福利厚生を重視する企業は少なくありません。福利厚生の充実は、従業員のモチベーションアップや生産性の向上、さらには従業員の健康促進や定着率の向上など、幅広い貢献要素があるからです。さらには、これから社会人になる学生たちにとっては、会社の福利厚生の充実度は大きな決め手にもなります。こうした背景がある中、昨年来のコロナ禍によって、企業の福利厚生はその在り様を変えつつあります。
福利厚生制度は2つの制度に分類されます。1つは、会社が費用を負担して従業員に提供することが義務付けられている"法定福利厚生"です。具体的には、社会保険(雇用保険、健康保険、介護保険、労災保険、厚生年金保険)、子ども・子育て拠出金などが該当します。もう1つは"法定外福利厚生"と呼ばれるもので、社内のコミュニケーションを高めたり、従業員から会社に対するロイヤルティを獲得したり、人材確保を有利にすることを目的に、会社が任意に実施しているものです。一例を挙げると、通勤費や退職金、健康診断をはじめとして、社員食堂や保養施設、社員旅行などがこれまで一般的とされてきました。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴ってテレワークが浸透した今、法定外福利厚生の在り方を見直す会社が増えています。例えば、3か月、ないしは半年間の通勤定期券を購入しても、実際に出勤するのが週一日程度であればムダが生じるため実費精算に変更したり、著しく利用者が減り閑散とした社員食堂はコロナ禍に相応しくない福利厚生施設と見なし、その存続の有無を検討する企業が増えているのです。
つまり、「従業員に一律に給付するもの」という考え方を根底に、平等を保ってきたこれまでの法定外福利厚生ですが、コロナによって働き方が多様化し、"一律給付による平等性"が保てなくなったわけです。そこで今注目されているのが、一定額の補助金(ポイント)を支給して、従業員はその範囲内で用意された"メニュー"から必要な福利厚生を選択できる『カフェテリアプラン』と呼ばれる福利厚生の制度です。
カフェテリアプランは働き方のスタイルに関わらず、自分に合った福利厚生メニューを選択できるため、待遇差や不平等感が少なくなります。また、社員旅行などについては、現在は約55%の人が「行きたくない(JTB調べ)」と考えていることからも、福利厚生に求めるものが時代と共に変化していることが伺えます。コロナ対策のみならず、同一労働同一賃金の考え方が拡大するだろう今後は、ニューノーマルなワークスタイルが定着し、福利厚生もカフェテリアプランへの注目が高まっていくことは間違いないでしょう。
カフェテリアプランを採用している企業は、以下のようなメニューを用意しています。
保育補助、託児所補助、介護・看護費補助、住宅ローン補助、食事利用補助、テレワーク設備補助、資格試験補助、人間ドック補助、スポーツジム利用補助、マッサージ利用補助、健康用具購入補助、退職記念旅行補助、旅行補助、宿泊補助、交通機関(新幹線・航空機等)チケット代補助等。
参考:日本経済団体連合会「福利厚生費調査結果報告」
https://www.keidanren.or.jp/policy/2017/106_honbun.pdf
■記事公開日:2021/05/19
▼構成=編集部 ▼監修=清野裕司 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=PIXTA AdobeStock