日清食品グループは1958年に発明された世界初の即席めん「チキンラーメン」などの数々のブランドを擁し、食の可能性を追求することで成長を続けてきた総合食品グループです。この度、日清食品ホールディングスは東京本社オフィスのリニューアル計画に伴い、昨年(2023年12月)に日清食品ホールディングス株式会社の生産部・資材部と、日清食品株式会社の構造改革推進部の3部門からなる新オフィスを新宿スクエアに開設しました。新オフィスには観葉植物やフェイクグリーンを多く使用し、新たなアイディアが生み出されるようなクリエイティブな空間に仕上げています。
エントランスにあそび心とインパクト
「グリーンの活用により空間に癒しを発生させ生産性を向上させる」という空間づくりのコンセプトに則り、オフィスの顔となるエントランスにはふんだんに緑を配置しています。エントランスは来訪者が最初に接点を持つ場所。「インパクトを与えつつお客さまをお出迎えしたい」という思いの具現化です。
また、受付電話に「プッシュホン」を採用しているところなどは、ユニークなマーケティング戦略で消費者を惹き付ける日清食品グループならではのあそび心が感じられました。プッシュホンは若手社員から「使い方が分からない」という声も挙がったそうですが、リアルタイムに使用してきた中高年にしてみれば、馴染み深く心が和みます。「お客さまがいらしてボタンを押しているシーンを思い浮かべると、ちょっとシュールで面白いじゃないですか」と話すご担当者。長年にわたってファンを増やし続けてこられた理由の一端がこんなところにも感じられました。
クリエイティビティを刺激する会議室
コロナ禍においては、会議室を利用する頻度は減少傾向であったものの、アフターコロナで出社率が増えてきた今、会議室がオフィスの中で果たす役割は重要です。とはいえ、どの会議室に入っても同じような空間ではユニークさに欠けます。新オフィスの会議室(5室)は、「クリエイティブな発想はオフィス内の素材からも刺激を受けて生まれる」といった考えのもと、それぞれに壁紙や椅子のデザイン、さらにはグリーンに至るまで様々な種類を組み合わせ、アイディアが生まれやすい空間づくりが成されています。
一方、情報共有や仕事の進捗確認など肩肘張らないミーティングであれば、執務エリアのオープンスペースでおこなう方が効率的だと考え、執務エリアには複数のオープンミーティングスペースを設けています。予定を調整してわざわざ会議室をおさえて打ち合わせをするのではなく、その場で素早く会話ができるスペースとして有効に活用されています。
居心地良さに仕掛けが潜む商談スペース
お客さまと向き合う商談スペースはエントランス同様、会社の第一印象を左右します。特に大事なポイントは利用者にとって居心地の良い空間に仕上げること。ここにもこだわりが活かされていました。
一見同じように見える商談スペースですが、実際には机と椅子の高さが異なっていて、座る場所によって視界の広がり方が変わります。これも「感覚の仕掛け」のひとつで、居心地の良い空間づくりに一役買っています。
部門内コミュニケーションの結節点
執務エリアはフリーアドレスを導入しています。開放的な空間にすることでフレキシブルな働き方を可能にすると共に、日々異なる顔ぶれと交流が生まれるようにしています。気づきやひらめきを誘発し、イノベーションにつなげることが狙いです。
「部門を超えたコミュニケーションは活性化するものの、自部門内のコミュニケーションが希薄になるのでは」との声に対しては、部門ごとにメンバーが寄り合い仕事ができるハブ(中央に植栽が配された座席がハブの役割を果たす)を設置しました。このハブの存在が部門内コミュニケーションの活性化に貢献しています。
また、コミュニケーションが活発になるフリーアドレスには「周囲の目や音、人の往来が気になって落ち着いて仕事ができない」という側面もあります。こうした課題に対して新オフィスでは、自分の仕事に集中できる「集中エリア」や「防音タイプの集中ブース」などパーソナルなワークスペースも充実しています。
"雑多"な中からアイディアが生まれる
整理整頓された「キレイなオフィス空間」ではなく、清潔感は保ちつつも"雑多"な空間にすることで新たなアイディアやクリエイティブな発想が創出できるという考えから、執務エリアの空間デザインには徹底的にこだわりました。
オフィス内には多彩な色をちりばめることで雑多な空間を構築しています。加えてオフィス内の壁面には当社の「VALUE CREATION BOOK」(価値創造ブック)の表紙となった「歌舞伎」のイラストを掲示して日清食品グループらしさを演出しています。
直角のない非矩形デスクの採用でストレスを緩和
オフィスづくりの基本コンセプトは、先にも触れた「グリーンの活用による生産性の向上」と、「什器の形や導線を活かしたコミュニケーションの活性化」の2軸が基本となっています。「グリーンの活用による生産性の向上」については、オフィス内で一定の緑視率を保つことでストレスの緩和や視覚疲労の回復効果が見込まれ、生産性の向上が期待できます。
「什器の形や導線を活かしたコミュニケーションの活性化」については、直角のない非矩形(ひくけい)のデスクを採用することで、どの席に座っても対面を避ける座席レイアウトとなっています。これによる心理的安全性は、緊張感を緩和し意見の衝突を回避する一助となっています。プライバシーを確保しつつも、これまで以上に有益なコミュニケーションの活性化を狙っています。
働くうえでのWell-beingを実現するためにもオフィスは重要です。
日清食品ホールディングス 総務部 兼 日清食品Well-being推進部・Well-being企画部 主任 關 倫太郎さま
新型コロナウイルス感染症の拡大を受け出社制限を設けていましたが、新型コロナの5類移行に伴い出社率の上昇が見込まれたため、100人程度が入居でき、東京本社への移動がスムーズにおこなえることを条件としてオフィスビルを探索しました。弊社は食品会社であることからテストキッチンの設置(換気設備や電気設備の増強)に柔軟であったことが入居ビル(新宿スクエア)選定の決め手になりました。
働き方は人によって様々です。特にこの3年間はコロナ禍によって在宅勤務制度が主流になるなど、働き方の自由度は増しました。そんな中でもオフィスで顔を合わせて議論したり、社員との交流によってクリエイティブな発想が生まれたり、オフィスの存在価値は欠かせないものだと感じています。コミュニケーション機会の増加や心理的な安全など、働くうえでのWell-beingを実現するためにもオフィスはとても重要です。オフィスに来ることで対話が生まれ、それが仕事のイノベーション創出に繋がり、最終的には個人および組織の成長に繋がると私は感じています。
機能性や効率性だけではなく、働きやすい環境構築にも注力しました。
日清食品ホールディングス 総務部 高橋 侑那さま
オフィスは、コミュニケーションが促進されるだけでなく、クリエイティブな発想が刺激される空間であるべきだと思っています。集中できる環境にするだけでなく、様々な「仕掛け」を提供することで、生産性を向上させることがオフィスの重要な役割だと考えます。
また新オフィスでは、より自律的なHybrid workの実現のため、出社予約システムを導入しています。各部署の予約率を見える化するため、情報を一覧化したダッシュボードを独自開発し部署ごとで出社率をコントロールする運用をしています。社員からは、機能性や効率性だけではなく「働きやすさ」も重視してほしいといった要望があり、クッション性のある椅子や卓上ディスプレイが設置しやすいデスクの広さなど、働きやすい環境構築にも注力しました。社員のエンゲージメントやWell-beingを高めることができるオフィスをこれからも目指していきたいと思っています。