「企業の課題解決に向けたオフィスづくりを総合的に支援する。」これが株式会社エフエム・ソリューションの事業領域です。とくにコロナ禍においてはこれまで以上に働き方の多様化が進み、オフィスの役割は単なる"作業の場"ではなく、コミュニケーションを活発化させて刺激を受け"アイディアやイノベーションを創出する場"としての役割が期待されるようになりました。
こうした社会変化の中で、エフエム・ソリューションも更なる成長ステージに前進すべくオフィスを移転。これまで豊富な経験に基づく知見や技術でクライアントの理想を超えるオフィスを創造して来たエフエム・ソリューションが、自分たちのために、自分たちで創り上げた、自分たちにとっての理想の職場とは如何なるものか。移転プロジェクトの小栗航太さん、田辺絵莉香さんのお二人にご案内いただきました。
新オフィスのデザインコンセプトは"結び目" カフェスペースKNOTS(ノッツ)
今回の移転では、業務の生産性・効率性を上げ、お客さまの期待を超えるような仕事をするため、社員のモチベーションがアップするオフィスを会社として目指しました。オフィス中央に設けられたカフェスペースは『KNOTS(結び目)』と名付けられ、同居する3社(いずれも家具メーカー株式会社オカムラの関連会社)共有のリフレッシュエリアになっています。カフェスペースを設けた目的は、会社の垣根を越えた会話を生み、オフィス全体を活性化させるようコミュニケーションを促進すること。各社の社員が自然に集まる"結び目"としての役割を果たします。
カフェカウンター周辺には、社員が"オフィスに行きたくなる"ユニークな仕掛けの数々が。不足している栄養素を測定してサプリメントを自動的に抽出してくれるオーダーメイドサプリメントサーバーやビールサーバー、ペットのように可愛がることのできるロボット「LOVOT」など話題性のある仕掛けが設けられ、オフィスにプラスアルファの魅力を生み出しています。
エフエム・ソリューションのようなクリエイティブな企業にとってのカフェコミュニケーションは、単に「コーヒーを飲んでひと休み」というだけでなく、リラックスした雰囲気の中での何気ない会話からひらめきが生まれることが期待出来ます。Appleの創業者スティーブ・ジョブズが残した「創造性は何気ない会話から、行きあたりばったりの議論から生まれる」という言葉の通り、仕事とは無関係な雑談の中から、一人で考えている時には気付かなかった発見や新しいアイディアが得られることもあるそうです。
ベストロケーションを有効活用してオフィスを緑化
職場の緑化はオフィスデザインをおこなう上での1つのメソッドですが、ストレス軽減、コミュニケーションの活性化、空間の快適性の向上など、さまざまなエビデンスが科学的に証明されており、健康経営の観点からもオフィス内に緑を置くことが推奨されています。
エフエム・ソリューションの新オフィスに足を踏み入れてまず驚かされるのが、目に飛び込んで来る緑のインパクトです。それは、あちらこちらに大量の緑が配置されているというわけではなく、KNOTSエリアの東側に大きく開けた窓から見える衆議院議長公邸を取り囲む木々の緑。このロケーションを活かして窓際にはソファー席とファミレス席を配置して、コーヒーを飲んだり仕事をしたり。都心とは思えないほど深い緑の中で、リラックスして仕事ができるなんとも贅沢な環境です。
またここで使われているオフィス家具の多くは、同居しているヒル・インターナショナルが扱う輸入家具からセレクト。「あえてオカムラらしくないオフィスにしたかった」というこだわりようです。
没頭したい!のニーズに応える集中エリア(テレキューブ・半個室ブース)
固定席制を廃止してオフィスの好きなところで仕事が出来るフリーアドレスや、仕事の内容に合わせて場所を選ぶABW(Activity Based Working)のオフィスを採用する企業が増えています。まさに今は、従来のアイランド型のオフィスレイアウトから働き方の新形態への変革期にあるといっていいでしょう。
新形態のオフィスは開放的で自由度が高いというメリットがある反面、これまで以上に周囲の会話が気になり集中力が妨げられ生産性が低下してしまうというデメリットもあります。エフエム・ソリューションも移転元のオフィスでは同じような悩みを抱えていたそうです。オープンなエリアでWeb会議をしていると周囲の声や音が気になって集中出来ない。致し方なく広い会議室を1人で占領することになる。こうした状況をつくらないよう新オフィスでは"集中エリア"を設けて、フルクローズ型のワークブース『テレキューブ』、半個室ブース(輸入家具)を設置。オフィスの喧騒を遮り、会議や作業に没頭したい社員のニーズに応えています。
不利な条件をアイディアと技術で解消 会議室
新オフィスはビル自体がやや古いため、会議室のような壁で囲われた個室をつくる場合は空調のダクトを延長させる必要があり、天井高の一部を2350mmに下げています(一般的なオフィスの天井高は2500~2800mm)。そのため、壁の塗装(左官)を縦目地にすることで低さを感じさせない工夫が施されています。(事実、取材時も天井高は全く気になりませんでした)
