務部 部長 山田建樹さま
新しいオフィスを探し始めたのが2018年の年末頃で、2019年のゴールデンウィークあたりに現オフィスの賃貸契約を結びました。当時は空室率が2%を切っていてなかなか希望通りの物件が見つからず「2%を切るというのはこういうことか」と、まざまざと感じました。そうした中で、予算と広さのバランスを念頭に置き"景観に優れた物件"という要望でオフィスを丹念に探した結果、今の場所(新宿パークタワー)に決まった次第です。
オフィスづくりにあたっては、お客さまを招いて製品のデモンストレーションが出来るスペース、skypeやteamsでの打ち合わせにも使用できる防音性に優れた集中ワークスペース、そして、必要が生じたら気軽にミーティングをおこなうことが出来るスペース。これら3つのスペースを設けることを要件とし、複数のデザイン会社にお声かけしてコンペをおこないました。
いずれも素敵なデザインを提案してくださいましたが、最終的に決め手となったのは、オフィス機能として必要不可欠な部分と遊び心のバランスです。革新的なデザインで心惹かれる提案もありましたが、弊社のオフィスとしてはやや斬新過ぎました。採用したデザインは、仕事をするための環境とリフレッシュを生み出す付加価値のバランスが非常に良かった。実際に仕事をしてみても、良い提案をしてくださったと思っています。
お客さまとの接点となる営業部門。そして、注文をいただいた商品をつつがなく納めるサプライチェーンマネジメント(物流)部門。双方が良好な関係であること(相手の悩みや課題をいち早く共有出来ること)がメーカーにとってはとても大事です。
新オフィスのレイアウトは、デザイン会社の提案により執務エリアの中心に物流部門を配置して、それを取り囲むように営業部門を配置しました。これによって双方の距離が縮まり、困りごとが起きた時に迅速にサポート出来るようにもなりました。
例えば、物流部門が納期についてお客さまから厳しいご指摘を受けているような場合は、営業の社員がいち早くそれを察知してフォローの電話を入れ事なきを得る。そんなリレーションシップも実現しています。見た目には派手な演出があるわけではありませんが、弊社の業務形態をよく理解して、どの部署をどこに配置すればより機能的なオフィスになるかを、ロジカルに考えたレイアウトの提案をしてくださったと思っています。
弊社には、「多様な働き方を認めていこう」という方針があります。そこで、今年の1月から週3日は出社し、2日までは在宅勤務を認めるという考え方に基づく勤務制度をスタートさせました。これについてはマネジメントチームの中で色々と議論を重ねました。
コロナが追い風となって、テレワークが当たり前の風潮になりつつありますが、私どもの事業は、"ものづくり"であり、個人の発想や能力だけで成果を挙げていくものではなく、チーム力で(さらに言えばお客さまの意見も取り入れながら)最適解を見つけ出していくために顔を合わせる"場所と時間"がとても大事です。また、新入社員が先輩社員の立ち居振る舞いを見て、仕事を学べるところがオフィスです。今後はこのオフィスを軸として、在宅勤務の良さも取り入れながら、より大きな成長を目指します。