また、内装に色やその他のマテリアルを使い過ぎると圧迫感を感じてしまうため設えは白で統一。家具も輸入家具で取り揃えるなどして、お客さまを招くスペースとしてのプレミアム感をアイディアと技術で演出しています。
「下手なオフィスはつくれないぞ」というプレッシャーがありました。
プロジェクトマネジメント部 プロジェクトマネージャー 小栗 航太さん
プロジェクトマネジメント部 田辺 絵莉香さん
新オフィスは軽井沢でワーケーション気分
小栗:移転のきっかけは移転元ビルの老朽化です。移転前のオフィスでも、オフィスづくりのトータルマネジメントをおこなう弊社の他に、輸入家具の販売代理店のヒル・インターナショナルとモニターアームの販売代理店のTd Japanの2社が同居。ヒル・インターナショナルのショールームがホテルニューオータニのガーデンコート棟内にあるため、"赤坂見附駅周辺で大きな負担にならない賃料"を条件にオフィスを探しました。
3社は、オフィスこそ共有しているものの業務上の接点はほぼありません。加えて、移転元では各社のテリトリーが低い壁で仕切られていたため、お互いに気を遣い、やや息苦しさを感じていました。
田辺:その解決策として、オフィス中央にカフェスペースを設けました。ここは3社共有のリフレッシュエリアです。最初のうちは挨拶程度でしたが、徐々に会話が生まれコミュニケーションが図れるようになってきました。コミュニケーションの向上は心理的安全性を高め、仕事の生産性を上げることも期待されていますし、会社に行く意欲にも繋がります。カフェスペースの設置は多くの社員の要望でもありました。
小栗:新オフィスについて社員の要望をヒアリングしたところ、カフェスペースの他、「緑を多く取り入れて欲しい」という意見が多く見られました。色には根源的な性質やイメージがあって心身にも影響を与えます。「緑を感じながら働くとリラックス効果やストレスを軽減させる効果がある」というエビデンスもあり、オフィスの所々に観葉植物とフェイクグリーンを配置しています。また、このビルの裏手には衆議院議長公邸があって一帯が深い森のような佇まいを見せています。そのロケーションを活かして窓に面してソファー席とファミレス席を設置。ここで仕事やミーティングをしていると、軽井沢の森の中でワーケーションしているような気持ちになります。
ABWの考え方を採用してオフィス機能を更新
田辺:新オフィスは移転元とほぼ同じ面積(約100坪)です。その中で必要機能を見定めて新しい働き方にシフトしていくためには当然スペースをやりくりする必要がありました。コミュニケーションを促進させるカフェスペースの面積を捻出するためにはキャビネットの数を約4割削減し、会議室の数も4部屋から2部屋に減らして新しい機能を付加しています。それでも「会議室が足りない」という声は聞いていません。
小栗:普段の業務上、知見もあったので減らすべきモノや場所の目星はある程度ついていました。会議室の数もコロナ禍を経て多くの企業も減らす傾向にありますし、実際の稼働率からも2部屋で足りることが分かっていました。その代わりに軽いミーティングや仕事が出来るファミレス席を2ブース用意しました。
業務の面でも効率性や生産性、モチベーションを上げる手段として、最近主流の『ABW』の考え方を採用。リラックスしながら働けるスペースやWeb会議が出来るテレキューブ(個室ブース)、集中して仕事をしたい時に便利な半個室など、仕事の内容に合わせて場所を選ぶ働き方が出来る環境づくりを目指しました。
自社のオフィスづくりを通して気づいたこと
田辺:普段プロジェクトの進行管理をする中で、お客さまに対して「来週までに決めてくださいね」と当たり前のようにお願いをしてきたわけですが、何を決めるにしても社内のさまざまな声を聞き、それをまとめあげて1つの答えを出すことが如何に大変なことかをつくづく実感しました。お客さま(移転プロジェクトのスタッフ)のご苦労が改めて分かりました。
小栗:私たちはお客さまのオフィスづくりをサポートするのが仕事です。ところが、いざ自分たちのオフィスづくりとなると、社内調整から内装仕様に至るまで、やることやこだわりが次から次へと生まれて来て思った以上に時間がかかってしまいました。
お客さまの案件ですと、こちらからオフィスの方向性を提案しつつも、意思決定はお客様自身でおこないます。ところが今回は自分たちが働くオフィスですので、みんなの思いを整理整頓し、会社としての目指す姿がぶれないように計画を進めることが本当に大変でした。とはいえ、我々はオフィスづくりのプロですので、蓄積してきた知識や技術を活かすことで最高のオフィスに仕上げることが出来たと自負しています。実際に社内外からも良い評価をいただくことが出来ました。ただやはり、オカムラの関連会社ということで良くも悪くも注目されます。「下手なオフィスはつくれないぞ」というプレッシャーは常に感じていましたね。